親子亀香合 尾西楽斎
親子亀香合 尾西楽斎
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幅 : 8.1cm×6.0cm 高さ : 4.0cm
親子亀香合(おやこがめ こうごう) 尾西楽斎様 作
――「鶴は千年、亀は万年」──二つの甲羅に連なる悠久の福を包んで――
作品概要
本作は奈良・赤膚焼窯元の八代 尾西楽斎様 が制作された、親子亀を象った香合でございます。堂々たる母亀の甲羅を蓋身とし、その上に小亀がちょこんと乗った愛らしい構成は、長寿・子孫繁栄・家業安泰という三つの吉祥を同時に具現化しております。胴内部は空洞になっており、練香や伽羅片を収納して茶席で用いる実用的な構造です。
造形・彩色の見どころ
視点 | ディテール | 鑑賞ポイント |
---|---|---|
母亀の甲羅 | 鱗を思わせる八角形の甲殻をレリーフ彫りで強調 | 側面に走る朱鉄線が甲羅の節理を際立たせ、躍動感を演出 |
小亀 | 高さ約1.5 cmのミニチュアながら頭部・足先を丁寧に彫刻 | 親の甲羅にしがみつく仕草が微笑ましく、親子の絆を暗示 |
蓋合わせ | 甲羅の縁を自然なくびれに見立てて分割線を意匠化 | ぱちりと合わさる精度を保ちつつ、外観の一体感を損なわない |
釉調は淡黄灰釉を基調にし、甲羅の稜線や足先にだけ鉄分の多い弁柄を筆で差して焼成することで、赤褐色の発色がアクセントになっています。焼成中に釉がわずかに流れて赤がにじむ様は、長年海藻を纏った「蓑亀(みのがめ)」の年輪を思わせます。
技法と赤膚焼の特色
赤膚焼は鉄分を含む赤膚土を還元焚きすることで、柔らかなベージュ地にほのかな桜色を浮かべる「肌合(はだあい)」が特徴です。本作では手捻り成形 → 半乾きで母亀と小亀を一体化、竹べらで甲羅模様を彫り起こし、弁柄で線描、還元焼成で淡黄灰釉を溶着させ、鉄分を赤味に転化。という三段階を踏むことで、赤膚焼ならではの温雅な土味と親しみやすい写実性が高次元で融合しております。
亀モチーフの文化的背景
長寿・不老
「鶴は千年、亀は万年」の故事により、亀は古来長命の瑞獣とされてきました。茶道具でも利休所持の「利休形亀香合」をはじめ祝儀の席で重宝されます。
子孫繁栄
親亀に子亀が寄り添う意匠は、中国の吉祥画に見られる「亀趺(きふ)の上の石碑」が転じ、家系の隆盛を祈る図像として受け継がれました。
家業安泰
甲羅は「堅牢」の象徴とされ、商家や武家では蔵の守護として亀文様を用いた例が多々ございます。
茶席での取り合わせ
茶事 | 軸・花 | 推奨の香 | 趣向 |
---|---|---|---|
初釜・賀寿 | 軸「亀鶴延年」/花:若松・千両 | 練香「瑞雲」 | 新年や還暦・米寿など、長寿を祝う席で福徳を象徴 |
端午の節句 | 軸「不老長春」/花:杜若 | 白檀+龍脳 | 男児の健やかな成長を亀の堅甲に託して祈願 |
名残の茶事(晩秋) | 軸「無事是貴人」/花:野紺菊 | 伽羅片 | 一年を無事終えた感謝を「万年生きる亀」に重ねる |
尾西楽斎様の作陶理念
尾西楽斎様は「奈良の歴史と吉祥を現代茶陶へ」という信条を掲げ、鹿・梵鐘・鴟尾に加え、季節の瑞獣や瑞果を題材に積極的な制作を続けておられます。本作では親子という温かな情感を取り込み、赤膚焼の柔らかな色調と吉祥文様の意味性を調和させることで、祝儀の席から日々の稽古まで幅広く活躍する香合に仕上げられております。
まとめ
「親子亀香合」は、悠久の時を象徴する亀に、家族愛と世代継承の物語を重ねた逸品です。蓋を開けば立ちのぼる香煙が、二匹の甲羅のあいだから静かに広がり、茶室に穏やかな福気を行き渡らせてくれることでしょう。どうぞ掌の上で、尾西楽斎様ならではの温もりある造形と吉祥の祈りをゆっくりとお味わいくださいませ。
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
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