商品情報にスキップ
1 8

薬師寺東塔基壇土 鉄釉窯変茶碗 尾西楽斎

薬師寺東塔基壇土 鉄釉窯変茶碗 尾西楽斎

通常価格 ¥220,000
通常価格 セール価格 ¥220,000
セール 売り切れ
税込。 配送料はチェックアウト時に計算されます。

幅 : 12.5cm 高さ : 7.2cm

薬師寺東塔基壇土 鉄釉窯変茶碗

奈良時代を代表する名刹・薬師寺の東塔は、現存唯一の創建当初の塔として知られます。その基壇(きだん)を補修した際に得られた古土を胎土に混ぜ込み、さらに鉄釉を掛けて窯変(ようへん)の妙を引き出した本作は、悠久の歴史と炎の偶然が交差する稀有な茶碗でございます。以下、五つの観点から本作の魅力を解説いたします。


1.胎土――千三百年の時を宿す基壇土

薬師寺東塔の基壇土は、奈良盆地特有の鉄分と珪酸を豊富に含み、長い歳月を経て微細な鉱物が結晶化しています。尾西楽斎様はこの古土を信楽土にブレンドし、粗めの粒子感と古色蒼然たる土味を際立たせました。焼成後も胎土中の石英粒が白く煌めき、塔の礎石を思わせる風格を器面に残しています。

2.鉄釉と窯変――炎が描く大地の景色

外面を覆う鉄釉は、還元気味の高火度で焼かれることで、黒褐色・苔緑・紫灰が複層的に発色し、自然降灰によるガラス質の流れが景色をさらに深めています。胴中央にはゆらぎを帯びた釉溜まりが生じ、光にかざすと墨黒の下から緑褐の斑紋が浮かび上がります。これらは古塔を取り巻く苔むした石肌や曇天の空を想起させ、見る角度によって表情を変える“動く景色”となっています。

3.造形と轆轤目――古塔を彷彿させる端正な鉢形

口縁をわずかに外反りさせた鉢形は、薬師寺の塔身が天へ向けてすぼまるシルエットを反映したかのようです。胴部には三段の轆轤目が刻まれ、これが釉流れの境界となって視覚的なリズムを生み出しています。高台は小ぶりながら力強く切り上げられ、基壇土の赤褐色が露わになって茶室の畳色と美しい対比を奏でます。

4.手取りと機能美――侘びを湛える実用性

外肌はざらりとした砂味を残し、掌に収めると指腹が自然に止まります。見込みは鉄釉が薄く掛かり、細かな貫入が白く走って抹茶の緑を柔らかく映えさせます。茶筅の当たりも滑らかで、泡立ちは細やか。窯変釉の光沢が茶面を鏡のごとく映し込み、点前の所作を静謐に演出いたします。

5.文化的意義――「祈り」と「再生」を飲み込む一碗

薬師寺東塔は「凍れる音楽」と称される名建築であり、その基壇土を用いることは、千年以上続く祈りの時間を茶碗へ封じ込める行為と申せましょう。さらに、塔が令和の大修理を経て甦ったように、本作も古土と現代の炎が出会って新たな美を纏いました。茶席でこの茶碗を用いれば、飲む人の内にも「再生」への想いが静かに灯ることでしょう。


総括

古塔の土、炎の偶然、そして尾西楽斎様の巧みな造形とが融合し、侘び寂びと崇高さを併せ持つ窯変茶碗が誕生いたしました。掌にとれば、ざらりとした土肌の奥から歴史の鼓動が聞こえ、抹茶を点てれば、釉溜まりが湖面のように揺らぎます。薬師寺東塔基壇土 鉄釉窯変茶碗は、茶の湯が求める「一期一会」の精神と、悠久の祈りを体現する珠玉の一碗でございます。

薬師寺境内の土100%使用、不純物を徹底除去した本作は、澄明な美しさが特徴。悠久の時を経た土は均質で、焼成により濁りのない艶と、焼締めでは古瓦のような穏やかな色合いを呈します。滑らかな肌理と歪みにくさも魅力。千三百年の歴史を宿す土の物語が、手に取るたびに安らぎを与えます。素材と美しさ、精神性を兼ね備えた特別な作品です。

尾西楽斎様との対談 – 高級陶器の専門店【甘木道】

詳細を表示する
  • 【丁寧に、お送りいたします】

    それぞれの商品に合った形態で、丁寧に梱包いたします。

    また、作品(器など)により、納期は変わります。

    作品の引渡時期は、ご注文確認後、共箱準備済み作品は7営業日以内に出荷させていただきます。共箱を新たに製作する作品は45営業日以内に出荷させていただきます。

    いずれも、ご注文を確認いたしましたら、当店より納期をメールにてご連絡いたします。

    梱包のこだわりについて

  • 【陶器をご購入の際のお願い】

    作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。

    作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。

    作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。

    作品の取り扱いについて