丹波赤茶盌 西端正
丹波赤茶盌 西端正
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幅:13.4cm 奥行:12.3cm 高さ :10.2cm
丹波赤茶盌(たんばあかちゃわん) 西端正様作
――熾火(おきび)に緋(あけ)映える丹波の大地
1.深紅の発色――鉄が呼吸する瞬間の色彩です
本作を包む深い赤は、丹波産の荒土に多量の鉄分を含ませ、強還元で一度黒褐色に焼き締めた後、終盤に酸化雰囲気へと転じる二段階焼成によって得られたものです。熾火がわずかに風向きを変える刹那、その “一瞬の酸化” をつかまえることで、濁りのない緋色が生まれております。陶胎に残る微細な鉄粒がマットな質感を保ち、野趣と端正さが同居する外観を醸し出しています。
2.卵殻を思わせる柔らかな球形と揺らぎ口縁です
全体はやや腰高の卵形を成し、見込みへ向かって穏やかな曲率で収束しています。口縁は一本の線で轆轤を切るのではなく、指で軽く押し返すようにしてわずかな凹凸を与え、口当たりを柔らかく仕上げました。この揺らぎが、赤一色の緊張感をほぐし、茶席に温かなリズムを添えます。
3.内壁の漆黒釉が生む補色効果です
見込みには鉄釉が厚く流れ、黒味を帯びた艶やかな光沢が広がっています。外面の緋色と内面の黒が対照を成すことで、抹茶を点てた際には緑・赤・黒の三相が鮮やかに響き合います。薄茶なら泡沫の白が赤の縁に映え、濃茶なら深い褐色が黒釉と溶け合い、秋夜の篝火のような幽玄を演出いたします。
4.高台に残る素地――大地の記憶です
高台は控えめに切り込み、化粧掛けを施さず丹波土の赤褐色をあえて露出させています。焼成中に付着した灰がうっすらと青灰色に変わり、緋色との境界に地層のような景観を生んでおります。ここに見える石英粒や長石筋は、丹波の山野が育んだ鉱物の証しであり、器に静かな息吹を与えています。
5.茶の湯道具としての機能美です
肉薄の胴は軽量でありながら、高温で緻密に焼き締められているため強度と保温性に優れています。見込みは広く、茶筅の動きを妨げず泡立ちを整えやすいため、薄茶・濃茶の双方に適応いたします。また、低めの高台は卓上で安定感を確保しつつ、現代のテーブルウェアとの相性も良好です。
6.侘びと華やぎを併せ持つ丹波赤の精神です
赤は本来「陽」を象徴する色彩ですが、本作はマットな質感と微細な鉄斑によって派手さを抑え、わび茶の精神と調和させています。西端正様は「丹波の赤とは、炎の華やぎと土の寂びを同時に映す鏡」であると語り、土味を生かすために装飾を極力排した造形を選択されました。
7.時間が育む艶と陰影です
外面の赤は使い込むほどに手脂を吸い、しっとりとした艶を帯びてまいります。内面の黒釉は茶渋と交わりながら鈍い金属光沢を深め、貫入こそありませんが、色合いが緩やかなグラデーションを描きます。歳月が重なるほどに赤と黒の境目が溶け合い、持ち主だけの景色が生まれる点も、本作ならではの楽しみです。
熾火が描いた緋色のヴェールと、大地の記憶を抱く丹波赤茶盌――西端正様の確かな技術と自然の力が織り成す、静かな炎の結晶でございます。ぜひ長くご愛蔵いただき、赤が呼吸して深まる年月の彩りをお愉しみください。
西端正 略歴
昭和二十三年 二月二十四日生
昭和四十四年 作陶を始める
昭和五十一年 兵庫県展奨励賞
昭和六十一年 日本伝統工芸展初入選
昭和六十三年 日本伝統工芸展入選 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞
平成元年 日本陶芸展入選半どんの会 乃川記念賞
平成三年 日本伝統工芸展入選 日本陶芸展入選 茶の湯の造形展大賞
平成四年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 兵庫県新進芸術家奨励賞 NHK主催 パリ―日本の陶芸 「今」一〇〇選招待出品 茶の湯の造形展優秀賞
平成五年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店 京都シュマン
平成六年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店
平成七年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店
平成八年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 個展 日本橋三越本店
平成九年 茶の湯の造形展奨励賞
平成十年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店 日本伝統工芸展入選
平成十二年 個展 日本橋三越本店 個展 福岡三越
平成十三年 ギャラリー堂島 日本伝統工芸展入選
平成十四年 個展 日本橋三越本店 個展 ギャラリー堂島
平成十五年 個展 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成十六年 父子展 そごう広島店 茶の湯の造形展大賞
平成十七年 明石市立文化博物館・兵庫のやきもの展出品 赤土部臺買上 兵庫陶芸美術館 個展 ギャラリー堂島 日本橋三越本店
平成十八年 茶の湯の造形展大賞 日本伝統工芸展入選 ボストン美術館及び ニューヨークジャパンソサエティギャラリー 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 父子展 松山高島屋
平成十九年 陶俊会展 そごう横浜店 茶の湯の造形展奨励賞 日本伝統工芸展入選
平成二十年 日本伝統工芸展入選 個展 横浜高島屋 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 陶俊会展 船橋 西武 そごう広島店 日本陶芸展招待出品
平成二十一年 個展 ギャラリー堂島 仙台三越
平成二十二年 そごう神戸店 智美術館大賞展現代の茶 出品 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成二十三年 日本陶芸展招待出品 個展 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス 日本陶芸展招待出品
平成二十五年 菊池寛実記念智美術館『現代の名碗”出品 個展 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン ギャラリーミヤザキ そごう神戸店 千葉そごう
平成二十六年 個展 個展 日本橋三越本店
平成二十七年 兵庫県文化賞受賞
平成二十八年 東広島市立美術館 生活を彩る陶―食の器 出品 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス
平成二十九年 四十周年記念展出品
平成三十年 個展 日本橋三越本店
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。