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22鴟尾香合 尾西楽斎

22鴟尾香合 尾西楽斎

通常価格 ¥44,000
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幅 : 5.5cm×2.8cm 高さ : 6.6cm

鴟尾香合(しび‐こうごう) 尾西楽斎様 作

――天平の檜皮屋根をそっと載せた掌中の楼閣――

1.作品概説

本作は、奈良・赤膚焼の八代 尾西楽斎様が制作された鴟尾形(しびがた)の香合です。鴟尾とは、寺院や宮殿の大棟(おおむね)両端に据えられる飾り瓦で、魚が跳ね上がるような形状によって火難を避ける瑞祥(ずいしょう)とされてきました。本作はその原形を高さ約五センチほどの愛らしい寸法に凝縮し、上下二分割の蓋物とすることで、香木や練香を納める機能性を備えています。

2.造形・意匠の特徴

視点 造形要素 鑑賞のポイント
側面 半弧状の背面と直立する棟木 屋根の稜線を思わせるアーチを強調し、鴟尾の反り返りを優美に表現しています。
頂部 切妻の端を示す段差 実物の須弥山(しゅみせん)思想を暗示し、天空へ伸びる祈りを象徴します。
裾部 珠文(しゅもん)を連ねた枠取り 桁行(けたゆき)の垂木をミニマルなドットで示し、全体を引き締めるアクセントに。

とりわけ目を引くのが、背面一帯に流れる窯変(ようへん)斑紫釉です。乳白の地釉に銅を主体とする発色剤を差し、還元炎の揺らぎで紫・青・緑の斑紋が生成されています。これは宋代鈞窯の「窯変天目(ヤオピェンティエンムー)」を想起させ、時間と温度の偶然が織りなす一期一会の肌合いを生み出しています。

3.技法と赤膚焼の今日的展開

:赤膚山周辺で採取する砂鉄を含む胎土を用い、素地に微細な鉄粉を残すことで暖かな白味を引き出しています。

成形:粘土板を曲げて型紙に当てる「打ち込み成形」を採用し、屋根瓦の硬質感を再現。接合部は桟瓦の継ぎ目を思わせる段差を残し、視覚的リズムを生みます。

釉掛け:下部には透明度の高い長石釉を施し、上部に銅紅釉を重ねがけ。さらに口縁へ刷毛で鉄釉を載せ、仄かな金属光沢を与えています。

焼成:1200℃以上で約14時間の還元焚き。銅紅釉が酸素を奪われて赤紫から青紫へと相転移し、細かな斑点(結晶)が浮かび上がっています。

4.鴟尾モチーフの歴史的・文化的背景

鴟尾は中国南北朝期に起源をもち、飛鳥時代に仏教とともに日本へ伝来しました。法隆寺金堂や東大寺大仏殿に見られるように、国家鎮護や火伏せの護符として重視され、のちに宮廷建築や社寺の意匠に広がります。茶の湯では桃山期より建築装飾を写した香合が好まれ、**千利休「三つ鱗鴟尾香合」**など名物が誕生しました。本作はこうした古作への敬意を現代赤膚焼の技法で再解釈し、奈良の建築美を机上に再現したものと言えます。

5.茶席での取り合わせ

季節・趣向 道具組の提案 香の種類 演出効果
孟春 初釜 軸「日々是好日」、花:白梅一枝、釜:尻張筒形 龍脳+白檀 新年の厄除けと浄化を象徴
仲秋 名残 軸「月下独酌」、花:女郎花・薄、棚上に鴟尾香合 伽羅の切片 堂塔伽藍の静寂を想起
歳暮 除夜 軸「鐘声慈雲」、添えに梵鐘香合と対で飾る 練香「千歳」 火伏と年越しの祈りを重ねる

6.尾西楽斎様の作陶理念

尾西楽斎様は「奈良の風土と祈りを器に宿す」ことを信条とし、鹿・梵鐘・鴟尾といった土地の象徴を茶陶へ昇華してこられました。作品ごとに異なる窯変を生み出すため、窯詰めは一点ずつ位置を変え、炎と対話する作業を徹底しておられるそうです。鴟尾香合は、その探求の到達点のひとつとして、建築遺構のスケール感と掌に収まる愛玩性を同居させた稀有な作例となっています。

7.まとめ

本作は、千三百年を超える奈良の寺院建築を象徴する鴟尾を、わずか数センチの香合として凝縮した逸品です。乳白釉の静けさに対して斑紫釉が揺らぎ、まるで早朝の伽藍に差す暁光のような色彩を湛えています。蓋を開けた瞬間に立ち上る香煙は、屋根上の鴟尾から天空へ昇る浄火を思わせ、茶室に古都の霊気を運んでくれることでしょう。尾西楽斎様ならではの造形美と窯変の妙味を、ぜひ掌の中でじっくりとご堪能くださいませ。

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