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鉄釉窯変水指 岡田優

鉄釉窯変水指 岡田優

通常価格 ¥330,000
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幅 : 16.0cm  高さ : 17.4cm

鉄釉窯変水指(てつゆう ようへん みずさし) 岡田優様作
――「深黒の静寂に潜む翡翠の微光、竹節のリズムが茶席に響く」


Ⅰ 水指という“潤いの主役”

水指は、点前の途中で茶釜へ水を差し、茶碗や茶筅をゆすぐための水を蓄える―茶席の潤いと静けさを司る要の道具です。本作のように共蓋を備え、胴と蓋が同質の意匠で完結しているものは、道具組の核として季節を問わず活躍します。とりわけ黒一色の水指は、幽玄な景色をもつ釜や茶碗を引き立て、茶席全体に緊張と静謐をもたらします。


Ⅱ 鉄釉と窯変――黒の奥に宿る無限の色彩

2-1 鉄釉の魅力

鉄を多く含む釉薬は、高温焼成で深い黒を現しながらも、炎の揺らぎや還元の加減で緑や紫、褐色をわずかににじませます。岡田優様は還元の終盤に酸化気味の炎を一瞬交えることで、黒地の奥に翡翠(ひすい)の斑影を漂わせ、静かながらも表情豊かな肌合いへ導いています。

2-2 窯変がもたらす翳りと艶

胴の中央に走る水平の隆起は“竹節”を思わせ、そこに釉がわずかに溜まることで深紫の帯が現れました。灯りの下では黒に翳りが生まれ、淡い緑青がほのかに瞬き、夜竹林へ射し込む月光を思わせる幻想的な景色が姿を見せます。


Ⅲ 造形と意匠――竹節を写した端正なシルエット

本作の口造りは、縁をわずかに内側へ絞ることで共蓋を静かに安定させ、水面の波立ちを抑えています。そのため柄杓を差しやすく、釜へ水を注ぐ際に杓先が縁に触れても音が柔らかく響き、茶席の静寂を保つことができます。

胴中央には竹の節を思わせる隆起が巡り、胴を二段に分節して造形に心地よいリズムをもたらしています。この節帯は手掛かりとしても優れており、棚や炉縁から取り出す所作を安定させ、客前での動きに自信を添えてくれます。

裾はわずかに絞られており、見込みの水が落ち着くだけでなく、全体の重心を下方へ寄せることで安定感を高めています。置き場所を移す場面でも揺れが少なく、安心して席中の扱いを行える点が魅力です。

共蓋の摘みは小ぶりな盃状で指にやさしく掛かり、胴部の黒釉と呼応して一体感を生み出しています。蓋置を用いず畳へ伏せた場合でも景色が崩れず、格調ある佇まいを保つため、亭主の所作に品位を添える逸品となっております。


Ⅳ 歴史との響き合い――瀬戸黒・織部黒から現代へ

桃山時代、武家の豪放な美意識を代表する瀬戸黒・織部黒の茶碗は、黒釉により茶の緑を際立たせる最強の“引き立て役”として台頭しました。鉄釉窯変水指は、その黒釉の精神を水指に写し替えた存在であり、

黒の深みで茶席を引き締め、窯変の揺らぎで侘びの余情を生み、竹節の意匠で侘数寄の武家趣味と自然礼賛を同時に語ります。岡田優様は、炭山の竹林が朝霧に揺れる風景を心に映し、黒釉の奥に翡色を沈めることで“夜明け前の竹”を器上に呼び込んでいます。


Ⅴ 作家のメッセージ――風景を封じ込める

岡田優様は、清水五条坂の伝統技と宇治・炭山の自然が交差する場所で、「風景を器形に写し取る」作陶を続けておられます。本水指では、竹林の垂直リズムを縦鎬ではなく節帯で表現し、月明かりのかすかな翡色を還元の窯変で忍ばせ、静夜に耳を澄ますような黒釉の無音を追求しました。茶席に据えるだけで、竹の香と夜風の気配がほのかに立ち上り、客人の五感をそっと開きます。

深黒の静寂をたたえ、竹節のリズムが息づく鉄釉窯変水指。掌で撫でると細やかな凹凸が指先に心地よく、節の帯が確かな手掛かりを示します。茶の湯の「一期一会」に、夜竹林の幽玄と翡玉の微光を添え、静けさの中に豊かな物語を届けてくれることでしょう。

略歴  
京都、清水五条に生まれる  
京都府立陶工訓練校成形科、京都市立工業試験場研修生を経て  
走泥社同人河島浩三氏の下で三年間陶技全般を学ぶ  
1987年、宇治市炭山にて独立、築窯  
2018年より 日本伝統工芸近畿展、鑑査審査委員  
2022年 日本伝統工芸陶芸部会展、鑑査審査委員

〈主な入選〉  
日本伝統工芸展、日本陶芸展  
菊池ビエンナーレ、  
茶の湯の現代展  
長三賞陶芸展、陶美展、  
益子陶芸展、  
伊丹国際クラフト展  
萩大賞展、  
神戸ビエンナーレ  
現代陶芸コンペティション、等

〈主な受賞〉  
1998年、使ってみたい北の菓子器展(優秀賞)  
2002年、京焼、清水焼展(KBS京都放送賞)  
2003年、BONSAIの器展(奨励賞)  
2008年、日本伝統工芸近畿展(日経新聞社賞)  
2009年、おおたき北海ライブ陶器展(NHK放送賞)  
2010年、おおたき北海ライブ陶器展(北海道新聞社賞)  
2012年、京都美術工芸ビエンナーレ(大賞)  
2013年、日本伝統工芸陶芸部会展(日本工芸会賞)  
 神戸ビエンナーレ現代陶芸展(準大賞)  
2014年、光州ビエンナーレ招待出品  
2016年、大阪工芸展(美術工芸大賞)  
2019年、大阪工芸展(準大賞)  
2022年、有田国際陶磁展(大賞、文部科学大臣賞)、等

現在、公益社団法人日本工芸会正会員、陶芸美術協会会員
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    作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。

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