信楽茶盌 柳下季器
信楽茶盌 柳下季器
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幅12.3cm×11.7cm 高さ8.7cm
すらりと伸びた胴、そしてほんのりと薄づくりの口縁。
柳下季器様による《信楽茶盌》は、信楽という古来の土と、現代の審美眼が静かに交差する一碗です。その佇まいには凛とした気品が宿り、掌にのせた瞬間、まるで茶席の空気がひときわ引き締まるような緊張感と美しさを感じさせます。
日本六古窯・信楽の伝統を継ぐ器
本作に用いられているのは、日本六古窯のひとつに数えられる信楽焼。1250年という悠久の歴史をもつこの産地は、自然釉と火の芸術が融合する、まさに“炎の器”の聖地です。柳下様の《信楽茶盌》もまた、5昼夜にわたる高温の焼成によって生み出され、その過程で薪の灰が器に降り積もり、緑のガラス状の“自然降灰釉(ビードロ釉)”として器肌にとどまっています。そのビードロがたゆたうように流れる姿は、まるで山間の沢に差し込む朝の光のようで、静かに心を奪われる美しさです。
火と土が織りなす三重奏——火色、焦げ
信楽焼を特徴づける三つの要素が、この茶盌には見事にあらわれています。
まずひとつは、人工的な釉薬では得られない、不均一で詩的な景色を描きます。ふたつめは、火色(ひいろ)。土に含まれる鉄分が焼成中に赤みを帯び、器の表面にほのかな緋色や淡い柿色のような発色をもたらします。この“火の痕跡”が、まさに土と炎の出会いの証といえるでしょう。そして最後に、焦げ。薪の灰に埋もれた部分が黒褐色に焼けるこの現象は、器の一部に力強い陰影を与え、まるで時間が彫り込んだかのような重みと深みを生んでいます。
薄造りの美——静と動の均衡
この茶盌は、やや薄づくりの口縁が特徴的です。厚手で荒々しい信楽の中にあって、柳下はあえて軽やかさを添えることで、緊張と優美が同居するフォルムを実現しました。
口に運んだときの軽やかさ、茶をいただくときの静かな振動。
それは「使うこと」を前提に作られた器ならではの、気づかいに満ちた造形です。
また、この薄さがあるからこそ、抹茶の緑がより引き立ち、茶席において視覚的な美しさを一層際立たせます。
緋色と抹茶の緑、やわらかな光沢。器と茶が互いを高め合う、まさに“共演”がそこに生まれます。
薪窯と柳下季器様——受け継がれる炎の美学
柳下季器様は、伊賀の地に「神田窯」を築き、土と薪と対話しながら作陶を続けてきた作家です。その作品には一貫して、「自然と人為の境界線をどう見せるか」というテーマがあり、《信楽茶盌》もまた、自然任せのように見えて、その一つ一つに作家の意図と美意識が濃密に込められています。炎に委ねることでしか生まれない景色——けれども、その景色は、作家の手と感覚によって導かれているのです。信楽の土と、炎の偶然性。そしてそれを見極める目。それらすべてが、柳下様の一碗には宿っています。掌に包めば、ほんのりとした温もりとともに、薪窯の記憶が指先から伝わってくるでしょう。そして茶を点てたその瞬間、器の中に、かすかにゆらぐ炎の残響がよみがえるのです。
柳下 季器(Hideki Yanashita) プロフィール
陶芸家 1967 –
東京都生まれ。現在は三重県伊賀市を拠点に活動。桃山時代のやきものに魅了され、陶芸の道へ進む。信楽での修行を経て三重県・伊賀に自ら穴窯を築窯し、「神田窯」を開窯。杉本貞光氏に薫陶を受け、侘び寂びの世界を独自の視点で深く探求しつつ、楽焼や焼締、井戸、織部など多彩な作品を制作しています。柳下氏の創作において重要なテーマとなるのは、先人の技法や精神を深く学びつつも、現代の素材や独自のアプローチを取り入れることで生まれる新たな極みへの探究です。その作品は時代に左右されない本質的な美を問いかけ、観る者をより深い芸術の世界へと誘います。
活動拠点
三重県・伊賀
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。