鉄釉耳付花入 　尾西楽斎

幅 : 10.5cm   高さ :24.5cm

尾西楽斎様による「鉄釉耳付鶴首花入」は、伝統的な鶴首の形を基にしながらも、花を生けやすいように少し太めに仕上げられた作品です。鶴首の特徴である細長い首が、控えめながらも優雅な佇まいを保ち、空間に華やかさを添える一品となっています。

鉄釉陶器の特徴

本作は釉薬に含まれる鉄分が黒色、茶色、黒褐色、柿色などの多様な色合いを生み出す技法が使われています。この技法は、古代中国から伝わり、日本を含む東アジア全域で独自の発展を遂げました。特に宋時代の中国では優れた作品が多く生まれ、日本にも影響を与えました。わが国では鎌倉・室町時代から瀬戸を中心に発展し、茶道文化の中で特に重宝されました。近代に入ると、技術的な進歩により、更に高度な表現が可能となり、現代の陶芸家たちにも受け継がれています。

美しい仕上がりと多用途性

「鉄釉耳付鶴首花入」は落ち着いた色合いが特徴で、花を引き立てる優れた背景となります。さらに、そのデザインは真行草の形式にとらわれず、和室・洋室を問わず、どんな空間にも調和します。花を生ける用途だけでなく、単独でもインテリアとして存在感を放つ作品です。高貴すぎない親しみやすさを持ち、安定感と重厚感を兼ね備えたこの花入は、日常の中で気軽に楽しむことができる逸品です。24