翠緑ぐい呑み 小川文齋
翠緑ぐい呑み 小川文齋
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幅 : 7.5cm×7.5cm 高さ : 5.0cm
野に息づく翠 ― 翠緑ぐい呑み 六代 小川文齋(興) 作
柔らかな光を纏いながら、土と釉が溶け合うように表情を変える一碗。六代 小川文齋(興)様の手によるこの「翠緑ぐい呑み」は、日々の暮らしの中にそっと差し込む“静けさ”を象徴する器です。全体を包む優しい翠の釉調は、深山に自生する苔むした岩肌や、朝露に濡れる草木のような、自然の穏やかさをそのまま映したかのような佇まいを見せています。
優しい翠、静かな情景
このぐい呑みに施された釉薬は、いわゆる派手な発色ではなく、むしろ沈着で穏やかな翠緑。近くで見つめれば、うっすらと黄味がかった地の色と、青緑の釉が層をなしており、釉薬の流れや溜まりが静かな濃淡を生み出しています。まるで山の小径を歩いていて、不意に目に留まった草の葉裏のような、控えめでありながら忘れがたい美しさです。
この翠は、小川文齋様が長年向き合ってきた“平和を象徴する色”であり、見る人の心を落ち着かせ、手に取る者の気配を静めるような、包容力を秘めています。
口縁の揺らぎと、手の記憶
本作は、形としては極めて素朴で、過剰な意匠は一切ありません。けれどもその素朴さの中にこそ、文齋様の高度な造形感覚が宿っています。口縁はわずかに揺らぎ、機械的な正円ではなく、人の手の痕跡が残る形に仕上げられています。それが使い手の唇に自然となじみ、酒を含む所作までも柔らかく導いてくれるのです。
器の内側は明るく白みがかっており、注いだ酒の色を柔らかく反射し、ぐい呑みとしての“使われる美”を的確に支えています。そこには「器は使われてこそ完成する」という、文齋様の哲学がそのまま形となって表れているようです。
掌の中の“風景”を味わう
手のひらに収めると、まるで自然の断片を掬い取ったかのような感覚を覚えます。指先には釉の艶やかな手触りと、素地の温もりが交互に伝わり、飲むという行為そのものが、ひとつの静かな“瞑想”のようなひとときに変わっていきます。
この器の表情は、光のあたり方や手に取る角度によって微細に変化し、それが飽きのこない魅力を生み出しています。単に美しいだけではなく、「見るたびに、何かに気づかせてくれる器」と言っても過言ではないでしょう。
緑の祈りを宿す器
小川文齋様が翠を追い求める理由は、その色がもつ穏やかさと、「争いを鎮める色」であるという信念にあります。赤や金に象徴される力や競争とは対極にあるこの翠は、人と人、自然と人をつなぎ、調和へと導く象徴として、文齋窯の中心に据えられてきました。
このぐい呑みは、そうした哲学が凝縮された作品でもあります。華美な主張や演出ではなく、あくまで「控えめにして、確かなる存在感」を体現すること。使い手の静けさと寄り添い、五感を研ぎ澄ませるための器として、これ以上ないかたちで完成されています。
日常にひとしずくの静寂を
この「翠緑ぐい呑み」は、まさに“日常の中の詩”です。使うたびに、ふと立ち止まりたくなる。飲むという何気ない所作のなかに、小さな発見と感動が生まれる。
掌にのせて酒を注げば、そこにはたしかに、小川文齋様が願う“和”の気配が漂っています。静かに語りかけてくるこの器とともに、日々の中にひとしずくの静寂と調和をお迎えください。
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