青瓷振出 多賀井正夫
青瓷振出 多賀井正夫
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幅 : 6.3cm×6.3cm 高さ : 10.4cm
作品概要
本作「青瓷振出(ふりだし)」は、青瓷作家 多賀井正夫様 が手掛けられた瓢箪(ひょうたん)形の振出です。振出は茶席で金平糖や落雁などの乾菓子を“振って出す”ための小容器で、客人に甘味を供する優美な所作を支えます。本作の柔らかなフォルムと澄んだ青みは、目にした瞬間に清涼感と端正な気配を伝え、甘味が織り成すひとときに上質な余韻を添えてくれます。
造形と釉調
瓢箪形の吉祥性
瓢箪は古来より「無病(六瓢)」に通じる縁起物であり、豊臣秀吉の馬印としても名高い意匠です。上下二つの膨らみがつなぐ緩やかな稜線は、茶席に親しみや遊び心を呼び込む一方、青瓷の静謐な色調が格を保ちます。
青瓷釉の深み
透明感のある青瓷釉は鉄分を微量に含む長石系釉を還元炎で焼成して得られます。多賀井様は釉厚を緻密に調整し、器肌を覆う微細な貫入(かんにゅう)と、わずかに乳濁する“翳(かげ)”を作り出すことで、宋代龍泉窯の玉磁を想わせる奥行きを実現されています。特に胴部中央のわずかな段差が、光の反射と陰影を二層に分け、釉色の階調を際立たせています。
技術的特徴
均整の取れた轆轤成形
振出は掌に収まる小品ながら、胴の膨らみと肩の立ち上がりを滑らかに連続させる高度な轆轤操作が求められます。わずかな歪みが形姿を損ねるため、多賀井様は高可塑性の磁胎土を用い、乾燥収縮率を逆算しながらミリ単位で肉厚を均一化。焼成後も安定した曲線美を保っています。
口造りと止栓
口縁はわずかに外反し、内側に“返し”を設けているため、差し込んだ紐栓が安定して菓子の湿気を防ぎます。栓上部の麻紐を束ねる意匠が、素朴さの中に茶道具らしい侘びを添えている点も見逃せません。
作家略歴と制作思想
多賀井正夫様(1970年・大阪生まれ)は日本工芸会正会員であり、長年にわたり青瓷を主軸に研鑽を積んでこられました。日本伝統工芸展や日本伝統工芸近畿展での入選・受賞を重ね(新人奨励賞、日本経済新聞社賞など)、「三米窯」を拠点に精緻な青瓷表現を探求されています。多賀井様は「青の深さは土と炎の対話で決まる」と語り、骨材配合から焼成酸素量まで一窯ごとに数値記録を残し、再現性と偶然性の“縁”を両立させる制作姿勢を貫かれています。
文化的・歴史的意義
青瓷は中国・六朝期の越州窯に端を発し、宋代の龍泉窯で最盛を迎えた後、朝鮮高麗青磁を経て日本にもたらされました。淡い青緑の釉色は「秘色(ひそく)」と称され、宮廷の理想色として珍重されます。本作はその伝統を現代日本の茶道具に昇華させた一例であり、古典性:龍泉の玉磁を思わせる釉景。日本性:茶の湯の実用器としての機能美。現代性:均質な釉肌と小さな造形への凝縮を同時に宿しています。
茶の湯における役割
抹茶の苦味を和らげる干菓子は、点前の流れを和ませる“甘露門”と位置付けられます。振出が現れる瞬間は、亭主のもてなしの心が最も穏やかに伝わる場面です。青瓷の澄んだ色調は、盛夏の涼趣や初春の清廉さを演出し、客人の視覚と味覚を同時に整えます。瓢箪の図像学的吉祥性も相まって、慶事の席や炉開きなど節目の茶会にふさわしい取り合わせとなるでしょう。わずか掌大の器に凝縮された青瓷の深奥――それが本作「青瓷振出」でございます。多賀井正夫様の確かな技術と、青瓷に懸ける精神性が紡ぎ出す静謐な“青”は、茶席の空気を一段と澄ませ、日常に潜む佳き瞬間をそっと掬い上げてくれます。どうぞ手に取ってお確かめいただき、その涼やかな光彩と穏やかな口当たりをご体感くださいませ。
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