翠緑花入 小川文齋
翠緑花入 小川文齋
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幅 : 10.0cm×10.0cm 高さ : 31.0cm
翠緑花入(すいりょく はないれ)— 小川文齋(六代 興)作
目を奪うような透明感を湛えた翠緑釉が、細身の胴にのびやかに広がり、ふくらみを帯びた中腹から黒釉が滴るように流れ落ちる。この「翠緑花入」は、まるで天地の気配を映すかのような造形美と、釉薬の表情によって生まれる時間の蓄積を感じさせる逸品です。六代 小川文齋様による本作は、伝統的な京焼の系譜を礎としながら、現代の美意識と作家自身の思想を明確に刻み込んだ、静謐でありながら強い意志を内に秘めた作品です。
大地と緑の融和 — 色彩の詩学
この花入を特徴づけるのは、何と言っても釉薬の持つ“色の深さ”です。上部から中腹にかけての美しい翠緑は、山あいの泉に映る木々の色のように清冽で、見る角度や光の加減によってさまざまなニュアンスを帯びます。一方、下部にかけて黒釉が緩やかに滲み込み、あたかも夜の闇が静かに訪れたかのような濃密さを加えています。
この二色の重なりは、地中から芽吹く生命と、その上に広がる空との連続性を想起させ、単なる視覚的装飾にとどまらず、自然との精神的なつながりを感じさせる構成となっています。
造形のバランスと哲学
フォルムは、胴の中央に柔らかな膨らみを持たせた「瓢箪型」を思わせる輪郭。その形状は古くから吉祥とされる「実り」「繁栄」の象徴であり、かつ水を湛える器としての機能美を追求した結果ともいえるものです。細長く伸びた頸部は空間を切り取り、花を挿すことで一層の存在感が立ち上がるように設計されています。
決して誇張されすぎず、かといって凡庸にもならない絶妙な造形バランス。静かなる造形の中に、時の流れと精神の振動が内包されているのです。
「緑の人」としての作家の軌跡
「緑色に惹かれる理由はわからない。ただ、緑の中にいると、心が落ち着く。」
こう語る六代 小川文齋(興)様は、父・五代が多く赤釉を用いたのに対し、自らは緑を“主役”として探求してきました。大学院で彫刻を学び、京都の陶芸専門校と工業試験場で研鑽を積んだ後に京焼の世界に身を置きながら、「平和と調和」を作品の根幹に据え、「輪」や「自然との共生」をテーマに表現を続けています。
翠緑は、まさにその象徴とも言える色。近年では「緑色の人」として広く認知され、個展でも緑を基調とした作品群が訪れる人々に強い印象を与え続けています。この花入も、その文脈の中に生まれた作品の一つであり、緑の力、そして静けさを通して、人と自然、人と人との関係性を結ぼうとする想いが凝縮されています。
文齋窯の歴史に刻まれるひとつの結晶
1847年、初代・小川文助(文齋)が九州で築窯技術を学び、「文齋」として創業。以降、明治の返洛を経て五条坂に窯を構え、今日まで六代にわたりその名と技を継承してきた文齋窯。長年にわたって蓄積された技術、釉薬の調合、造形の妙味。それらすべてがこの「翠緑花入」に凝縮されており、見る者に“脈々と続く手仕事の重み”を伝えてくれます。
佇まいがもたらす静穏
空間に据えたとき、この花入はその佇まいだけで周囲の空気を変える力を持っています。和室の床の間に置けば幽玄な世界を立ち上げ、洋の空間ではモダンオブジェのように独自の存在感を放ちます。花を生けても、空のままでも成立する構成力。これはまさに、用途を超えて美が自立している証左です。
「翠の中に宿る祈りと静けさ」
六代 小川文齋様の美学が結晶化されたこの翠緑花入は、京焼の伝統と革新の交差点に生まれた、時代を超える造形詩といえるでしょう。日常に寄り添うアートとして、あるいは祈りの器として、この作品はあなたの空間に深い調和と気品をもたらしてくれるに違いありません。
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