練込青瓷茶盌 諏訪蘇山
練込青瓷茶盌 諏訪蘇山
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幅 : 14.5cm 高さ : 6.1cm
Ⅰ.作品概要
本作「練込青瓷茶盌」は、白磁・青磁・藍磁という三種の磁土を幾層にも重ね、轆轤で一気に挽き上げる“練込(ねりこみ)”技法によって成形された抹茶碗です。層と層の境界が轆轤の回転によって緩やかな螺旋を描き、まるで銀河の渦や夜空にかかる天の川を思わせる抽象的景色を器肌に宿しています。端正でありながら作為を感じさせない穏やかなフォルムは、茶席の空気に静かに溶け込み、使い手の所作と場の気配を優しく受け止めます。
Ⅱ.造形とフォルム
端反りの口縁
口縁はごく僅かに外反し、抹茶を点てる際の茶筅捌きを妨げません。縁取りに現れる藍磁層が、晴れ渡った青空の稜線を描くかのように薄く光を帯びています。
浅めの見込み
見込みは浅く開き、練込模様が底へ向けて穏やかに収束します。抹茶が入った際、緑の液面が夜空の中央に満ちる月影のように映え、茶碗全体に静謐なコントラストを生み出します。
高台の設計
高台はやや低めに削り出され、外側へ緩やかに広がる形状です。掌に収めたときの安定感が高く、見た目の軽快さと実用性を両立しています。
Ⅲ.練込技法と釉調――宇宙を映す層の深み
磁土の層構成
白磁・青磁・藍磁を順に重ね、断面が均等な厚みになるよう板状に延ばしたのち、円筒に巻いて芯土とし、轆轤で引き上げています。回転に伴って層が螺旋状に伸び、ランダムな波紋が生まれるため、二つと同じ景色の茶盌は存在しません。
透明釉の役割
成形後は透明度の高い青磁釉を全面に掛け還元焼成。釉層がガラス質のヴェールとなり、内部の層模様を柔らかく包み込みながら奥行きを与えています。光の角度により層の境界がぼんやりと溶け合い、星雲がたゆたう夜空のような表情を見せます。
釉肌の触感
釉面は微細な凹凸を残さず、手のひらに吸い付くような滑らかさです。練込模様を視覚で楽しむと同時に、肌理の静けさが指先からも伝わり、点前の集中を妨げません。
Ⅳ.茶席での取り合わせと機能美
季節 | 推奨主菓子 | 茶盌との相乗効果 |
---|---|---|
春 | 桜餅・花見団子 | 淡い桜色が夜明けの星空に溶け、季節の移ろいを演出 |
夏 | 若鮎・葛饅頭 | 水面を想わせる青磁層が涼感を強調し、清流の景を生む |
秋 | 月見団子・栗羊羹 | 練込の渦が名月を巡る雲を思わせ、月夜の趣を深める |
冬 | 椿餅・雪平 | 白磁層が雪景色を連想させ、抹茶の緑が生命の兆しを映す |
抹茶との調和
抹茶の鮮やかな緑が三層の青に映え、見込みの中心に“宇宙の核”が生まれたかのような視覚的焦点を形成します。
照明効果
行灯や蝋燭の暖色光を当てると、釉面のガラス質が星の瞬きを思わせる微光を返し、夜席での幽玄な景を高めます。
Ⅴ.歴史的背景と技法的意義
練込の系譜
練込技法は奈良時代の練上手(ねりあげで)に源を発し、江戸後期には薩摩や京焼で発展しました。四代 諏訪蘇山様 はこの伝統を、青磁を主軸に据える諏訪家の美学と融合させ、現代的な宇宙観を表現する手段として昇華されています。
青磁表現の拡張
初代 諏訪蘇山様 が確立した「蘇山青磁」は単色の翡翠色を極めるものでしたが、四代は多層化による色彩とリズムを取り入れ、青磁表現の地平を押し広げています。
Ⅵ.作家略歴と制作姿勢
四代 諏訪蘇山様(1970年京都市生まれ)は、三代 諏訪蘇山様 と塗師・十二代 中村宗哲様 のもとで育ち、2002年に四代を襲名。青磁研究を基盤に、蛍手や飛青瓷、そして本作の練込青磁など、多彩な化学的アプローチを展開。「作品には物語を宿し、使い手の心と重なって完成する」との信条のもと、宇宙・星・時間といった壮大なテーマを器に託しておられます。本茶盌では“銀河を掌に戴く”という感覚を味わってほしいと語っておられます。
Ⅶ.結語
「練込青瓷茶盌」は、白磁・青磁・藍磁が織り成す静かな渦の中に、星雲の悠遠と晴天の透明感を同時に抱え込んだ逸品です。抹茶を注げば緑の光が夜空に瞬く星々を照らし出し、点前のひとときが宇宙の深呼吸へと変わります。豪華さではなく品位と静けさで場を包み込むこの茶盌は、四代 諏訪蘇山様 の人柄そのものを映し出し、現代青磁の可能性を雄弁に語るものと言えるでしょう。
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。