練込青瓷菓子器 諏訪蘇山
練込青瓷菓子器 諏訪蘇山
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幅 : 22.7cm 高さ : 4.5cm
天空の景色を器に封じる ―― 練込という詩的構成
本作「練込青瓷菓子器」は、白磁・青磁・藍磁・紅磁の四色の磁土を幾重にも重ね、ろくろの回転によって描かれる自然の摂理を、そのまま器に映し出すようにして成形された作品です。練込とは、複数の磁土を混ぜ合わせるのではなく、層状に積み重ねた土をろくろでひいて形成するという高度な技術であり、作為を排しつつも、制御された偶然性が織りなす文様が最大の魅力です。
特に本作では、円形の筒に成形した素地を切り開き、型打ちで皿に仕立てるという工程が取られており、抹茶碗に見られる「渦」の模様とは異なる、水平に流れる幻想的な縞模様が出現しています。その様はまるで、夕暮れの空を見上げたときに広がる雲の帯、あるいは星雲のたなびく宇宙の風景を彷彿とさせます。
色彩と構成――天体を模す磁土の交響曲
白磁の清澄、青磁の静寂、藍磁の深み、紅磁の柔光――この四色の磁土が重なり合うことで、単なる幾何学的文様ではなく、まるで自然界に存在する有機的なグラデーションが器面に浮かび上がります。特に、赤と青が交差する領域では、微妙な紫の表情が生まれ、練込技法ならではの「偶然の調和」が感じられます。
この自然な色の重なりは、光の当たり方によって変化し、朝の光の中では涼やかに、夕刻にはやや紅みを帯びるといった、青磁特有の光彩のゆらぎを内包しています。まさにこの器の上には、「時間」と「空間」が封じ込められているのです。
造形と使用――菓子器としての機能美
直径約23cmの本作は、菓子器として極めて優れたサイズ感を持ち、練切やきんとんなどの生菓子の色彩と引き立て合う絶妙な設計がなされています。
青磁釉の静かな佇まいが、菓子の華やかさを受け止め、茶席における「調和と対比」の美学を自然と演出します。特に、白と紅の練切をこの菓子器に盛ると、器の地の色と重なり合って、**「器の中に景色が生まれる」**かのような錯覚をもたらします。
縁はわずかに立ち上がりを持たせてあり、実用面でも菓子が滑り落ちにくく、手に持った際の安心感を与える設計となっています。釉薬のかかり具合は均一で、表面は滑らかで艶やか。盛り付けにも布巾や木杓子の引っ掛かりが少なく、扱いやすさの点でも優れています。
技法と精神性――練込青瓷の宇宙
練込技法は古くから存在するものの、磁器における多色練込は極めて高度な技術を要します。磁土それぞれの焼成収縮率や焼き上がりの色味の違いを完全に制御しなければ、器の中で歪みや亀裂が生じてしまうためです。
四代 諏訪蘇山様は、その練込磁器を現代青磁の領域にまで昇華させ、天体の動きや宇宙の生成のような時間軸を持った造形へと導いています。本作に見られる模様は、いわば**地球外の時間の流れを器に移植したような「詩的な科学」**の成果と言えるでしょう。
作家の系譜と美意識
諏訪蘇山家は、初代より青磁の復興と現代的再解釈を理念とし、三代、四代へとその技と哲学を継承してきました。特に四代 諏訪蘇山様は、母に十二代 中村宗哲様を持ち、茶の湯の美意識と工芸の精神を併せ持つ稀有な作家として知られています。
本作にも、その**「美は偶然を導く技術によって成り立つ」という思想**が貫かれており、ただの装飾ではなく、見る者・使う者の感性を呼び覚ます器として存在しています。
結語――空を食す、という豊かさ
「練込青瓷菓子器」は、ただの食器ではありません。それは、天空の景色を手のひらに乗せるという行為を可能にした、現代陶芸の詩的結晶です。
そこに盛られる和菓子は、花鳥風月の一瞬の美を象り、本作の器はその美をさらに天空へと昇華させます。まるで空をすくって口に運ぶかのような体験――それが、この菓子器の真の価値であると申せましょう。
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