33獅子香合 尾西楽斎
33獅子香合 尾西楽斎
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幅 : 4.0cm×6.5cm 高さ :7.8cm
獅子香合(ししこうごう) 尾西楽斎様 作
――瑞獣の咆哮を掌に宿し、場を護る――
1.作品概説
本作は、奈良・赤膚焼の八代 尾西楽斎様 が手掛けられた獅子形(唐獅子)香合でございます。高さ約8センチの掌中尺寸ながら、筋骨逞(たくま)しい体躯と愛嬌漂う面相を併せ持ち、右前肢に抱えた金泥彩の宝珠がいっそう瑞々しい気を放っております。胴中央で上下二分割され、内部に練香や伽羅片を納められる実用構造です。
2.造形・意匠
部位 | 造形の特徴 | 覑賞ポイント |
---|---|---|
頭部 | 向かい歯をのぞかせた「阿(あ)」の表情 | 魔除けの咆哮を表すと同時に、親しみやすい笑みを思わせる柔和さがあります。 |
たてがみ・胴 | たけのこ刀で縦方向に削り出し、毛並みを荒彫り | 還元焼成で発色した褐鉄釉が陰影を強調し、躍動感を演出。 |
宝珠 | 金泥を焼き付けた球体を右脚で抱擁 | 獅子が「宝珠を得て万難を退ける」吉祥を象徴します。 |
脚裏 | くっきりと肉球を彫り、安定感を確保 | 掌に乗せた際にも転びにくい重心設計です。 |
3.釉調と技法
褐鉄釉(かったいゆう)
赤膚土に含まれる鉄分と鉄釉が融け合い、還元炎で荒々しい褐色~赤褐色を呈しております。部分的に青紫の窯変が生じ、獅子毛の陰影を深めています。
金泥焼付
宝珠と牙先に薄く金泥を重ね、700℃前後で本焼き後の低温焼成を行うことにより、肌に馴染む古色を演出しました。
一体彫塑→蓋切り
塊土から彫り出して全体を造形したのち、半乾きで鋸状刃を用いて水平に切り、蓋物化。合わせ口を研ぎ合わせ気密性と開閉の滑らかさを確保しています。
4.獅子モチーフの文化的背景
獅子は古来、中国から伝わった想像上の霊獣で、魔除け・守護の象徴として社寺の狛犬や調度に用いられてきました。日本の文様学でも「太陽の力を宿す瑞獣」「王者の威徳」を表す吉祥意匠と位置付けられております。
茶の湯では桃山期に唐物香合として獅子形が渡来し、江戸期には形物香合の番付でも東方上位に列せられるほど人気を博しました。
5.茶席での取り合わせ
季節・趣向 | 軸・花 | 香 | 演出効果 |
---|---|---|---|
新年・初釜 | 軸「獅子吼(ししく)」、花:若松・千両 | 練香「瑞雲」 | 年頭に魔を祓い、福を招く瑞獣として配置 |
端午の節句 | 軸「勇猛精進」、花:杜若 | 伽羅片 | 男児の健やかな成長と武運を祈念 |
重陽(菊の節句) | 軸「延年転祚」、花:白菊 | 白檀+龍脳 | 菊酒と獅子で長寿を祝う組み合わせ |
6.尾西楽斎様の作陶理念
尾西楽斎様は「奈良の歴史・吉祥を現代の茶陶へ」という信条のもと、鹿・梵鐘・鴟尾に加え、本作のような瑞獣シリーズにも力を注いでおられます。粗土の荒肌と金泥の対比で表す“剛と柔”“質実と華”は、赤膚焼の温雅さと獅子の威厳を巧みに結びつけたものと言えるでしょう。
7.まとめ
「獅子香合」は、守護の咆哮と愛嬌とを併せ持つ瑞獣を掌に凝縮した逸品でございます。蓋を開けば立ち上る香煙が宝珠を包み込み、まるで獅子が福徳の雲を吐き出すかのよう。季節の節目や祝儀の席にぜひお用い頂き、尾西楽斎様ならではの力強い造形と赤膚土の豊かな景色をご堪能くださいませ。
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