龍頭香爐 小川文齋
龍頭香爐 小川文齋
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幅 : 12.0cm×7.0cm 高さ : 8.0cm
龍の息吹を宿す ― 龍頭香爐 六代 小川文齋 様 作
ひとたび目にすれば忘れがたい存在感を放つ本作「龍頭香爐(りゅうとうこうろ)」は、六代 小川文齋(興)様が手がけた、躍動と精神性を内に宿す一品です。造形の主題は龍。古来より瑞獣として尊ばれ、神仏の世界においては天と地をつなぐ霊的な存在とされてきた龍を、香爐という静謐な器に落とし込むという試みに、文齋様の確かな造形力と深い精神性が感じられます。
本作における龍の表現は、単なる写実を超えて、作者の内奥から湧き上がる“祈り”や“願い”を宿しています。鋭くも温かみをもつ眼差し、開かれた口元、堂々と伸びる角や髭の動きは、まるでいまにも空を駆けるかのような勢いを内包しつつも、香爐という用途のなかでどこか静けさと荘厳さを帯びております。緑釉によって全体が包まれたこの龍の姿は、まさに小川文齋様が長年探究してきた「翠」の象徴であり、平和と自然の調和への希求そのものです。
この「龍頭香爐」を目の前にすれば、誰もが一瞬、時の流れを忘れるでしょう。釉調の深みは、見る角度によって異なる表情を見せ、やがて香が焚かれることで煙が立ち上れば、龍の息吹のように空間へと浸透し、観る者の心に静かに沁み入ります。
緑に託された祈り ― 六代 小川文齋 様の世界
本作を手がけた六代 小川文齋(興)様は、1974年、京都五条坂の陶芸家・五代文齋様の長男としてお生まれになりました。大学では彫刻を、その後は京都府陶工高等技術専門校や市工業試験場にて成形や釉薬について研鑽を積み、2014年に六代文齋を襲名されました。代を継いだ後も「文齋」の名に安住することなく、京焼の伝統と向き合い、現代にふさわしい“美”の形を模索し続けておられます。
なかでも文齋様がとりわけこだわりを持って取り組まれてきたのが「緑釉」の研究です。父・五代文齋様が赤を用いた情熱的な作品を多く手がけていたのに対し、六代様は山の木々や大地の包容力に魅せられ、自らの作品に緑を宿してきました。緑は、文齋様にとって単なる色彩ではなく、「平和」や「安らぎ」、そして「人と自然との共生」を象徴する思想のかたちなのです。
その緑が、龍の姿に染み込んだ本作では、“怒り”や“猛々しさ”といった一般的な龍のイメージを超え、静かでありながらも力強い守護の精神が宿っております。
窯の系譜に刻まれた歴史と技
この香爐の奥底には、小川家が174年にわたり育んできた窯の歴史が静かに息づいています。初代 小川文齋(文助)様は1809年、加賀国に生まれ、全国の陶業地を修業してまわった後、1834年に肥前有田にて丸窯式の築窯法を学ばれました。1847年には、京都府木津川市の鹿背山にて一条家の庇護を受けて窯を開き、「齋」の字と家紋を頂戴し、文齋窯を創業されました。
明治維新の混乱を経て、1873年に京都五条坂へ移り、以来六代にわたってこの地で陶を焼き続けています。戦火により後継者を失うなどの困難もありながら、五代 欣二様が文齋を襲名し再び家業を支え、現・六代 興様によってさらに現代的な美意識が加えられています。
国の登録有形文化財にも指定されている登り窯は、そうした幾多の時代を生き抜いた証でもあり、この香爐もまた、その火の記憶を受け継ぐ一品であると言えるでしょう。
祈りのかたちとしての香爐
「龍頭香爐」は、ただの焼き物ではありません。それは、文齋窯の歴史、作家の想い、時代の風景、そして祈りの心を宿した“かたち”です。香爐とは、本来、清らかな空間を作るための道具であり、神仏に捧げる香の煙を運ぶ舟のような存在でもあります。その舟の舳先に、龍という守り神が立ち現れる。この象徴性の豊かさは、六代 小川文齋様の審美眼と精神性があってこそ生まれ得た造形美です。
現代という不安定な時代において、龍はただの伝説上の生物ではなく、「超えていく力」や「調和への意思」の象徴として、あらためて人々の心に訴えかける存在であるはずです。
この「龍頭香爐」があなたの空間に置かれるとき、それは単なる装飾を超えた精神的な結界となり、静かな守護と豊かな物語を纏った“時のかたち”として息づきはじめます。150年の火と土の継承が生んだこの一器を、どうぞご覧ください。
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