青瓷透三日月茶盌 諏訪蘇山
青瓷透三日月茶盌 諏訪蘇山
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幅 : 13.0cm 高さ : 7.0cm
本作「青瓷透三日月茶盌」は、四代 諏訪蘇山様が長年にわたり追究してきた青瓷技法と透かしの表現を融合させた、詩情豊かな逸品です。青磁の静謐な美の中に、ほのかに浮かび上がる三日月――その微光のような意匠は、まさに光と陰の協奏、器と自然の呼応の結晶と申せましょう。
三日月の透かし――器に宿る「見えざるものの美」
この茶盌最大の特色は、明るい光源にかざすことで内壁にそっと浮かび上がる「三日月」の意匠です。手に取って見るだけではその姿は見えず、光にかざしたその瞬間、茶碗の内面にわずかに透けるように、柔らかな三日月のフォルムが現れます。この表現は、磁胎の一部を極限まで薄く仕上げることで実現されており、厚釉でありながらも均質な焼成と高い精度の成形技術によってのみ可能となる高度な技巧です。
「青瓷に月を映す」という試みは、南宋・龍泉窯にも類例がない極めて独創的な意匠であり、単なる技巧の披露を超えて、静かに月を愛でるという東洋的な感性そのものを器に結晶させています。
青磁釉の深みと月の光
青磁釉は、初代 諏訪蘇山様が幾多の試行錯誤を経て完成させた独自の「蘇山青磁」を踏襲したもの。わずかに翡翠を思わせる青みがかった釉色は、還元焼成による微妙な鉄分の変化によって生まれ、光を透かすことで、より一層その奥行きが際立ちます。特に本作では、透けた月の周囲の釉がやや色溜まりを起こし、月光の周囲がぼんやりとにじむような効果を生んでおり、まるで雲間に浮かぶ実際の月を想起させます。
見る角度、光の強さ、時間帯によって現れ方が変化するという特性は、この作品が静的な工芸品ではなく、「一瞬の光との対話」によって完成する詩的な存在であることを示しています。
造形と掌中の調和
器の形状はやや開き気味の端反り型で、抹茶を点てる際に適した内径を持ちつつ、手に取った時の安定感と美しい佇まいを兼ね備えています。高台はやや低めに仕立てられており、重心が低く、掌に自然と収まるよう工夫されています。この造形の中に、あえて「隠された月」を置くことで、使い手に発見の喜びをもたらす、奥行きある設計思想がうかがえます。
月と茶道――風雅なる取り合わせ
茶道において「月」はしばしば詩的な意匠や掛物に登場する重要な象徴であり、特に三日月は再生、変化、希望といった意味を秘めた存在です。本作はその月を視覚的に表すのみならず、実際の使用中に現れるという演出によって、茶席という一時の空間に詩情と哲学をもたらします。
光の加減で浮かび上がる三日月を見せることで、一期一会の場に「見えざる美」を差し込む――それはまさに、茶道における「陰翳礼讃」の精神を体現した作品でありましょう。
結語――夜空を掌に宿す器
「青瓷透三日月茶盌」は、単なる美術工芸品ではなく、鑑賞者の感受性と光という自然現象とが交差することで完成する「詩の器」です。日常の中でふと手に取り、明るい方へかざすと現れる三日月。その一瞬の対話は、私たちに「美とは何か」「見えるものとは何か」を静かに問いかけます。
諏訪蘇山様の手によって創造されたこの茶盌は、まさしく月光を閉じ込めた青磁の小宇宙。掌の中に夜空を宿す――そのような詩的な瞬間を提供してくれる、まことに気品と余韻に満ちた逸品でございます。
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