ぐい呑み 小川文齋
ぐい呑み 小川文齋
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幅 : 7.0cm×7.0cm 高さ : 5.0cm
藍の宙を呑む ― ぐい呑み 六代 小川文齋(興) 作
まるで星のない夜空を手のひらに抱くかのような、深い藍の世界。六代 小川文齋(興)様によるこのぐい呑みは、緻密でありながら柔らかな表情を湛えた、美しさと静けさが共存する小宇宙です。器面を覆う藍釉の奥には、時間の蓄積や思索の静寂が秘められているかのようで、見るたびに心が静まり、吸い込まれていくような感覚を覚えます。
藍釉という深遠の領域
このぐい呑みの主役は、なんといってもこの濃密な藍釉です。単なる「青」ではなく、群青、瑠璃、青墨、そして夜の闇をも思わせるような奥行きのある藍――その色彩は角度や光によって微妙に揺れ動き、液体のように生きているかのごとく器肌に浮かび上がります。
口縁にはごくわずかに青白い流れが見られ、そこに釉薬の重なりと自然な動きが感じられます。まるで夜明け前の光が、山並みにそっと差し込んできたような、そんなほのかな景色を彷彿とさせる表情です。
造形の静けさと、光を宿す輪郭
器形は極めて端正でありながら、わずかに歪んだ口縁が手仕事の温もりを宿しています。まん丸すぎず、鋭すぎず――その絶妙なバランスが、手に取ったときの安心感と特別感を同時にもたらします。高台は白く焼き締まり、藍釉との強い対比を生み出しています。このコントラストが、器全体の印象に凛とした気配を与え、侘びのなかにモダンな感覚を添えています。
また、この器は掌の中に自然と収まり、指先でそっと支えると、器の中に空が広がっていくような不思議な拡がりを感じさせてくれます。内面にはやや光沢のある釉が施されており、酒を注げば藍の深みに透明な光が差し込み、まるで宇宙を湛える水面のような詩的風景が浮かびます。
酒を通じて交わる時間と感性
ぐい呑みは、単に酒を飲むための道具ではありません。小川文齋様の作品においては、「ぐい呑み」は人と人とをつなぎ、心と心の間に静かに生まれる“余白”を育てる器です。この一碗を手にしたとき、そこには作者の手の感触と、火の記憶、土の匂い、そして使い手の時間が重なり、初めて器としての生命が立ち上がります。
酒を注ぐたびに光が屈折し、飲み口を傾けるたびに光が揺れ、五感が静かに研ぎ澄まされていく――それこそが、このぐい呑みがもたらす“儀式のような日常”なのです。
藍に託された祈りと静謐の思想
六代 小川文齋(興)様が長年追求してきたのは、装飾的な華やかさではなく、色そのものが語りかけてくるような静かな存在感です。「平和を願い、美しいと思えるものを全力で作る」という作家の一貫した姿勢が、この小さなぐい呑みにも余すことなく息づいています。
藍色には、不思議と心を鎮め、思考を深めてくれる力があります。喧騒を離れた静かな時間の中で、この器とともに一献傾ければ、自ずと心の奥底にある“澄んだ何か”と対話できるはずです。
藍の深みに潜む美と真実
この「ぐい呑み」は、まるで藍色の湖を手の中に湛えているような、深く澄んだ存在感を持っています。それは単なる器としての機能を超え、使う人の感性や記憶、そして日々の営みそのものと呼応する、静かなる芸術です。
どうぞその掌で、この藍の世界をそっと受け止めてみてください。そこには、語ることなき詩と、暮らしの中に灯る小さな美の真実が、確かに息づいています。
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