丹波茶盌 市野信水
丹波茶盌 市野信水
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丹波茶盌 ― 市野信水様
1.丹波焼の“原点”を映す土肌
市野信水様が選りすぐった丹波の荒土は、花崗岩の粒や鉄分をあえて残して練り上げられております。そのため器面には微細な石英粒が星屑のように煌めき、鉄斑(てつふ)が野趣豊かなアクセントを添えています。釉薬に頼らずとも、土そのものが纏う渋紫の色調と淡黄土色のグラデーションが、侘びの美を静かに語ります。
2.薪窯炎が描く“窯変”の景色
胴下部に広がる白灰色のざらめ状景色は、登窯で三昼夜以上焚き込んだ薪の灰が自然に降り積もり、熔けてガラス質となった証しです。口縁には橄欖(かんらん)色の灰釉がとろりと流れ、所々に溜まりを作って艶を帯びています。炎の流れと灰の降り方が一点ごとに異なるため、同じ景色は二つとありません。
3.侘び寂びを体現する端正な造形
胴をやや絞り、口縁に向かってふわりと開く“桶側(おけがわ)”に近いフォルムは、抹茶がふくよかに泡立ち、客の目線から見込みが美しく映えるよう計算されております。轆轤成形後、指先でわずかなゆらぎを残した面持ちは、手取りに柔らかなリズムをもたらし、長時間の稽古でも疲れを感じにくい設計です。
4.貝目(かいめ)が語る唯一無二の個性
高台脇に残る小さな円形の窪みは、焼成時に器を支えた蛤貝の痕跡――“貝目”です。ここに灰が熔け込むことで淡い焦茶色の環が生じ、まるで自然が押した銘のように作品の個性を際立たせています。貝目は古来「窯の神の手形」とも称され、一期一会の景色として珍重されてきました。
5.茶席で引き立つ機能美
抹茶の発色:素朴な土肌と灰釉が、点てた抹茶の瑞々しい緑を際立たせます。
持ちやすさ:胴のわずかな凹凸が指掛かりとなり、熱を含んだ茶碗でも安定して扱えます。
季節適応:口径が広すぎず保温性が高いため、炉の季節にも風炉の季節にも活躍します。
6.末永く育てる愉しみ
初使用の際には軽く水通しを行い、器肌を潤してからお点前ください。
使用後はぬるま湯でさっと洗い、柔らかな布で水気を拭き取った後、陰干しして十分に乾燥させます。
茶渋や湯の成分がじわじわと沁み込み、土肌がしっとりと深みを増していく経年変化をお楽しみください。
侘び寂びの精神を宿す土と、登窯の炎が織り成した唯一無二の景色――。市野信水様の丹波茶盌は、茶席に静かな緊張感と温もりをもたらし、一服の抹茶を格別なひとときへと変えてくれます。どうぞ末永くお手元で育て、歳月によって深まる“丹波の景”をお楽しみくださいませ。
作陶歴
- 昭和32年: 丹波立杭に初代信水氏の長男として生まれる
- 昭和55年: 丹波立杭にて作陶開始、県展 入選
- 昭和58年: 県工芸美術展 文化協会賞受賞
- 昭和59年: 県工芸美術展 協会賞受賞、県工芸美術作家協会会員となる
- 昭和60年: 全関西美術展 入選
- 昭和61年: 日本工芸会近畿展 入選
- 平成元年: 茶の湯の造形展 入選、大阪高島屋二人展、日本伝統工芸展 初入選、豊田そごう三人展
- 平成2年: 日本伝統工芸展 入選
- 平成3年: 茶の湯の造形展 入選、大阪高島屋二人展、県工芸美術展 神戸新聞社大賞受賞
- 平成4年: 池袋西武蓬莱会展、茶の湯の造形展 入選、日本伝統工芸展 入選
- 平成5年: 茶の湯の造形展 入選、日本伝統工芸展 入選、日本工芸会正会員に認定、県工芸美術展 神戸新聞社大賞受賞
- 平成7年: 大阪高島屋個展、茶の湯の造形展 入選、日本伝統工芸展 入選
- 平成8年: ぎゃらりい栗本個展、日本伝統工芸展 入選
- 平成9年: 大阪高島屋個展、茶の湯の造形展 入選、水戸京成百貨店個展、ギャラリー栄光舎個展
- 平成10年: ぎゃらりい栗本個展、茶の湯の造形展 入選、大黒屋個展、大阪高島屋個展
- 平成11年: 茶の湯の造形展 入選、豊田そごう個展
- 平成12年: 茶の湯の造形展 入選
- 平成13年: 茶の湯の造形展 入選、16回日本陶芸展「丹波茶入」 入選
- 平成14年: 克明を改め二代「市野信水」を襲名、茶の湯の造形展 入選、大阪高島屋、JR名古屋高島屋にて市野信水襲名展を開催
- 平成15年: 茶の湯の造形展 入選、日本陶芸展 入選、日本伝統工芸展 入選、米子高島屋個展、ギャラリー桃山個展、神戸大丸個展
- 平成16年: 宝永堂個展、JR名古屋高島屋個展
- 平成17年: 茶の湯の造形展 入選、日本陶芸展 入選、ぎゃらりい栗本個展、京都高島屋個展
- 平成18年: 米子高島屋個展、大阪高島屋個展、下関大丸個展、ギャラリー壺屋個展
- 平成19年: 兵庫の陶芸出品、日本伝統工芸展 入選、JR名古屋高島屋個展
- 平成20年: 日本伝統工芸展 入選、ぎゃらりい栗本個展
- 平成21年: 大阪高島屋個展、米子高島屋個展
- 平成23年: 日本伝統工芸展 入選
- 平成26年: 日本伝統工芸近畿展 入選
- 平成27年: 日本伝統工芸近畿展 入選、日本伝統工芸展 入選
- 平成28年: 日本伝統工芸近畿展 入選、日本伝統工芸展 入選
- 平成29年: 日本伝統工芸展 入選
- 平成30年: 日本伝統工芸展 入選
- 令和4年: 日本伝統工芸展 入選
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【陶器をご購入の際のお願い】
作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。