白丹波茶盌 市野年成
白丹波茶盌 市野年成
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高さ : 13.8cm 幅 : 7.4cm
素朴なる白の余韻 ― 白丹波茶盌
市野年成様 作
この「白丹波茶盌」は、丹波立杭焼を代表する現代の陶芸家、市野年成様による、静謐と風格を湛えた逸品です。一見すると控えめな印象を与える白釉の景色。しかしその奥に広がる世界は、800年余にわたる丹波焼の歴史と、自然と共生する日本人の美意識が静かに宿っています。
盌全体に施された白釉は、やわらかな乳白色の中にほんのりと赤みや灰色のニュアンスを内包し、陶肌の凹凸や色むらが、まるで雲間に差し込む光のように変化します。これは釉の流れや土の成分、さらには薪窯焼成の火の当たり方など、自然の偶然と作家の意図が交錯した“窯変の詩”とでも言うべき表情です。
胴部から高台にかけての引き締まったフォルムは、実用性を尊ぶ丹波焼の真髄を感じさせつつも、どこか現代的な洗練が漂います。市野様の手がける白丹波は、伝統に根ざしながらも、日常に調和する静かな美を追求した作品として、多くの茶人・愛陶家から高く評価されております。
白丹波とは ― 素朴と洗練のあいだに
「白丹波」は、立杭において江戸時代以降、黒丹波や赤丹波と並んで発展してきた釉調のひとつです。薪窯によって灰が自然にかかり、釉の景色に偶然性がもたらされるこの焼成法は、「灰被り」の妙として丹波焼最大の魅力のひとつとされています。
この茶盌でも、やや厚めに掛けられた白釉が重力に従い自然に溜まり、部分的に淡い乳濁や縮れを見せながら、柔らかな陰影を生み出しています。そこにわずかに表れる素地の赤土の色合いは、丹波焼特有の土味の力強さを静かに物語ります。
市野年成様と丹波の精神
市野年成様は、丹波立杭焼の中心地・今田町に工房を構え、薪窯による伝統的な焼成法を大切にしながらも、現代の感性に響く造形と釉調の探究を続けておられます。素材と対話し、炎に身を委ねるその作陶姿勢は、「自然との共生」を大切にしてきた日本の陶芸の精神そのものです。
この白丹波茶盌もまた、過剰な装飾に頼ることなく、日々の喫茶の中に静けさと潤いをもたらす器として、その精神を体現しています。用の美、という言葉にふさわしい、飽きのこない、しかし深く心に残る造形。抹茶を点てたときに映える緑との対比もまた、この茶盌の魅力を一層引き立ててくれることでしょう。
丹波焼の歴史と未来
丹波焼は、六古窯のひとつとして、平安末期より800年以上の歴史をもち、日本の民陶文化を支えてきました。とくに丹波立杭焼は、素朴で実用性に富んだ日常の器に美を見出す思想を今に伝える重要な存在であり、昭和53年には国の伝統的工芸品にも指定されています。
このような重厚な伝統を背負いながらも、市野年成様の白丹波は、その“今”を切り拓く新しい可能性を秘めています。静かなる白のなかに、力強い土の記憶と、未来を見つめる眼差しがそっと込められているのです。
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。