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東大寺梵鐘香合 尾西楽斎

東大寺梵鐘香合 尾西楽斎

通常価格 ¥44,000
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幅 : 5.0cm×5.0cm 高さ : 8.0cm

東大寺梵鐘香合(とうだいじ ぼんしょう こうごう) 尾西楽斎様 作

――奈良の大鐘(おおがね)の余韻を、掌の宇宙へ――

1.作品概要

本作は、奈良・赤膚焼(あかはだやき)の名匠である八代 尾西楽斎様が造形した香合で、東大寺国宝梵鐘を掌中に写し取った小品です。蓋物形式で、胴の中空部に練香や香木を納められる構造になっており、茶席での*名残(なごり)/歳暮(さいぼ)*、あるいは除夜の趣向に最適です。

2.造形の見どころ

部位 実物梵鐘との対応 香合ならではの工夫
竜頭(りゅうず) 二体の龍が絡み合う持ち手を簡潔に抽象化 通気孔を兼ねた透かしを設け、香煙の抜けを良くする
袈裟懸け(けさがけ)と乳(ち) 四方へ十字に走る力強い稜線と98個の乳を陰刻で表現 乳を細かい点刻で示しつつ、指当たりを滑らかに処理
音座(つきず) 奈良時代の格調を示す八葉の文様 中央をやや膨らませ、摘みやすい蓋合わせに寄与

全体に施された黒飴釉と銅緑釉の重ね掛けは、青銅の緑青(ろくしょう)と経年の褐変を同時に表現し、わずかな窯変が鉄肌のような光沢と深みを生んでいます。

3.技法と赤膚焼の妙

赤膚焼は江戸初期に興り、奈良絵・大和絵の雅趣を茶陶へ取り入れて発展しました。尾西窯では、鉄分を多く含む赤膚土を還元焼成し、鉄釉の冴えと淡緑釉の発色を両立させるのが特長です。本作では鋳型を用いず、手捻りと面打ちで鐘形を成形。

乾燥後に印刻と線彫りで乳・袈裟懸けを彫り起こし、陰影のあるレリーフに仕上げる還元炎で焼成し、黒飴釉の鉄分が金属光沢を帯び、更に銅緑釉が所々に溜まり緑青色を呈するという三段階の工程が見受けられます。土と釉いずれも金工を思わせる「代用金属(テラ・メタリカ)」の質感を得るための熟練した調合と窯焚きが光ります。

4.東大寺梵鐘の歴史的意義

鋳造年:天平勝宝4年(752)と伝わり、大仏開眼と同年にあたります。

規模:総高3.86 m、口径2.71 m、重量26.3 tという巨体で、日本三名鐘のひとつに数えられます。

愛称:「奈良太郎(ならたろう)」の名で親しまれ、毎夕8時に鳴らされる鐘音は「勢いの東大寺」と称される深い余韻を響かせます。

こうした歴史は、奈良の精神文化―すなわち華厳の教理と国家鎮護の祈り―を今日まで伝えており、香合に写すことで茶室に厳粛と静寂を呼び込みます。

5.季節感と取り合わせ

茶事の時季 趣向 推奨の香 道具組の例
名残・歳暮 年の瀬の静けさと余情 伽羅の切片や沈水香を微かに 軸:良寛「照々鐘打てば…」、花:寒椿一枝、釜:鬼面風鐶付
除夜 百八煩悩を払う象徴 龍脳を少量たき、澄んだ匂いで清める 棚に鐘香合と羽箒、菓子に「除夜錦玉」
立春初席 新年の瑞兆として 白檀主体の練香 銀瓶で白湯を添え、花は蝋梅

6.尾西楽斎様の作陶理念

尾西楽斎様は「奈良の記憶を茶の間へ」という信念のもと、土地の史蹟や神話・伝説を象徴するモティーフ(鹿・灯籠・梵鐘など)を茶陶に昇華なさっています。手捻りならではの温もりと、彫塑的な造形を兼ね備えた香合は、見る者に「掌中の古都」を想起させ、鑑賞と実用を併せ持つ稀有な存在と言えるでしょう。

7.まとめ

この東大寺梵鐘香合は、千年以上つづく鐘音の余韻と、奈良仏教の静謐な荘厳を微小な器壁に閉じ込めた逸品です。黒褐と緑青の釉調が織りなす陰翳は、茶室の柔らかな灯りのもとでさらに深みを増し、蓋を開けて漂う香煙とともに、遠く大仏殿の鐘の響きを想像させることでしょう。歳時記と茶の湯の詩情を結びつけるための、小さくも雄渾な名作でございます。

尾西楽斎様との対談 – 高級陶器の専門店【甘木道】

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