青瓷蓮弁茶盌 諏訪蘇山
青瓷蓮弁茶盌 諏訪蘇山
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幅 : 15.5cm 高さ : 7.0cm
Ⅰ.作品概要
本作「青瓷蓮弁茶盌」は、南宋時代・龍泉窯で焼かれた砧青磁茶盌を範とし、初代 諏訪蘇山様 が二十五年にわたり探究した“蘇山青磁”の翡翠色を、四代 諏訪蘇山様 が現代に継承して制作した一碗です。外面に巡る蓮弁文は、蓮華の清浄性と再生を象徴し、茶席に「和敬清寂」の精神を静かに呼び込みます。
Ⅱ.造形とフォルム
口縁と見込み
口縁はわずかに外反し、茶筅捌きや口当たりを妨げない繊細な厚みです。見込みはすり鉢状に穏やかに広がり、抹茶が注がれた際に緑の液面が鏡のように静かに張ります。
蓮弁文の彫刻
胴外面には蓮弁が陽刻で連なります。彫線は深過ぎず浅過ぎず、青磁釉が溜まって淡い翳りを宿すことで、蓮弁の肉厚と重なりが柔らかに浮かび上がります。彫り始めと終わりを重ねない「隠し継ぎ」の技法により、円環の継ぎ目が視覚的に途切れない点も見どころです。
高台と重心設計
高台はやや低めに切り、高台内を鋭く削って軽量化。水を張った際の重心が低く抑えられ、点前中の安定感が高まります。高台脇にうっすらと見える胎土の鉄斑が、初代以来の作風を示す小さな証しです。
Ⅲ.釉調――「蘇山青磁」の澄み
翡翠色の深み
胎土と釉薬に含まれる微量鉄分(約1%)が還元焼成で転化し、透明感の高い青緑を呈しています。蓮弁の稜線では釉厚が光の加減で淡い影が現れて立体感を強調します。
内外の色差
内面は釉厚が均一なため明るい水色、外面は彫刻による厚薄差で翡翠の濃淡が現れ、二層の青が静かに呼応します。
釉肌の触感
釉面はガラス質が均一に溶け、指先に吸い付くような滑らかさです。掌で包むとほんのりと温度が伝わり、器と一体になる感覚が得られます。
Ⅳ.歴史的背景と意匠の意義
蓮弁文の源流
龍泉窯では南宋期に仏教的象徴である蓮華を青磁器に多用し、宮廷や禅林で珍重されました。本作はその精神性を汲み取り、蓮弁の数とリズムを日本の茶席寸法に合わせて再構成しています。
砧青磁復元の系譜
初代 諏訪蘇山様 は1907年に蘇山青磁を完成させ、大正六年に帝室技芸員に認定されました。四代 諏訪蘇山様 はその調合を守りつつ、澄みわたる翡翠色を安定させています。
現代茶席への適応
扱いやすい寸法で、薄茶・濃茶いずれにも対応。棚飾りや運び点前にも取り合わせやすい軽快さを備えています。
Ⅴ.茶席での取り合わせと機能美
季節 | 推奨主菓子 | 器との相乗効果 |
---|---|---|
春 | 桜薯蕷・花見団子 | 蓮弁の清浄が花の瑞々しさを引き立てます |
夏 | 葛饅頭・若鮎 | 青磁の涼感が盛夏の熱気を和らげます |
秋 | 栗羊羹・月見団子 | 翡翠色が月光を映し、秋夜の静寂を深めます |
冬 | 雪平・椿餅 | 釉の澄みが雪景色を思わせ、抹茶の緑が生命を際立てます |
抹茶との調和
抹茶の鮮やかな緑が内面の淡い水色に映え、蓮池に浮かぶ新芽を思わせる景色が生まれます。
灯りとの対話
行灯や蝋燭の暖色光を当てると、蓮弁の稜線に沿って淡い陰影が揺らぎ、器全体が水面のように静かに呼吸します。
Ⅵ.作家略歴と制作姿勢
四代 諏訪蘇山様(1970年京都市生まれ)は、三代 諏訪蘇山様 と塗師・十二代 中村宗哲様 の薫陶を受け、2002年に四代を襲名。青磁研究を基盤に、蛍手・飛青瓷・練込青磁など多彩な技法を探究しつつ、「作品には物語を宿し、使い手の心と重なって完成する」という理念を掲げておられます。本茶盌では「蓮華が夜明けの水面に開く清浄の瞬間」を蓮弁文に託し、点前のひとときに静かな浄化の気配を届けたいとの思いが込められています。
Ⅶ.結語
「青瓷蓮弁茶盌」は、翡翠色の静謐と蓮弁の清浄が融け合い、南宋砧青磁の雅趣を現代茶席へと蘇らせた逸品です。抹茶を注げば緑の光が蓮池を映し、茶席に穏やかな浄土の情景を呼び込みます。四代 諏訪蘇山様 の研ぎ澄まされた造形感覚と釉調制御が結実した本作は、豪華さではなく品位と静けさで場を包み込み、見る者の心に清らかな安寧と再生の息吹をもたらしてくれることでしょう。
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