花入南蛮瓢形 高橋道八
花入南蛮瓢形 高橋道八
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幅 : 9.21cm 高さ : 21.3cm
南蛮瓢形花入 ――九代 高橋道八様
しっとりとした銀鼠(ぎんねず)の肌合いと、ふくらみと絞りが織り成す優美な二連のシルエット――本作は、茶の湯で重んじられてきた「南蛮もの」の野趣を、九代 高橋道八様ならではの洗練で結晶させた花入でございます。以下、五つの観点からその魅力と背景を詳しくご紹介いたします。
1.造形美 ― 瓢(ひさご)の吉祥とリズム
上部はすらりと伸びる筒口、中央でやや絞り、下部でたっぷりと張る二段構成の瓢形は、陰陽の調和と豊穣を象徴します。肩の柔らかなカーブが花を包み込み、下球の安定感が全体をどっしりと支えるため、一輪差しでも枝物でも姿が決まりやすい設計です。見込み(内部)は口から底まで滑らかな曲面で繋ぎ、花留まりを自然に導く工夫が施されています。
2.素地と焼成 ― 南蛮写しの鉄質素地
南蛮花入の特色である鉄分を多く含む胎土を採用し、ほぼ無釉のまま高温で焼き締めることで、金属を思わせる鈍い光沢と微細な火色の景色を獲得しています。部分的に生じる紫褐色の発色は、還元炎と酸化炎の揺らぎによって生まれたもの。掌で撫でるとほのかな粉状の粒子感が伝わり、素地本来の肌触りを楽しむことができます。
3.意匠 ― 瓢箪に宿る縁起
瓢箪は「無病(六瓢)」に通じる語呂合わせから、古来“魔除け”や“道具守り”として親しまれてまいりました。茶室においては、福徳招来のシンボルとして正月や祝儀の花寄せに重宝されます。本作では装飾を一切排し、形そのものを意匠化することで、質実と品格を両立。華美を避けた造形が、茶花の清らかさを一層引き立てます。
4.技法 ― 轆轤一気挽きと火変わりの妙
胎土を一塊で轆轤成形し、上下を連続的に挽き出す“一気挽き”ゆえ、胴の張りと絞りがリズミカルに連動しています。素焼きを経た後、登窯または還元電気窯で長時間焼成し、わずかに炭化気味の雰囲気を纏わせました。火前・火裏の配置差により、側面に現れる淡い雲紋(くももん)が無釉作品ならではの景色を生んでおります。
5.歴史的・文化的背景 ― 茶の湯における南蛮への憧憬
「南蛮」とは室町末〜桃山期に日本へ渡来した東南アジア系の焼締め陶磁を指し、その素朴さと土味が千利休ら茶人の心を捉えました。高橋道八家は京焼色絵の名門でありながら、古陶の研究にも深く携わり、本作では南蛮花入の精神を受け継ぎつつ、現代空間にも映える端正なラインで再解釈しています。伝統とモダンの橋渡しこそ、九代様の仕事の真骨頂と言えるでしょう。
高橋道八家は江戸後期以来、京焼色絵の名門として知られます。九代様は京都文教短期大学 服飾意匠学科デザイン専攻を経て、京都府立陶工高等技術専門校 成形科・研究科、さらに京都工業試験場本科で技術基盤を固められました。
平成8年(1996年) 八代道八様(父)に師事し、本格的に作陶を開始
平成24年(2012年) 九代 高橋道八を襲名
服飾デザインで培われた造形感覚と、京焼の伝統技法が交差する作風は、道八家に新たな風を吹き込み、現代茶席やギャラリー空間にも映える洗練を示しています。
一切の装飾を削ぎ落とした銀鼠の肌と、瓢形の柔らかなリズムが相まって、凛とした静謐と温かな侘び趣を同時に感じさせる花入です。口径は細身ながら内部に向かって緩やかに広がるため、水量の調整が容易で、野の花から茶花まで幅広く受け止めます。季節の草花をそっと挿せば、一輪がまるで宙に浮かぶように立ち上がり、茶席の空気を引き締めてくれることでしょう。どうぞ末永くご愛用いただき、花との対話を重ねるたびに深まる土味と、南蛮写しの幽玄をご堪能くださいませ。
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