天目釉茶盌 岡田優
天目釉茶盌 岡田優
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幅 : 13.4cm 高さ : 7.7cm
天目釉茶盌(てんもくゆうちゃわん) 岡田優様作
――「風が器の内外をゆったりと吹くように、穏やかな陰影をまとう様に」
星夜を閉じ込めた天目釉の深奥
本作を覆う天目釉は、濃瑠璃色の闇に銀砂のような微細結晶を宿し、まるで月明かりを含む夜空をそのまま掬い取ったかのようです。光が当たる角度によって星屑のような煌めきが浮かび上がり、抑えた光沢と相まって幽玄なたたずまいを醸し出しています。還元焼成により口縁部に現れた赤紫の“火間”が、静かな闇にあたたかな余韻を添えています。
山風を抱く柔和な器形
ロクロ成形後、土がまだ柔らかい段階で指先と掌でそっと押し広げる「手捻り」の手法が用いられています。土の重みに従って自然に生まれる面の連なりは、宇治・炭山の山稜を渡る風の動きを思わせます。指で撫でると微かな起伏に沿って指腹が受け止められ、掌の中に心地よい重みと安定感が生まれます。
光を孕む微細結晶
釉面には銀彩めいて輝く鉄結晶が点在し、茶席の仄灯りを受けるたびに瞬きます。濃茶を点てれば泡の間に星々が映り込み、薄茶では緑の茶面が夜空に広がる天の川のように溶け合います。使用を重ねることで貫入に茶が染み入り、結晶の輝きがより奥深くなる経年変化も楽しみの一つです。
清水の土味と炭山の炎
素地には京都・清水五条坂で親しまれる細やかな陶土を主体としつつ、炭山の荒土を一部掛け合わせることで、釉下から鉄斑が点々と浮かび上がります。これにより、漆黒の釉肌に微かな土味が混ざり、視覚的な奥行きをもたらしています。炭山で汲み上げた薪窯の炎が土と釉を包み込み、鉄分の発色を絶妙に引き出しました。
静と動を繋ぐ陰影
器を回すごとに、外側では面ごとに生まれる影が山並みの稜線のように力強く映り、内側では柔らかな曲面が穏やかな風の流れを写します。静かな黒の中に揺らぐ煌めきと口縁の紫紅が、茶席における「静」と「動」の二律背反をひとつの器で体現しています。
用と美の共鳴
口縁はわずかに反り返り、飲み口を優しく包み込みます。見込みは程よく広く、茶筅の動きを阻まず、抹茶の泡立ちを均一に整えます。高台は低めで安定感がありながら、手の中で軽快に回せるバランスに仕立てられており、日常使いから正式な濃茶席まで幅広く活躍します。
伝統へ寄り添う革新
宋代の建盞に源流を持つ天目釉を基盤としながら、岡田優様は清水五条坂で培った柔和な造形美と、炭山の自然がもたらす瑞々しい感性を重ね合わせています。鉄が描く星辰、炎が刻む赤紫の輪郭、そして手捻りが生む風のリズム――伝統の深みと現代的な詩情が共鳴し、本茶盌をただの器ではなく、静かな物語を語る造形作品へと昇華させています。
月夜の深奥を湛えたかのような天目釉と、山風を思わせる柔らかな曲線。本茶盌は、茶の湯の「一期一会」に風趣と幽玄を添え、使い込むほどに陰影が深まる伴侶となることでしょう。
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。