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白不二山ぐい吞み 柳下季器

白不二山ぐい吞み 柳下季器

通常価格 ¥22,000
通常価格 セール価格 ¥22,000
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幅7.4cm×7.2cm   高さ5.9cm

柳下季器(やなした ひでき)様による《白不二山ぐい呑》は、江戸初期の巨人・本阿弥光悦が遺した国宝「不二山」への深い敬意と、現代という時代における再解釈から生まれた作品です。光悦の「不二山」は、その造形と景色において唯一無二の存在であり、日本陶芸史において特異な位置を占めています。柳下様はその精神性を汲みつつ、茶碗という形式を超えて、「ぐい呑」というより小さな器の中に、確かな哲学と造形美を凝縮させました。


茶碗のミニチュアではない、自立した造形美

この《白不二山ぐい呑》は、単に「不二山茶碗の縮小版」ではありません。
ぐい呑という器種に求められる造形性や機能性を追求しつつ、白の景色が内包する精神性を見事に体現しており、作品としての独立性と完成度の高さは、むしろ原作の「不二山」から派生した、ひとつの“圧倒的な傑作”として感じられるほどの気迫を湛えています。掌におさまるほどの小さな器でありながら、そこに込められた造形的緊張、色彩の静寂、そして気配のような存在感は、空間に置いた瞬間に周囲を変容させる力を持っています。器が「物」を超えて、「場」や「時」を動かすという感覚——そのような力が、このぐい呑には宿っているのです。


唯一無二の「白」に宿る静けさと奥行き

釉薬に用いられた白は、単なる色彩の一種としての白ではありません。むしろ“静けさの色”と呼ぶべき深みをたたえています。和紙のように柔らかく、光をやさしく受け止めるその白は、何層にも重なりながら透け、見るたびに奥行きのある風景を生み出します。器の腰から口縁にかけては、乳白色の釉薬がふんわりと立ち昇るように広がり、まるで雪に包まれた富士の稜線のような静謐な景色を形づくっています。それは目に見える“景”であると同時に、心に差し込む“感覚”でもあり、器の外面でありながら、内面的な空間に響くような白の力を感じさせてくれます。


封じ込められた焼成の記憶と「物語性」

器の下部には、焼成の過程で生まれた炭化を思わせる黒や灰のような濃淡が、控えめながら確かに現れています。これは単なる色の対比ではなく、器が窯の中で過ごした時間——炎と土との対話、偶然と必然が重なった一瞬一瞬の記憶——を、表面に封じ込めたような質感です。柳下様が長年培ってきた焼締や登窯・穴窯での経験が、こうした表情として静かに浮かび上がっており、それが器に深い物語性と精神的な奥行きを与えています。


白という余白——沈黙が語るもの

この器における「白」は、単なる視覚的な美しさにとどまらず、「語らぬこと」によって「語る」という、東洋美術における根本的な思想を体現しています。
俵屋宗達の金地に舞う風、光琳の銀泥に潜む静寂、水墨画の「描かれざる余白」、そして書における“墨”と“余白”の関係——《白不二山ぐい呑》の白もまた、それらと同じ美の系譜にあります。何かを明示的に描くのではなく、空白があるからこそ想像が生まれ、沈黙があるからこそ余情が響く。白は、無音でありながら、最も多くのことを語る色なのです。


季節と自然の移ろいを映す小さな山

この白には、季節の記憶も封じ込められています。冬の雪、春の梅花、夏の朝露、秋の霧。湯気がふわりと立ちのぼるとき、器の釉薬に浮かび上がる貫入が、まるで山肌に刻まれた風の痕跡のように表情を変え、そこに流れる時間と自然の命を感じさせます。器がまるで呼吸しているような、生きた静寂がそこにあります。


圧倒的な存在感と詩的な沈黙

《白不二山ぐい呑》は、実用と芸術、日常と非日常、形と空間、静けさと気迫といった、いくつもの相反する要素のはざまに立つ器です。ぐい呑という日常の器でありながら、そこには極めて詩的な緊張感と圧倒的な美があり、ただ使うだけでなく、眺め、感じ、心を澄ませる時間が自然と立ち上がります。柳下季器様の探求する「静けさのなかにある強さ」「不在が語る存在」が、これほどまでに凝縮された器は他にありません。この作品は、ぐい呑というカテゴリーを超えた、小さくも偉大な、まさに“白の傑作”と呼ぶにふさわしい存在です。

柳下 季器(Hideki Yanashita) プロフィール
陶芸家 1967 –
東京都生まれ。現在は三重県伊賀市を拠点に活動。桃山時代のやきものに魅了され、陶芸の道へ進む。信楽での修行を経て三重県・伊賀に自ら穴窯を築窯し、「神田窯」を開窯。杉本貞光氏に薫陶を受け、侘び寂びの世界を独自の視点で深く探求しつつ、楽焼や焼締、井戸、織部など多彩な作品を制作しています。柳下氏の創作において重要なテーマとなるのは、先人の技法や精神を深く学びつつも、現代の素材や独自のアプローチを取り入れることで生まれる新たな極みへの探究です。その作品は時代に左右されない本質的な美を問いかけ、観る者をより深い芸術の世界へと誘います。

活動拠点
三重県・伊賀

略歴
1967年 東京都生まれ
1989年 専門学校桑沢デザイン研究所卒業
2002年 三重県伊賀市に穴窯を自身で築窯(神田窯)
2002年 高島屋横浜店にて二人展
2004年 高島屋横浜店にて個展(以降開催)
2007年 高島屋京都店にて個展(以降開催)
2007年 杉本貞光先生に薫陶を受ける(以降現在まで)
2008年 高島屋大阪店にて個展(以降開催)
2013年 JR名古屋タカシマヤにて個展(以降開催)
2023年 日本橋三越本店にて個展(以降開催)
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