27柿香合 尾西楽斎
27柿香合 尾西楽斎
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幅 : 5.7cm×5.7cm 高さ : 3.8cm
柿香合(かき‐こうごう) 尾西楽斎様 作
――秋実(みのり)の朱を掌に宿し、甘露の香を包む――
1.作品概説
奈良・赤膚焼(あかはだやき)の八代 尾西楽斎様 が手掛けられた柿形の香合です。握りこぶしほどの寸法に熟柿(じゅくし)の滑らかな張り、やわらかな凹み、そして萼(がく)の緑を写実的に写し取り、胴が蓋身・身の二分割となって香を納める構造になっています。ほのかに透ける朱橙釉(しゅとうゆう)の艶やかさが、秋の日差しを溜め込んだ果実そのものを思わせます。
2.造形・意匠
部位 | 造形・彩色 | 覑賞のポイント |
---|---|---|
果皮 | 鉄赤系の釉を厚掛けし、所々に白濁や貫入を生かす | 熟した柿の瑞々しさと、自然の斑(ふ)の侘び味を両立 |
萼 | 銅緑釉で黄緑〜暗緑を発色し、葉脈を線刻 | 果皮との補色対比で立体感を強調 |
蓋合わせ | 果皮の自然なくびれを意匠化して段を隠す | 香合としての分割線を意識させない一体感 |
3.釉調と技法
鉄赤釉の発色
赤膚土の鉄分と鉄赤釉が溶け合い、1240 ℃前後の還元焚きで温かみのある朱橙色を呈します。部分的に銀灰色が現れるのは酸化還元の揺らぎによる窯変で、熟柿表面の微妙な色むらを写した表情として活かされています。
銅緑釉の掛け分け
萼部には銅を呈色剤とする長石釉を差し掛け、溜まりが濃緑、薄掛けが黄緑へと転じるグラデーションを表現。
彫塑的成形
ろくろで薄手の盃状素地を二枚引き、合端(ごうば)成形で球体を作った後に手捻りで凹凸を整える独自技法。これにより内部空間を十分確保しつつ、外観のふっくら感を損なわないバランスを実現しています。
4.柿と茶の湯 ― 文化的背景
秋の象徴
柿は日本の国果とも呼ばれ、「柿色に染まれば秋本番」と詠われるほど季節を代表する果実です。
茶室の名画「六柿図」
禅画《六柿図(ろっかしず)》は茶席で秋に掛けられる代表作であり、侘び寂びを体現する図として愛玩されてきました。
観月・収穫の供物
十五夜の「お月見」では栗・芋と並び柿が供えられ、月見の茶事でも盛んに扱われます。
こうした背景から柿香合は 仲秋から霜降(そうこう)までの炉開き前 に殊に好まれ、「実り」を祝う趣向として客人の豊穣と安泰を祈念します。
5.茶席での取り合わせ
茶事の時季 | 道具組の提案 | 推奨の香 | 効果 |
---|---|---|---|
仲秋・名月(十五夜) | 軸「清風払明月」、花:薄・吾亦紅、茶碗:井戸 | 伽羅片 | 月下に色づく柿を想わせる |
神無月・炉開き | 軸「福寿海無量」、花:柿の小枝 | 練香「瑞雲」 | 実りと新たな炉の火を祝う |
霜月・時雨茶事 | 軸「一期一会」、花:山茶花 | 白檀+龍脳 | 時雨に洗われた柿の艶を表現 |
6.尾西楽斎様の作陶理念
尾西楽斎様は「奈良の風土と吉兆を現代茶陶に映す」ことを信条とし、鹿・梵鐘・鴟尾などに加え、季節の瑞果(柿・茄子など)を題材に精力的な制作を続けておられます。本作では、赤膚土の柔らかい肌合いを活かしつつ、鉄赤釉と銅緑釉の対照で果実の生命感を凝縮。掌中彫塑としての鑑賞性と、香合としての機能美を高次元で融合されています。
7.まとめ
「柿香合」は、秋の実りとともに巡る感謝の心をそっと包む茶器です。蓋を開けば甘やかな香煙が漂い、朱橙の果皮に映る微細な貫入が、時を重ねて深まる秋色を語りかけます。季節の節目にぜひご使用いただき、尾西楽斎様ならではの温かな土味と瑞々しい色彩をお楽しみくださいませ。
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【陶器をご購入の際のお願い】
作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。