鉄釉窯変茶盌(線文) 岡田優
鉄釉窯変茶盌(線文) 岡田優
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幅 : 14.8cm 高さ : 7.0cm
鉄釉窯変茶盌(てつゆう ようへん ちゃわん|線文) 岡田優様作
――「青磁の息吹を宿し、夜風のように滑る一本の“線”が湧く」
1. 青黒の宙にゆらぐ“線文”の余韻
本作の最大の見どころは、胴部中央に浮かぶ一本の水平帯――線文です。鉄釉が還元炎を受けてわずかに縮れ、釉厚の差から現れたこの細線は、雲間に伸びる薄月の光のように静かに輝きます。胴上部は青藍、胴下部は焦茶を帯び、線を境にグラデーションが分かれることで奥行きが一層強調されています。
2. 鉄釉窯変の深奥――“黒磁”から“青黒磁”への揺らぎ
天目釉系の鉄釉は鉄分15%以上で黒く発色しますが、岡田優様は酸化・還元を巧みに揺らし、青みを帯びた青黒磁へと誘導しています。焼成終盤に窯内を微酸化状態へ切り替えることで、鉄イオンの一部を再酸化させ、表層にヘマタイト微結晶を析出させる手法です。これにより青紫〜緑青の構造色が生まれ、LED光下ではオーロラのような虹彩が浮かび上がります。
3. 造形の妙――瀬戸天目の系譜に連なる“平茶碗”の思想
口造り:外反を控えたわずかな張り出しが、口当たりに優しく触れます。
胴線:中央の線文が視覚的な“腰”を作り、器全体に締まりを与えます。
高台:筒状の高台は瀬戸窯の菊花天目や高麗天目に通じる意匠で、安定感と軽快な指離れを両立します。
この平茶碗に近い浅い碗形は、抹茶の泡立ちを速めると同時に湯温を下げすぎず、薄茶の香りを素早く立ち上げます。また、広い見込みは茶筅の動きに制限を与えず、線文の周囲に泡が寄り添う視覚効果も生みます。
4. 歴史との対話――線文が語る宋窯から瀬戸への橋渡し
宋代建窯の禾目天目では、釉の流れ止まりが稜線状に残り、箆(へら)彫りのような横帯を見せる例があります。一方、日本の瀬戸早期天目では土際を覆う“鬼板化粧”が帯化し、二層の色幅を強調しました。岡田優様の線文は両者の要素を踏まえつつ、現代的なミニマルデザインへ再構成したものです。
5. 掌で育む“景色”――使用と保管のポイント
薄茶点前では、泡のドーナツ状の輪の外側に線文が重なり、湖面の水平線を思わせる景色が楽しめます。
濃茶点前なら、暗褐色の湯面と青黒釉の対比が際立ち、静謐さが一層深まります。
使用後はぬるま湯のみで手洗いし、柔らかな布で水気を拭き取ってから自然乾燥してください。鉄釉が呼吸しやすくなり、経年で鈍銀の結晶が浮き上がります。
光源の選択で表情が激変します。行灯や蝋燭の暖光下では青緑が深く沈み、LED白色光下では紫がかって妖しく光ります。
6. 岡田優様の制作哲学――“線”が示す風の記憶
清水五条坂で培ったフォルムの柔和さと、宇治・炭山の山肌を撫でる風の感覚――岡田優様はそれらを一本の線文に凝縮しました。「風が器の内外をゆったりと吹く」という作家の言葉どおり、線は風が刻んだ軌跡であり、釉の色幅は移ろう空の表情です。黒でもなく青でもない曖昧な“間(ま)”の色彩は、季節や時間帯によって異なる山の気配を映し込み、使い手の五感を静かに開きます。
結語
青黒の宙に一本の風を描く“線文天目”。宋窯から瀬戸への歴史の潮流を背にしながら、岡田優様は現代の息吹を纏わせ、静寂の中に潜む風景を掌に届けてくれます。茶の湯の「一期一会」に寄り添い、時とともに色づく景色をどうぞご堪能ください。
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