天目釉酒盃 岡田優
天目釉酒盃 岡田優
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幅 : 9.2cm 高さ : 4.6cm
天目釉酒盃(てんもくゆう さかずき)
― 岡田優様 作 ―
作品概要
本作は、京都・宇治炭山で作陶を続ける岡田優様が手掛けた天目釉の酒盃です。やや外反した口縁と低く締まった高台がもたらす安定感、そして深い黒釉に浮かぶ微細な鉄結晶が、シンプルな器形に静かな緊張を与えています。
造形の特徴
口縁:ほんのりと赤味を帯びる口縁部は、わずかな返しを付けることで口当たりを優しくしつつ、視覚的には肩を落とした柔らかさを演出します。
胴部:胴はほぼ半球形を保ちながらも、ロクロ成形後に指先で軽く押し締め、土味を残した面の起伏を控えめに表出。これにより、黒釉の中にも陰影が生まれています。
高台:小ぶりで切れのある削り出し。酒を注いだ際の重心が低く保たれ、盃を持ち上げたときに手首への負担が少ない実用的設計です。
釉調と技法
天目釉:鉄分を多く含む長石釉を還元炎で焼成。窯内で酸化と還元が複雑に揺らぐことで、黒漆のような地に銀灰色の「油滴(ゆてき)」状結晶が細かく散り、夜空の微星を思わせる景趣を生んでいます。
焼成:岡田優様は還元を強めにかけた後、最後に短時間酸化炎を当てる独自の「揺らぎ焼成」を行い、マットと艶、両方の質感を一盃の中に同居させています。これは宋代・福建省建窯で誕生した古天目の質感研究から得た知見を踏まえた手法です。
歴史的背景
天目(てんもく)釉は、中国・建窯の黒釉碗を日本の禅僧が天目山から持ち帰ったことに由来すると伝えられ、鎌倉期以降わが国の茶の湯で珍重されました。黒釉の中に油滴や曜変といった結晶が現れる現象は偶然性が高く、古来「窯変(ようへん)の神秘」と称されます。現代作家がこの景色を安定して再現するには、原料の鉄分量、焼成温度曲線、冷却速度のすべてを細やかに管理する必要があります。
美的意図と精神性
本酒盃は、禅宗の無常観を映す黒釉の深みに、偶然に宿る油滴結晶を「一期一会」の象徴として閉じ込めています。静謐な鏡面に日本酒を注げば、液面が月光を湛えたように輝き、視覚と味覚を同時に高める設計です。
使い方と鑑賞ポイント
冷酒・常温酒向き:釉面がややザラつくため、冷たい酒の温度を保ちやすく、口当たりとの対比が楽しめます。
鑑賞時の光:白熱灯や燭台など、暖色系光源のもとで見ると銀灰の油滴が浮かび上がりやすく、昼夜で異なる景色を味わえます。
茶盌としても:内壁がやや立ち上がる形状は「天目姿」の典型で、抹茶や玉露にも適します。
本作は、岡田優様が長年追求してきた「制御された偶然」の結晶ともいうべき酒盃です。黒釉の奥に潜む宇宙を眺めつつ、盃を傾けるひとときが、日常を雅趣で包み込んでくれることでしょう。
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。