三ツ足香爐 小川文齋
三ツ足香爐 小川文齋
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幅 : 12.0cm×12.0cm 高さ : 15.0cm
三ツ足香爐(みつあしこうろ)
― 六代 小川文齋(興) 作
この小ぶりな香爐は、まるで森の奥深くで静かに香を焚く精霊の器かのような、幻想的な佇まいをたたえています。六代 小川文齋(興)様による「三ツ足香爐」は、わずかに黄味を帯びた繊細な青磁釉の中に貫入が走り、やわらかくも深い表情を見せる一作です。表面に浮かぶ自然な釉の溜まりや微細な貫入の網目は、長年使い込まれたかのような温もりを宿し、時の蓄積を感じさせます。
特徴的なのは、作品の足元を支える三本の脚。土を捻り上げたような有機的な曲線を描きながらも、全体のバランスはあくまで静謐であり、軽やかで可憐な印象を与えます。その脚が空間との距離を生み、香の煙がすうっと立ち上がる余白をつくることで、香爐本来の役割――「香を中心とした空間の設計」を、より豊かに演出します。
火舎(蓋)には、不規則に切り抜かれた透かしが施され、香が立ち昇る際に風がすり抜けるような、視覚と触覚に訴える構造になっています。その透かしから立ち上る香煙は、作品全体の造形と呼応しながら、空間にゆるやかな動きをもたらすのです。
小川文齋の“静と動”の造形哲学
六代 小川文齋様は、京都五条坂において150年以上続く文齋窯の現当主。翠釉や焼締、彫刻的フォルムなど多彩な表現を追求しながら、古典的な美と現代的な感性の融合を試みています。
初代・小川文齋(文助)は1847年に鹿背山で窯を開き、明治以降は五条坂にて活動を継続。六代目である興氏は、大学院で彫刻を学んだ後に陶芸に進み、その立体的構成力と釉薬への深い探究心により独自の世界観を築いてきました。とくに追い求めてきた“緑”は、争いを超えた人と人とのつながり、つまり「和の象徴」として一貫して作品の軸に据えられています。
この香爐の柔らかな色合いも、まさにその“緑の系譜”のひとつといえるでしょう。
香爐がもたらす空間の再構築
香爐は、単なる香を焚く道具ではありません。それは、空間に新たな“意味”と“感覚”をもたらす存在です。香は見えず、形もありません。しかし、香爐を介して放たれるその香気は、空間を静かに満たし、人の心に“余白”を与えます。
この「三ツ足香爐」は、その効果を最大限に高めるよう設計されています。香の煙は蓋の透かしから舞い上がり、光を受けてゆらめき、空間にリズムをもたらす。脚によって地面から浮かせることで、香爐は「置く器」ではなく、「浮かぶ器」としての存在感を発揮します。
そして、香がもたらす空気の変化を“見えるかたち”で伝えるのが、この作品の大きな魅力です。
香りと共に生きる美の器
仏前に、書斎に、あるいは現代のリビングの一角に――。この香爐は和洋を問わず、さまざまな空間に自然に調和し、そこに“静けさ”と“呼吸”を運びます。日常の中に一瞬訪れる「香りの時間」を、この器とともに過ごすことで、心がほどけ、感性が研ぎ澄まされるような体験が生まれるでしょう。
三ツ足香爐――それは香を焚くための器であり、
同時に、空間と心を“再構築”するための、静かな造形詩。
六代 小川文齋様が今に伝える、用の美と精神の静穏がここに息づいています。
ぜひその香気とともに、手に取ってお確かめください。
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