35法隆寺夢殿香合 尾西楽斎
35法隆寺夢殿香合 尾西楽斎
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幅 : 6.8cm×6.8cm 高さ : 6.8cm
法隆寺夢殿香合(ほうりゅうじ ゆめどの こうごう) 尾西楽斎様 作
――八角円堂に宿る聖徳太子の霊夢を、掌でそっと開扉する――
1.作品概要
本作は、奈良・赤膚焼の名匠であられる 尾西楽斎様 が、国宝・法隆寺東院伽藍の本堂「夢殿」を写した香合です。夢殿は天平十一年(七二九)頃に建立された八角円堂で、聖徳太子を供養するための神秘的な礼拝空間として知られております。
香合は幅約六センチ、高さ約五センチの掌サイズながら、八面の壁面装飾、勾欄(こうらん)、基壇階段まで精密に作り込み、上部の屋根全体が蓋、堂身が身となる二分割構造で香を納められる実用性を備えています。
2.造形と意匠
構成部位 | 意匠の特徴 | 鑑賞ポイント |
---|---|---|
宝珠(ほうじゅ) | 屋根頂に小さく載せた相輪宝珠 | 八角堂の中心軸を象徴し、掌上でも荘厳さを演出します。 |
屋根 | 放射状に走る垂木を一本一本線彫り | 緩やかな反りと軒隅の蕪懸魚(かぶらげぎょ)が天平建築の優美を再現。 |
堂身 | 切石積みに見立てた腰組と円柱列 | 夢殿特有の内陣・外陣二重構造をリズミカルな列柱で暗示。 |
基壇と階段 | 三段積基壇に四方階段 | 八角方位を均等に示し、“世界中心”の宇宙観を表出。 |
3.釉調と技法
淡青磁釉(たんせいじゆう)
長石釉に微量の鉄・チタンを加え、1240 ℃の還元焚きで発色させた灰緑色が、飛鳥の瓦色を思わせる落ち着きを与えます。
線刻の際立ち
乾燥前に竹ベラで彫った垂木線や柱溝に釉が薄く溜まり、陰影のコントラストが建築的リズムを強調。
一体成形→蓋切り
塊土を彫塑した後、蓋位置を基壇上で水平に切り分け、合わせ口を研磨して滑らかな開閉を実現。
4.夢殿と茶の湯
夢殿は国宝に指定された現存最古の八角円堂で、「救世観音」安置の御堂としても名高く、明治十七年に岡倉天心とフェノロサが秘仏を開扉した逸話をもつ“目覚めの殿堂”です。
茶の湯では、
春秋の開扉期間(四・十一月)の茶会
聖徳太子忌(旧暦二月二十二日)追慕の席
八角堂に因む「八方円成」を願う祝儀席
などで夢殿香合が用いられ、仏徳と調和、円満成就を象徴する道具として珍重されてきました。
5.取り合わせの例
時季・趣向 | 軸・花 | 推奨の香 | 効果 |
---|---|---|---|
春開扉(四月) | 軸「和光同塵」、花:山吹 | 練香「瑞雲」 | 春光の堂扉が開く喜びと調和を演出 |
太子忌追慕 | 軸「和を以て貴しとなす」、花:椿一輪 | 伽羅片 | 聖徳太子の徳を偲び、静謐な敬慕を示す |
寒夜炉辺 | 軸「八風不動」、花:寒牡丹 | 白檀+龍脳 | 八方からの風(煩悩)を退ける八角堂の護持を象徴 |
6.尾西楽斎様の作陶理念
尾西楽斎様は「奈良の歴史と祈りを掌上の茶陶へ」という信条のもと、薬師寺東塔・鹿香合等に続き、今回は聖徳太子ゆかりの夢殿をモチーフに選ばれました。赤膚土の素朴な温かみと淡青磁釉の静かな光沢を調和させ、建築彫刻の厳密さと掌で愛でる可憐さを両立させておられます。
7.まとめ
「法隆寺夢殿香合」は、八角円堂の調和美と聖徳太子信仰の霊威を、わずか数センチの器壁に凝縮した逸品です。蓋を開けば漂う香煙が伽藍の回廊をめぐる風となり、茶室に天平の息吹を運び込んでくれることでしょう。ぜひ季節折々の茶事でお手に取り、尾西楽斎様が紡いだ“掌の夢殿”をお楽しみくださいませ。
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