青瓷下蕪花入(小) 諏訪蘇山
青瓷下蕪花入(小) 諏訪蘇山
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幅 : 10.0cm 高さ : 20.0cm
Ⅰ. 作品概要
本作「青瓷下蕪(しもかぶ)花入(小)」は、南宋時代・龍泉窯の砧青磁(きぬたせいじ)を範とし、初代 諏訪蘇山様 が二十五年の歳月で完成させた“蘇山青磁”の釉色を、四代 諏訪蘇山様 が受け継いで制作された花入です。写真でご覧いただけるように、胴はふっくらと丸みを帯び、肩から頸へと絞り込まれる流麗なラインが、蕪(かぶら)の滋味深い姿を写し取っています。高さを抑えた小ぶりのサイズは、棚飾りや狭い床の間でも扱いやすく、茶席の一点に静かな潤いを添えます。
Ⅱ. 造形とフォルム
蕪形胴部
胴はほぼ完全な球に近い量感を持ち、底部でわずかに絞り込んで高台へ接続されています。水を張ると重心が自然に下がり、安定感が高まる実用的設計です。
伸びやかな頸部
肩から立ち上がる頸は、根元で一度だけ緩やかなカーブを描き、以降はストレートに伸びています。これにより胴の量感と頸のシャープさが対比され、全体に凛とした緊張感が生まれます。
皿状に開く口縁
口縁は外側へ薄く反り、浅い皿状を成しています。挿した花材が自然に中心へ寄り、また口縁の釉溜まりが光を受けて翡翠色を濃く映し、視覚的焦点を作り出します。
Ⅲ. 釉調――「蘇山青磁」の深み
翡翠色の透明感
胎土と釉薬双方に含まれる微量鉄分(約1%)が還元焼成で転化し、柔らかな青緑色を呈しています。写真でも確認できる通り、釉面はガラス質が均一に溶け、内部の光をわずかに反射させながらも奥行きを感じさせる“澄み”を獲得しています。
色溜まりの妙味
肩のカーブや口縁の内側では釉がやや厚く掛かり、淡い翳りとなってグラデーションを形成しています。これは宋青磁に見られる「影青(いんちん)」の景を意識したもので、器を回すたびに色の深浅が移ろいます。
Ⅳ. 機能美と茶席での取り合わせ
季節 | 推奨花材 | 器との相乗効果 |
---|---|---|
春 | 山茱萸・木瓜 | 蕪形の丸みが芽吹きの瑞々しさを包み込む |
夏 | 河骨(こうほね)・釣鐘人参 | 青磁の涼感が盛夏の熱気を和らげる |
秋 | 紫苑・萩 | 胴の量感が秋草の細茎を引き立て、余白を生かす |
冬 | 白侘助・雪柳 | 皿状口縁が雪の景を思わせ、静謐な趣を強調 |
水映りの景色
厚釉ゆえに器壁がわずかに透け、水面が翡翠色を柔らかく反射します。花材の茎が水中で揺らぎ、器と花が一体となる幽玄な景が生まれます。
灯りとの対話
行灯や蝋燭の暖色光を当てると、釉面が淡い金緑色を帯び、夜の茶席ではほのかな光彩を放ちます。
Ⅴ. 歴史的背景と意匠の意義
蕪形の源流
蕪形(瓢形に近い丸胴)は宋代文人が好んだ器形で、冬の煎茶席に用いられ、寒中に潜む生気を象徴しました。龍泉窯では青磁の透明感と相まって「雪中の蕪」を思わせる雅趣を備えたと伝わります。
砧青磁の復元と継承
初代 諏訪蘇山様 は1907年に蘇山青磁を完成させ、帝室技芸員として評価されました。四代 諏訪蘇山様 はその調合を忠実に守りながらも、窯内温度を±3 ℃単位で制御し、小品でも濁りのない青を再現しています。
現代茶席への適応
小ぶりな寸法は都市部の小間席や棚飾りに適し、運び点前の際も扱いやすい重量に抑えられています。
Ⅵ. 作家略歴と制作姿勢
四代 諏訪蘇山様(1970年京都市生まれ)は、三代 諏訪蘇山様 と塗師・十二代 中村宗哲様 の芸術的薫陶を受け、2002年に四代を襲名。青磁を基軸に、練込技法や蛍手、飛青瓷など多彩な表現を展開しつつ、「器には物語を宿し、使い手の物語と重なって完成する」という理念を掲げておられます。本作では「冬土に潜む蕪が春を待つ物語」を託し、静かな生命力を表現されています。
Ⅶ. 結語
「青瓷下蕪花入(小)」は、翡翠色の静謐さと蕪形の柔和な量感が調和し、茶席や室礼に穏やかな潤いをもたらす逸品です。南宋龍泉窯砧青磁の雅趣を忠実に写しながらも、四代 諏訪蘇山様 の精緻な造形感覚と釉調制御によって、現代の空間に寄り添う軽やかさを獲得しています。器に花を受けた瞬間、青磁の深みが花影を抱き込み、見る者の心に静かな温もりと希望の芽吹きをもたらすことでしょう。
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