茶盌色絵桜之図 高橋道八
茶盌色絵桜之図 高橋道八
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幅 : 11.3cm 高さ : 7.79cm
色絵桜之図茶盌 ――九代 高橋道八様
淡い生成り地に桜吹雪を思わせる白点を散らし、幹と若枝を簡潔な筆致で描いた本作は、春の野を切り取ったかのような伸びやかな気配を湛えています。以下、五つの観点からその魅力と意匠背景を詳しくご紹介いたします。
1.造形美 ― 端正で安心感のあるフォルム
ろくろ成形による端正な円筒形を基調としつつ、口縁にかけてわずかに広がる柔らかなシルエットが、抹茶の泡をふっくらと受け止めます。胴回りに適度な厚みを残すことで手取りは安定感があり、茶巾の据わりも良好です。高台はやや高めに切りそろえられ、素地を白く際立たせることで、全体の軽やかさを損なわずに引き締めています。
2.釉調 ― 貫入に映える桜吹雪
胎土に灰釉を掛けた後、窯変によって細やかな貫入(かんにゅう)が生じ、光の加減でほのかな陰影を宿します。さらに上から吹き付けられた白泥が桜の花びらを想起させ、生成りの地と重なって柔らかな雪景色のようにも映ります。貫入に沿って茶が染み入り、長年の使用で景色が深まる経年変化も楽しみの一つです。
3.意匠 ― “咲き初む”瞬間を描く
胴部中央に配された木肌は、鉄絵具で一気呵成に描かれた躍動的な筆致が特徴です。若枝が空へ伸びる構図は、芽吹き始める早春の桜を思わせ、白泥の小花文様と相まって“咲き初む”瞬間をとらえています。外側に散る彩色は、緋色・藍・緑の極小花でアクセントを添えつつ、内側にも同じ吹付けが施され、茶を点てる最中にも桜吹雪が舞う情景を楽しむことができます。
4.技法 ― 白泥吹付と上絵色絵の重奏
鉄絵具描き:幹や枝は鉄分を含む顔料で一本一本を描画し、本焼成で落ち着いた焦げ茶に発色。筆勢を活かした“木肌”表現が見どころです。
上絵付:本焼成の後、低火度釉薬で赤・藍・緑の花弁を点描し、再度焼き付けて定着させています。温度差管理が難しい二度焼きながら、発色の澄みと密着性を両立させる高度な窯掌技術が窺えます。
5.歴史的・文化的背景 ― 茶の湯と桜
「桜」は平安以来、観桜の宴や和歌に詠まれ、花の吉祥として茶席でも親しまれてきました。特に“花の茶事”と呼ばれる四月初旬の茶会では、桜を主題とする茶道具が重宝されます。高橋道八様は京焼色絵の名門として、古典的意匠を踏まえつつ現代的な感性を融合させることで知られ、本作でもミニマルな筆致と遊び心ある吹付け表現で、現代空間にも合う軽やかな桜景色を創出しています。
高橋道八家は江戸後期以来、京焼色絵の名門として知られます。九代様は京都文教短期大学 服飾意匠学科デザイン専攻を経て、京都府立陶工高等技術専門校 成形科・研究科、さらに京都工業試験場本科で技術基盤を固められました。
平成8年(1996年) 八代道八様(父)に師事し、本格的に作陶を開始
平成24年(2012年) 九代 高橋道八を襲名
服飾デザインで培われた造形感覚と、京焼の伝統技法が交差する作風は、道八家に新たな風を吹き込み、現代茶席やギャラリー空間にも映える洗練を示しています。
春の息吹を封じ込めたかのような本茶盌は、淡い生成り地と散る白花が織りなす優美さと、鉄絵具の躍動感が絶妙に調和した逸品です。手にすれば素地の温もりと吹付けの凹凸が指先に心地よく、抹茶を点てるたびに桜吹雪が盌内外で舞う情景が浮かびます。花の季節の茶会はもちろん、秋冬の席であえて用いることで“花待ち”の趣向を演出するのも一興でしょう。どうぞ末永くご愛玩いただき、桜が芽吹くその瞬間を毎度の一服にてお楽しみくださいませ。
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【陶器をご購入の際のお願い】
作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。