竹村繁男様・陽太郎様との対談
今回は、京都・山科の大日窯(だいにちがま)にて、お父上の竹村繁男様、ご子息の竹村陽太郎様とお話をさせていただきました。
【竹村繁男】→ 竹村繁男(たけむら しげお)様
【竹村陽太郎】→ 竹村陽太郎(たけむら ようたろう)様
【西村】→ 西村一昧(にしむら いちまい)甘木道 店主
【西村】作品を拝見してみますと色鮮やかで、他に似ている作家を見たことがありません。竹村様はどのように修行されてきたのですか?
【竹村繫男】最近は少なくなりましたが弟子入りです。
【西村】それは、住み込みですか
【竹村繫男】いえ、通いです。18歳から8年間通いました。8年間でいろいろな方法を学びました。われわれの時代は先生の仕事を横で見ながら手伝うので、教えてもらうことはほとんどありません。
【西村】それは横で見て、技を盗むということでしょうか?
【竹村繫男】40年前の話ですから。当時は教えてもらうということはなかったのです。
【西村】8年間修行されていて、普段使いの皿など作陶されたと思いますが、公募展にも出しましたか?
【竹村繫男】はい。公募展にも出していきました。
【西村】今、作られている葡萄や枇杷などの自然釉はいつぐらいから作られましたか?
【竹村繫男】私の先生は、灰釉の仕事をしていたので、先生と同様にするようになりました。やってみてわかったのですが、灰を作って釉薬にされている人はほとんどいらっしゃらないのです。市販のものを買っている方が大半です。私はお手伝いをしていたわけですが、独立してみてはじめて驚きました。当時は茄子の灰など、いろいろと先生が作っていたので、私も同じようにしました。灰というのは、木によって全部色が違うので、自分独自の釉薬を作りたいと思うようになりました。
【西村】向日葵は淡く綺麗な黄色が出ているで、面白いと思います。枇杷は青くなったり、また葡萄は梅花皮が出たり、お茶の葉っぱも面白いと思います。
【竹村繫男】ただ、ご存知のようにトラック一杯の木を焼いて灰にしてもわずかしかとれません。我々が仕事のために10kgや20kgの灰を作るのは、大変なことなのです。いろいろな出会いがあって、灰が均一な状態で手に入るようにしなければ釉薬には使えません。このあたりは葡萄の産地ですから安定してとれます。
【西村】杉は釉薬にすると薄い水色になるんでしたっけ?
【竹村繫男】はい、そうです。薄い緑色です。向日葵をはじめてみたのはすぐに成長するのが良いと思ったのですが、3・4か月で大きくなる向日葵は燃やしてみると灰はあまりとれません。お茶の灰については、大手はお茶の会社が製品にならない選別した葉っぱを送ってもらって、それを灰にして釉薬にしています。
【西村】まるでサーキャラーエコノミーのようですね。新聞で読んだことがあります。リサイクルではなく、アップサイクルですね。
【竹村繫男】昔は灰屋という仕事がありました。町の中で釜土があって、燃料にした灰をお金を払って集められます。染物の場合は灰のアクを使います。それを染屋さんに持って行って売ります。灰の灰汁の水ができて、染物の色止めをされます。灰の灰汁が抜けてしまうと、今度は焼き物屋に持っていきます。灰汁の抜けた灰を使うのです。こうやって循環しています。
【西村】灰が2回使えるのは良いですね。
【竹村繫男】お茶の葉っぱは100kgを焼いたら4kgしか取れません。1t送ってもらっても10kgにしかなりません。ですので、条件がそろわないと灰薬はできません。
【西村】薄くて綺麗な色はとても作るのが難しいのですね。
【竹村繫男】灰のおかげで、いろんな表情の釉薬ができるようになりました。
【西村】親子で作風は似ているところもあると感じるのですが、実際作っておられていかがでしょうか?
【竹村陽太郎】もともとは、父と似たような仕事をしていましたが、個人作家としてやっていくのであれば、父は初代でやってきましたので、父と同じことをすると真似になってしまいます。そこで父とは違う作風で作品を作るようになりました。
【西村】今の仕事とはどのようなお仕事でしょうか。
【竹村陽太郎】今は化学的に作られた顔料を使い鮮やかな色味で独自の技法の仕事をしています。
【西村】それは、電気窯を使うのでしょうか。
【竹村陽太郎】そうです。薪窯でやってみたこともありますが、思ったような焼き上がりにはならなかったです。
【西村】今後の方向性はどうしていきたいとかありますか?
【竹村陽太郎】現在は、基本的には化学的な顔料を使って色を出しています。ただこれは思ったような色に焼くことが可能でした。これからは、窯で焼くことで変化する、窯から出してみないとわからないような要素を入れて作ってみたいと思います。
【西村】父から教えてもらったりしますか?
【竹村陽太郎】何かを教えてもらったりという特別なことは今はないです。
【西村】なるほど
【竹村繫男】どっちが良いか? など聞かれたら答えることはあります。
【西村】喧嘩になることがなくて良いですね。日本伝統工芸展で作品を見て親子であることに気付く人はいないと思います。
【竹村繫男】違う仕事をしているから良いことがあります。公募展に出すことのメリットは、審査委員の方が客観的に判断してもらえることがあります。
【西村】公募展に出すと先輩の作家さんからアドバイスをもらえるのでしょうか?
【竹村繫男】応募者対象の研究会もありますし、会員さんに聞けば教えてもらえると思います。応募することで他の作品と自作を比べることもできます。
【竹村陽太郎】何かを教えてくれるというより、聞きたいことを聞いて、それを自分のなかで消化していくような感じです。
【西村】正しい道に進んでいけそうですね。
【竹村陽太郎】聞き方が大事かと思っています。
【西村】スケジュールをいろいろ組まれていると思うのですが、公募展の入選はモチベーションになりますか?
【竹村陽太郎】良いものができたときモチベーションがあがります。また、自分が気に入ったものができたときもです。そして何よりもそれが誰かの元に届いたときです。
【西村】確かに誰かの手元に届くまでが作陶ですね。本日はありがとうございました。親子で作陶に取り組まれ、独自の世界を作り上げているので、今後も活躍が楽しみです。ありがとうございました。
対談中は、大日窯の愛犬がずっと眺めていましたよ。