西端正様との対談

今回は、西端正様の末晴窯(すえはるがま)にお伺いして、お話をさせていただきました。
【西端】→ 西端正(にしはた ただし)様
【西村】→ 西村一昧(にしむら いちまい)甘木道 店主



【西村】本日は西端様の作陶に対する考え方や、お若いころからの物づくりへのこだわりなどをお伺いしたいと思います。まずお仕事を進める上で、1番多い一日を教えてください。

(西端)1番多い日は作る時、2番目は釉薬を掛けるとき、3番目は窯をつめるときです。

(西村)1番多い作る時というのは、どういった内容でしょうか?

(西端)だいたい朝9時ごろから5時ごろまで仕事をします。

(西村)それはずっとですか?

(西端)そうです。もちろん休憩は取りますが、一日造ったら翌日は削って仕上げるという繰り返しです。

(西村)焼くときは、どうしていますか?

【西端】窯はいろいろありまして、薪を使う窯は穴窯、登り窯の二つあります。あと、ガス窯と電気窯です。
登り窯で3日間、穴窯で5日間、ガス窯はだいたい15時間~20時間。仕事をしなががら、窯焼をします。1時間に一回位は様子を見る必要があります。電気窯は焼成メニューを決め、決めた通り自動で焼き上げてくれるので手間はかかりません。それぞれ作品の仕上がりをイメージして使い分けています。


【西村】季節によって、作業が異なったり、気を付けられることはありますか。

【西端】そうですね。夏冬は粘土の乾燥が早いので、製作中の作品の乾燥には特に注意します。仕上がりに大きく影響します。

【西村】ここ丹波の地で、お若いときからどういう風に作家活動をしてきたのか教えていただけますか?

【西端】とにかく若いときは、がむしゃらに作りましたね。20代・30代は湯呑、皿等をたくさんつくりました。湯呑なら一日300個作っていた時もあります。展覧会情報も入ってくるのですが、出品しようと思うようになったのは、30歳代の中ごろでした。日々たくさんの陶器を作るのと併せて公募展などに出品し、作家活動をするようになりました。

【西村】その頃から、どんどん作家活動をしていくようになるのですか?

【西端】そうですね、30代なかばから軸足をそれに変えていきました。

【西村】陶芸は同じ寸法のものを作るのは高度な技術が必要ですよね。作家活動もその基礎の下地があったからこそですね。書道なども基礎ができた上で、崩した味わいのある作品が出来るのであって、本当に基礎は大事だと思います。

【西端】そうだと思います。基礎をしっかり身につけることにより、味わいのある魅力的な作品が出来上がるのです。

【西村】今もされていて難しいところはありますか? 迷うところとか。

【西端】迷うところはないです。ここ数年は迷わないです。

【西村】一つお聞きしたいのですが、これまでにやめてしまいたくなる、飽きてくることなどありませんでしたか?

【西端】ないです。ただ、作風を変えることはあります。また変わっていくものだと感じています。窯を焼く度に新しい粘土、釉薬をテストしています。これが魅力であるとも思っています。

【西村】すごいですね。天職と言いますか、すごいですね。

【西端】好きですから。売れても売れなくても、面白い。やりがいがあります。

【西村】その感動は焼き上がりの瞬間にイメージと違っていたり、イメージより良くなっていたりなどあると思うのです。焼くのは化学反応ですから。画家が絵を描くのは全てコントロールの範疇にあると思うのですが、陶芸は偶然の要素があると思います。

【西端】偶然もありますが、登り窯で焼くとしても、焼き上がりのイメージが出来上がっているので、ここにおけばこのように焼けるだろうと、火の通り道はこうなるだろうと窯づめである程度はわかってくる。炎をコントロールしているのです。だいたい予測はしています。

【西村】それは狙いどおりになるのですか?

【西端】狙っていきます。60%以上は当てないとね。焼いている時の天候、夏場、冬場等々が影響します。

【西村】偶然があまりないのですか? 

【西端】30%から40%は偶然ですが、たまに偶然でとても良い作品が出来ることもあります。また奥の深いものに釉薬があります。釉薬の特性に合った使い方、調合することは難しいです。

【西村】研究と言いますか、試行錯誤と言いますか、今もされていますか?

【西端】しょっちゅうやっています。今は、もっぱら藁白釉が面白い。焼き方や調合を変えて焼いています。雰囲気もずいぶん変わりますから。

【西村】陶芸のエッセンスからヒントはありますか?

【西端】丹波の自然ですね。丹波の自然からヒントをもらっています。

【西村】四季もあって綺麗ですね。

【西端】山を見たり、花を見たり、四季の変化など大変参考になります。

【西村】都会には出られない?

【西端】もちろん出かけますが作るのはここだけです。山歩きが好きです。散歩が好きです。気分転換もかねて。

【西村】山歩きは体力作りが大事ですね。その時も土を見ていますか。

【西端】土も自然のものなので、山から探してこないとね。簡単に土は見つからないです。山の中に谷川があって、谷川の両岸の削れたところに土が露出している。崖を見ていくと、どういう土がどういうところにあるかが分かる。むかしから粘土が出土している場所というのがありますが、あらかじめ的をしぼって調査にも行きます。今も新しいところを発見しますよ。

【西村】そうなんですね。

【西端】あと、地元の人に話を聞く。例えば昔の人に聞けば教えてくれる。2階に地図があります。昔の土取場の地図なんです。これも参考になります。

【西村】書籍などの資料を見ますと、平安時代ぐらいから場所を変えて土をとっていたみたいですね。

【西端】そうですね。土取場も時代ごとに代わっているみたいですね。

【西村】備前も古そうですけど、

【西端】備前もだいたい一緒ぐらいみたいですね。

【西村】丹波焼には歴史があることに驚きます。それでいて、丹波らしさが限定されず、丹波らしさを決めにくいのも面白いと思っています。

【西端】それは土が原料で、自然の原料ですから。取ってくる場所で少しずつ土が違う。土のもっている雰囲気を生かす。備前も、信楽も、常滑もそうです。

【西村】丹波は薪も良いみたいですね。良く燃える松がとれる。

【西端】そうですね、山ですからね。今は、松の木が地元から調達できにくくなりました。ただ、松だけではなく、他の木も燃料に使います。それが味わい深い自然釉になるのです。

【西村】今後はどのようなものを作っていこうと、計画はありますか?

【西端】まだまだ藁白釉を使って作品を作ってゆくつもりです。新しい藁白釉をさらに追及したいと思っています。あと何年探求出来るかはわからないが、それを造形的な作品と組みわせてみるとダイナミックなものが作れると思う。

【西村】なるほど、楽しみですね。ご活躍をお祈りしております。本日はお忙しい中、お話しできて感謝しております。ありがとうございました。

 

西端正様 略歴

昭和二十三年 二月二十四日生
昭和四十四年 作陶を始める
昭和五十一年 兵庫県展奨励賞
昭和六十一年 日本伝統工芸展初入選
昭和六十三年 日本伝統工芸展入選 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞
平成元年 日本陶芸展入選半どんの会 乃川記念賞
平成三年 日本伝統工芸展入選 日本陶芸展入選 茶の湯の造形展大賞
平成四年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 兵庫県新進芸術家奨励賞 NHK主催 パリ―日本の陶芸 「今」一〇〇選招待出品 茶の湯の造形展優秀賞
平成五年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店 京都シュマン
平成六年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店
平成七年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店
平成八年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 個展 日本橋三越本店
平成九年 茶の湯の造形展奨励賞
平成十年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店 日本伝統工芸展入選
平成十二年 個展 日本橋三越本店 個展 福岡三越
平成十三年 ギャラリー堂島 日本伝統工芸展入選
平成十四年 個展 日本橋三越本店 個展 ギャラリー堂島
平成十五年 個展 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成十六年 父子展 そごう広島店 茶の湯の造形展大賞
平成十七年 明石市立文化博物館・兵庫のやきもの展出品 赤土部臺買上 兵庫陶芸美術館 個展 ギャラリー堂島 日本橋三越本店
平成十八年 茶の湯の造形展大賞 日本伝統工芸展入選 ボストン美術館及び ニューヨークジャパンソサエティギャラリー 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 父子展 松山高島屋
平成十九年 陶俊会展 そごう横浜店 茶の湯の造形展奨励賞 日本伝統工芸展入選
平成二十年 日本伝統工芸展入選 個展 横浜高島屋 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 陶俊会展 船橋 西武 そごう広島店 日本陶芸展招待出品
平成二十一年 個展 ギャラリー堂島 仙台三越
平成二十二年 そごう神戸店 智美術館大賞展現代の茶 出品 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成二十三年 日本陶芸展招待出品 個展 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス 日本陶芸展招待出品
平成二十五年 菊池寛実記念智美術館『現代の名碗”出品 個展 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン ギャラリーミヤザキ そごう神戸店 千葉そごう
平成二十六年 個展 個展 日本橋三越本店
平成二十七年 兵庫県文化賞受賞
平成二十八年 東広島市立美術館 生活を彩る陶―食の器 出品 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス
平成二十九年 四十周年記念展出品
平成三十年 個展 日本橋三越本店