青瓷筍花入(大) 諏訪蘇山
青瓷筍花入(大) 諏訪蘇山
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幅 : 14.2cm 高さ : 24.8cm
「青瓷筍花入(大)」は、四代 諏訪蘇山様 が南宋・龍泉窯の砧青磁を範としつつ、日本の花入文化に即して創案された作品です。写真でご覧いただけるように、胴部から肩にかけて施された段状の稜線は、地中から芽吹く若筍(たけのこ)の節目を想起させます。節ごとにわずかに角度を変えながら滑らかに立ち上がるシルエットは、植物が内側に秘める生命力を静かに示唆し、同時に南宋青磁特有の端正なプロポーションを写し取っています。
造形とフォルム
胴部の節構成
胴部は張りを持たせた節状の輪郭で構成され、最下段から徐々に口径へ向けて絞り込まれる設計です。この緩やかな収束が、視覚的な安定感と伸びやかな垂直性を両立させています。
長頸の竹節彫
首部にも細い節彫が連続し、竹の稈(かん)を思わせるリズムが生まれています。これにより、胴部の力強い節と呼応しながら全体の統一感を高めています。
輪花状の口縁
口縁はやや外反し、内側にごく浅い輪花を施すことで、挿花時に花材が自然に中心へ寄るよう設計されています。
釉調――初代より継承する「蘇山青磁」の深み
写真でも確認できる淡い翡翠色は、初代 諏訪蘇山様 が二十五年の試行錯誤で完成させた「蘇山青磁」の系譜にあります。胎土に含ませた鉄分が還元焼成によって溶け込み、透明度の高い青緑を呈しています。特筆すべきは段差の稜線に生じるわずかな色溜まり――そこには釉が厚く掛かり、光の加減で淡く翳り、まるで朝露をまとった若筍の艶やかさを想起させます。
機能美と茶席での取り合わせ
水際の見込み
内部に水を張ると、厚釉のために水面が器壁に映り込み、柔らかな光彩を帯びます。花材の茎が水中で揺らぐ様子が透け、器と花が一体となる景色が生まれます。
季節感の演出
春の木の芽、夏の矢筈芒、秋の野菊、冬の蝋梅など、節の凹凸が花留めの役割を果たし、少量の草花でも豊かな立体感を演出します。
歴史的背景と継承の意義
筍形の花入は南宋期に宮廷や文人の間で好まれた意匠で、龍泉窯では青磁の透明感と相まって「春の兆し」を象徴する器形とされました。初代 諏訪蘇山様 は、その精神性と造形を日本に移植し、砧青磁の復元に成功。四代 諏訪蘇山様 は、その青磁色を受け継ぎながらも、現代の茶会で扱いやすいサイズ感と強度を追究し、本作では口縁の厚みや節部の肉取りを微調整して耐久性を高めています。
作家略歴と制作姿勢
四代 諏訪蘇山様 は1970年京都市生まれ。父・三代 諏訪蘇山様 と母・十二代 中村宗哲様 の薫陶を受け、2002年に四代を襲名されました。石膏型成形や練込技法など多様な手法を駆使しつつ、初代以来の研究心を継承。「作品には物語を宿すべし」という母の教えのもと、本作にも“春を告げる筍”という瑞兆の物語を託しておられます。
結語
「青瓷筍花入(大)」は、南宋龍泉窯砧青磁の雅趣を写し取りつつ、四代 諏訪蘇山様 の繊細な造形感覚と釉調制御によって、現代の茶席にふさわしい瑞々しさを纏っています。段状の節が醸し出す躍動感と、澄みわたる青の静寂――その相反する要素が一つの器に調和し、見る者の心に春の息吹をもたらす逸品と申せましょう。
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