梅華皮花器　竹村繁男

幅 : 13.5cm     高さ :19.0cm

雪景色のような釉薬の美しさ

竹村繁男様の「梅華皮花器」は、厚く塗られた白色の釉薬がまるで冬の雪景色を思わせる独特の美しさを持っています。この釉薬の白は単なる白ではなく、土の表面に凹凸を生み出し、まるで薄雪が積もったかのような表情が現れています。さらに、土の表面が部分的に透けて見えることで、豊かな色味と温かみが感じられ、作品が力強い土の上に成り立っていることが実感できます。

「かいらぎ」の歴史 － 梅花皮の語源と伝統

「梅花皮（かいらぎ）」という釉薬の名は、戦国時代にまで遡る独自の由来を持っています。当時、刀や剣の柄の装飾に「鰄（かいらぎ）」と呼ばれるエイやサメの皮が使用されており、それが磨かれることで梅の花のような模様が浮き出ました。この美しさにちなみ、釉薬の表面に梅の花のような模様が浮かぶ様子を表すために「梅花皮」という文字が使われるようにりました。

土の力強さと釉薬の繊細さ

梅華皮花器は、単に花を飾るための器としてだけではなく、そのままでも鑑賞できる美しい造形としての存在感を放っています。得意とする自然灰釉の美しさを最大限に引き出し、土の力強さと釉薬の繊細さを組み合わせることで、見る者を惹きつける圧倒的な存在感を実現しています。釉薬の厚みと質感が土の力強さを引き立て、安定感と同時に繊細な表情をもたらしています。

存在感と細部の魅力を兼ね備えた現代の名品

梅華皮花器は、作品の中でも特に存在感があり、圧倒的な美しさを備えています。そのフォルムは安定していながらも形状に動きを感じさせ、陶器としての魅力を存分に引き出しています。また、釉薬の表面に表れる白い梅花皮模様が、自然の持つ美しさと陶器としての力強さを同時に表現しています。まさに現代における名作といえるでしょう。

竹村繁男様と自然灰釉への情熱

竹村繁男様は、自然灰釉の第一人者として知られ、自然素材の灰から作り出した独自の釉薬を用いた作品作りに30年以上にわたり取り組んできました。竹村様が自然の灰から生み出す釉薬は、植物や木の枝を焼き、得られた灰を水で洗い不純物を取り除くという時間と労力を要する工程から生まれます。作品には、この自然素材への深い理解と情熱が表れており、作品ごとに異なる表情が楽しめるのも灰釉の魅力です。

竹村繁男様の略歴と独自の技法

竹村繁男様は昭和28年、京都府山科に生まれ、京都府指定無形文化財保持者である木村盛伸氏に師事しました。京都市立日吉丘高校陶芸科を卒業後、修行を積み、昭和55年に独立して「大日窯」を開きました。それ以来、自然灰釉を用いた作品作りを続け、独自の釉薬と技術で多くの名作を生み出しています。

自然の美と現代の感性が融合した梅華皮花器

梅華皮花器は、竹村繁男様が長年培ってきた技術と自然への畏敬の念が融合し、自然の灰釉が持つ奥深い魅力が見事に表現された作品です。白い釉薬がまるで雪景色を思わせるこの作品は、ただの器に留まらず、自然と共鳴する芸術品として多くの人々に愛されています。

竹村繁男 略歴

昭和二十八年 : 京都府山科生まれ
昭和四十七年 : 京都市立日吉丘高校陶芸科卒業-木村盛伸先生に師事
昭和五十年 : 第四回日本工芸会近畿支部展 初入選
昭和五十三年 : 京都府工芸美術展 入選
昭和五十五年 : 独立し山科に大日窯を開窯
昭和六十三年 : 第三十五回日本伝統工芸展 入選
平成元年 : 「土の子会」結成
平成二年 : 第三十七回日本伝統工芸展 入選
平成八年 : 第二十五回日本伝統工芸近畿展 奨励賞
平成十年 : 第五十三回新匠工芸会展 入選
平成十三年 : 京都工芸美術作家協会展,京都「高島屋」にて個展
平成十四年 : 第四十九回日本伝統工芸展 入選
平成十五年 : 岡山高島屋画廊にて個展
平成十七年 : 横浜高島屋美術画廊にて個展
平成十八年 : 京都高島屋美術画廊にて個展
平成十九年 : 第三十六回日本伝統工芸近畿展 京都府教育委員会教育長賞
    日本工芸会正会員認定
    岡山高島屋画廊にて個展
平成二十年 : 日本工芸会陶芸部会正会員による第三十六回新作陶芸展 日本工芸会賞
平成二十一年 : 第五十六回日本伝統工芸展 入選
平成二十二年 : 第三十九回日本伝統工芸近畿展にて鑑査委員に就任
平成二十六～三十年年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和元年～六年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和五年 : 日本伝統工芸展 入選
令和六年 : 日本伝統工芸展 入選