青白磁銀彩茶碗 松川和弘
青白磁銀彩茶碗 松川和弘
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青白磁銀彩茶碗 松川和弘作(径:14.4cm 高さ:6.1cm)
――「水の碧に、銀の肌。ひと碗の中で“静けさ”が二層になる」
Ⅰ この茶碗が生む景色――澄む器と光る器の共存
本作は、青白磁の澄明な青と、銀彩の静かな輝きが、ひとつの器の上で明確に分かれ、しかし不思議なほど自然に溶け合っている茶碗です。
外観は端正な椀形で、口縁はわずかに開き、広がりすぎない緊張感を保っています。見込みが大きく、抹茶の面(つら)を美しく見せながら、深さは過度に沈まず、点てる所作が軽やかに収まる、扱いやすいプロポーションです。
そして何より特徴的なのが、上部の青白磁と、胴に巻かれた銀彩の帯。
青白磁は“水の色”として静けさを生み、銀彩は“光の肌”として気配を生む。つまりこの碗は、色ではなく空気の質を変える茶碗と言えます。
Ⅱ 青白磁の見込み――“白”ではなく澄む青が宿る
見込みは淡くやわらかな青。写真からも分かる通り、青白磁特有の「白に寄りながら、確かに青い」という絶妙な領域にあります。
光の下では清潔な白へ寄り、少し影が差すと、ほのかな青みが立ち上がる。抹茶を点てた時、この青は強く主張せず、むしろ抹茶の緑を濁らせずに引き上げる背景になります。
さらに、見込み中央にほのかに現れる円環状の景色(ろくろ目の気配のような静かな輪郭)が、無音の焦点として働きます。茶筅の動きがそこで収束し、泡が落ち着き、飲む人の視線も自然に中心へ導かれていく。
派手さではなく、心が整う方向へ視線を導く設計が、この青白磁の魅力です。
Ⅲ 銀彩の帯――“金属”ではなく微細な肌理(きめ)としての銀
胴に巻かれた銀彩は、鏡のように反射する銀ではなく、むしろ石肌や霜柱のような微細なテクスチャを帯びた銀です。アップの写真では、無数の細かな粒子が密に走り、均一でありながら単調ではない「ざらり」とした景色が見えます。
この質感は、触れた瞬間に手へ情報が返ってくる種類の銀彩で、視覚だけでなく触覚でも“落ち着き”を伝えるところが重要です。
銀彩は光の角度で表情が変わります。白く上がる瞬間もあれば、鉛色に沈む瞬間もある。つまり胴の帯は、固定された色面ではなく、環境光を受けて呼吸する光の膜です。
茶席の灯り、窓からの自然光、夜の照明――どの条件でも違う顔を見せ、その都度、碗が「今ここ」の空気へ馴染んでいきます。
Ⅳ 境界の美――青白磁と銀彩を分ける“線”の緊張感
青白磁の澄んだ面と、銀彩の肌理。その境界は明快でありながら硬すぎない。ここに松川和弘氏の造形感覚があります。
境界が曖昧だと器は散漫になり、境界が強すぎると器は硬直します。本作はその中間、つまり秩序を保ちつつ、余韻が残る境界を成立させています。
さらに、銀彩の下端には、釉の終わりがわずかに線となって見え、そこが“帯”としてのまとまりを生みます。
この「帯の構造」があることで、器の全体が締まり、見込みの青がより澄み、銀がより深く見える。対比が強くなるのではなく、むしろ互いが互いを静かに引き立て合います。
Ⅴ 高台の清潔さ――道具としての信頼感
裏面を見ると、高台は白く端正に整えられ、座りが安定しています。高台際の処理も穏やかで、触れた時に引っかかりが少なく、扱いやすい印象です。
茶碗は、鑑賞の器である以前に、所作の器です。取り上げる、回す、置く、拭う――その一連の動作で、違和感がないことが道具としての格になります。本作は、外観の美しさだけでなく、日々の使用に耐える静かな実用性がきちんと備わっています。
Ⅵ 点前での魅力――抹茶の緑が澄む茶碗
この茶碗は、抹茶の色を強く演出するタイプではありません。むしろ、抹茶の緑が自然に立ち上がるように、背景として働きます。
見込みの青白磁は抹茶の緑を濁らせず、銀彩の帯は外側に“気配の厚み”を加える。
つまり、飲み手は「抹茶の味」に集中しつつ、手の中では銀の肌理が静かに語り、目の前では青白磁が澄んだ余白を保つ。味覚・触覚・視覚が、過不足なく揃っていく茶碗です。
Ⅶ 結び――水の碧と銀の沈黙を、一碗に封じる
青白磁は、水のように澄み、銀彩は、光を含んで沈黙します。
松川和弘氏は、その二つをただ並べるのではなく、碗という日常の道具の上で、静けさの層として重ねておられます。
抹茶を点てると、見込みの青は呼吸のようにやわらかく広がり、胴の銀は気配の輪郭を深くする。
この茶碗は、華やかさで場を支配するのではなく、場を整え、人の心を整える方向へ働く器です。静謐という言葉が“形”になったような、凛とした一碗です。
略歴
1977 大阪府河内長野市生まれ
1998 奈良芸術短期大学陶芸コース卒業
2000 奈良芸術短期大学専攻科修了
2001 京都府立陶工高等技術専門校修了
近藤高弘氏に師事
2006 独立・河内長野市にて開窯
主な個展・展覧会
2007 京都府美術工芸新鋭選抜展(京都文化博物館)
二人展(松坂屋名古屋店美術画廊/名古屋)
個展(京都高島屋美術工芸サロン/京都)
2008 個展(カンパニュール/千葉)
個展(パラミタミュージアム小ギャラリー/三重)
2009 個展(ギャラリーエスパス/名古屋)
2010 個展(札幌三越美術ギャラリー/北海道)
個展(松坂屋名古屋店美術画廊/名古屋)
個展(アルパーク天満屋美術画廊/広島)
2011 個展(陶器ギャラリー風露/大阪)(’07)
2012 個展(ギャラリーおくむら/東京)(’07 ’09)
2013 個展(ラブリーホール開館20周年記念事業/大阪)
2014 個展(天満屋広島八丁堀店アートギャラリー/広島)(’11)
2016 個展(天満屋福山店アートギャラリー/広島)(’08 ’12)
三人展(博多阪急ミューズ/福岡)
2017 個展(ピナコテーカ/東京)(’14 ’15)
個展(天満屋岡山店美術ギャラリー/岡山)(’08)
個展(アトリエヒロ/大阪)
2018 個展(日本橋三越本店美術ギャラリー/東京)
個展(髙島屋大阪店ギャラリーNEXT/大阪)(’08 ’11 ’15)
2020 個展(花あさぎ/東京)
2021 個展(ギャラリーたちばな/奈良)(’15 ’17 ’19)
2022 二人展(花あさぎ/東京)
2023 二人展(アトリエヒロ/大阪)
2025 二人展(花あさぎ/東京)
個展(緑ヶ丘美術館/奈良)
受賞歴
第36回日本伝統工芸近畿展(大阪府教育委員会賞)
第55回日本伝統工芸展(日本工芸会総裁賞)
パブリックコレクション
緑ヶ丘美術館
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根据作品的不同,可能会因为裂纹等原因而有一些物质渗入茶碗,但我们请您理解,这是随着时间推移而产生的魅力的一部分。