丹波赤茶盌 西端正
丹波赤茶盌 西端正
受取状況を読み込めませんでした
幅:15.0cm 奥行:12.8cm 高さ:10.2cm
丹波赤茶盌(たんばあかちゃわん) 西端正様作
――熾火が噴き上げた緋(あけ)の荒磯
深紅の肌に宿る溶岩質の質感
本作の外壁を覆う緋色は、鉄分を多量に含む丹波土を強還元で黒褐色に締めたのち、終盤で酸化に転じる二段階焼成で得られたものです。赤楽の艶やかさとは異なり、熾火が噛んだ痕跡を残すざらついた質感が際立ち、まるで冷え固まった溶岩の表面を思わせます。鉄粒が溶け切らずに点在することで黒褐色の細かな斑点が浮かび、緋色に奥行きを与えています。
荒々しい口縁――風化する崖の稜線
口縁は轆轤成形後に部分的にえぐり取るように削り、さらに焼成時の収縮で自然な崩れを誘発しています。この不規則な稜線が、波に削られた岩壁や風雪に浸食された断崖を連想させ、静寂の中にも動的な緊張感を湛えています。唇を当てる位置を選ぶ愉しみが生まれ、茶席での所作にさりげない遊び心を添えます。
内壁の緋黒が生む深遠な対比
見込みは外面よりやや濃い緋黒に焼き締まり、半艶の光沢が抹茶の緑を鮮烈に引き立てます。薄茶の泡沫は荒い肌に細やかな影を落とし、濃茶を点てれば暗褐色の湯面と緋色が溶け合い、夜焚き火に照らされた溶岩洞のような幽玄を演出します。
卵形の柔らかなフォルムと軽快な薄造り
胴は丸みを帯びた卵形で、轆轤目をほとんど残さない滑らかなシルエットに仕上げられています。肉厚は抑えめながら、1280℃級の高温でしっかりと焼き締められているため堅牢で、手取りは驚くほど軽やかです。掌に包むと粗い外肌が指先に程よい刺激を与え、内壁の滑らかさとの対比が際立ちます。
高台に覗く丹波土の地肌
高台脇には釉薬を施さず、赤褐色の素地をあえて露出させています。微量の灰が付着した部分は青灰色に変色し、赤〜黒〜灰の地層を形成。丹波の山野に眠る鉄鉱石や長石の存在を静かに物語り、器に大地の息吹を吹き込んでいます。
茶の湯道具としての機能性
見込みのゆるやかな曲面は茶筅の動きを妨げず、泡立ちを均一に整えます。薄造りの胴は、熱を緩やかに手へ伝えるため冬季の濃茶でも快適に扱えます。高台は低く切り込み、卓上での安定感と現代的なテーブルセッティングへの順応性を両立しています。
侘びと炎の華やぎの交差
緋色は「陽」の華やぎを象徴しつつ、マットな質感と鉄斑の陰影がわびの静寂を呼び込みます。西端正様は「侘び寂びの中に潜む生命の熱」をテーマに、赤一色でありながら複雑な表情を引き出し、土と炎のドラマを凝縮させました。
歳月が育む艶と陰影
荒い肌は使い込むほどに手脂を吸い、しっとりとした艶を帯び始めます。茶渋や水分が微細な凹凸に滲み、緋色がやわらかな褐色を帯びるにつれ、器全体が深みを増していきます。貫入がない分、変化は極めて緩やかですが、数年単位で静かに呼吸する赤のグラデーションをご堪能いただけます。
熾火の瞬きを結晶化したかのような丹波赤茶盌です。掌に宿る赤は静かに脈動し、茶の湯の一期一会に炎の記憶と大地の重みをそっと添えてくれることでしょう。長くご愛蔵いただき、緋色が深遠へと育つ歳月の調べをお楽しみください。
西端正 略歴
昭和二十三年 二月二十四日生
昭和四十四年 作陶を始める
昭和五十一年 兵庫県展奨励賞
昭和六十一年 日本伝統工芸展初入選
昭和六十三年 日本伝統工芸展入選 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞
平成元年 日本陶芸展入選半どんの会 乃川記念賞
平成三年 日本伝統工芸展入選 日本陶芸展入選 茶の湯の造形展大賞
平成四年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 兵庫県新進芸術家奨励賞 NHK主催 パリ―日本の陶芸 「今」一〇〇選招待出品 茶の湯の造形展優秀賞
平成五年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店 京都シュマン
平成六年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店
平成七年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店
平成八年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 個展 日本橋三越本店
平成九年 茶の湯の造形展奨励賞
平成十年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店 日本伝統工芸展入選
平成十二年 個展 日本橋三越本店 個展 福岡三越
平成十三年 ギャラリー堂島 日本伝統工芸展入選
平成十四年 個展 日本橋三越本店 個展 ギャラリー堂島
平成十五年 個展 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成十六年 父子展 そごう広島店 茶の湯の造形展大賞
平成十七年 明石市立文化博物館・兵庫のやきもの展出品 赤土部臺買上 兵庫陶芸美術館 個展 ギャラリー堂島 日本橋三越本店
平成十八年 茶の湯の造形展大賞 日本伝統工芸展入選 ボストン美術館及び ニューヨークジャパンソサエティギャラリー 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 父子展 松山高島屋
平成十九年 陶俊会展 そごう横浜店 茶の湯の造形展奨励賞 日本伝統工芸展入選
平成二十年 日本伝統工芸展入選 個展 横浜高島屋 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 陶俊会展 船橋 西武 そごう広島店 日本陶芸展招待出品
平成二十一年 個展 ギャラリー堂島 仙台三越
平成二十二年 そごう神戸店 智美術館大賞展現代の茶 出品 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成二十三年 日本陶芸展招待出品 個展 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス 日本陶芸展招待出品
平成二十五年 菊池寛実記念智美術館『現代の名碗”出品 個展 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン ギャラリーミヤザキ そごう神戸店 千葉そごう
平成二十六年 個展 個展 日本橋三越本店
平成二十七年 兵庫県文化賞受賞
平成二十八年 東広島市立美術館 生活を彩る陶―食の器 出品 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス
平成二十九年 四十周年記念展出品
平成三十年 個展 日本橋三越本店
Share








-
【丁寧に、お送りいたします】
それぞれの商品に合った形態で、丁寧に梱包いたします。
また、作品(器など)により、納期は変わります。
作品の引渡時期は、ご注文確認後、共箱準備済み作品は7営業日以内に出荷させていただきます。共箱を新たに製作する作品は45営業日以内に出荷させていただきます。
いずれも、ご注文を確認いたしましたら、当店より納期をメールにてご連絡いたします。
-
【陶器をご購入の際のお願い】
作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。