承天閣美術館の魅力

京都観光といえば金閣寺や清水寺などが有名ですが、これら名刹と深い関わりを持ち、歴史的にも貴重な美術品を数多く所蔵している「承天閣美術館」はご存知でしょうか。今回は、臨済宗相国寺派の大本山・相国寺(正式名称:萬年山相國承天禅寺)の境内にある「承天閣美術館」の魅力をできるだけ詳しくご紹介します。国宝5点、重要文化財145点をはじめ、伊藤若冲や円山応挙、長谷川等伯などの巨匠たちの作品が所蔵されているこの美術館は、京都を訪れる際には外せないスポットの一つです。


1. 承天閣美術館とは?

相国寺創建600年記念事業の一環として開館

承天閣美術館は、1984年(昭和59年)4月、臨済宗相国寺派の大本山である相国寺が創建600年を迎えた記念事業の一環として開設されました。相国寺や鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)、そしてその他の塔頭寺院に伝わる貴重な美術品を一堂に集め、保存および展示公開、修復、研究調査、さらには禅文化の普及を目的として設立されました。中近世の墨蹟・絵画・茶道具を中心としたコレクションの質・量ともに圧巻で、京都の歴史と文化を深く味わうことができる美術館です。


2. 相国寺の歴史と背景

京都五山第二位に列せられる名刹

承天閣美術館がある相国寺(正式名称:萬年山相國承天禅寺)は、室町幕府第三代将軍・足利義満によって、1392年(明徳3年)に創建されました。開山は夢窓疎石という高名な禅僧で、京都五山の第二位に列せられるほど格式の高い寺院です。

相国寺は創建以来600年以上の歴史を持ち、度重なる火災や戦乱によって何度も焼失と再建を繰り返してきました。その間に数多くの禅僧や画僧を輩出しており、五山文学や日本水墨画の世界を牽引してきた存在としても知られています。絶海中津、横川景三、そして絵画の世界では如拙・周文・雪舟が相国寺に深く関わりを持ち、日本美術史に大きな影響を与えました。


3. 承天閣美術館の見どころ

 第一展示室:金森宗和造と伝わる茶室「夕佳亭(せっかてい)」復元

第一展示室の最大の特徴は、鹿苑寺(金閣寺)の境内に建つ茶室「夕佳亭」を復元・展示していることです。夕佳亭は、江戸初期の茶人である金森宗和が手掛けたと伝わる名茶室で、その意匠や建築手法から当時の茶の湯文化を体感できます。茶室という限られた空間の中に隠された美意識や禅的な静謐さを、間近で感じられるのは大変貴重な体験です。

 第二展示室:伊藤若冲の「鹿苑寺大書院障壁画」一部を移設

第二展示室では、奇想の画家として名高い伊藤若冲による水墨画の傑作「鹿苑寺大書院障壁画」の一部を常設展示しています。「葡萄小禽図」や「月夜芭蕉図」など、重要文化財に指定されている若冲の障壁画を、古刹の静かな空間の中で鑑賞できるのは、この美術館ならではの醍醐味です。大胆な筆づかいやユーモラスなモチーフなど、若冲芸術の真骨頂を肌で感じることができるでしょう。


4. 所蔵品の多彩な魅力

承天閣美術館には、伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯など、江戸・近世を代表する巨匠の作品が集まっています。また、茶道具の分野においても東山文化を築いた足利義政が収集したと伝わる「東山御物」の一部など、茶の湯愛好家垂涎の名品が多数収蔵されています。以下では、国宝・重要文化財の一例をご紹介します。

国宝

無学祖元墨蹟「与長楽寺一翁偈語」

玳玻散花文天目茶碗(たいひさんげもん てんもくちゃわん)

 

重要文化財

「鳴鶴図」(文正)

 

「鹿苑寺大書院障壁画 月夜芭蕉図」(伊藤若冲)

 

「竹林猿猴図屏風」(長谷川等伯)

これらはほんの一部で、ほかにも禅画や墨蹟、彩色画など多岐にわたる作品が数多く収蔵されているので、何度訪れても新たな発見があります。


5. 相国寺の境内を巡ってみよう

相国寺の法堂(はっとう)は1605年(慶長10年)に再建され、桃山時代に建てられた禅宗様建築としては日本最古で最大規模を誇るといわれます。重要文化財にも指定されており、その威風堂々とした姿は圧巻です。承天閣美術館を訪れた際には、ぜひ相国寺の法堂や境内の塔頭寺院も一緒に巡ってみてください。また、相国寺は、山外塔頭として鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)、真如寺を擁しています。金閣寺・銀閣寺には世界的に有名な建築美や庭園美があり、それらに関連する美術品が承天閣美術館にも伝来しています。観光客が多い金閣寺・銀閣寺の華やかな雰囲気とはまた違った静寂が相国寺には流れており、落ち着いた環境で作品を堪能することができます。


6. なぜ承天閣美術館は訪れる価値があるのか

国宝・重要文化財の宝庫
国宝5点、重要文化財145点を含む多彩なコレクションは他に類を見ません。伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯など日本美術史を彩る巨匠たちの作品に間近で触れられることは、アートファンにとって大変価値があります。相国寺の法堂は1605年に再建され、桃山時代に建てられた禅宗様建築としては日本最古で最大規模を誇るといわれます。重要文化財にも指定されており、その威風堂々とした姿は圧巻です。承天閣美術館を訪れた際には、ぜひ相国寺の法堂や境内の塔頭寺院も一緒に巡ってみてください。

茶室「夕佳亭」を復元した貴重な空間
金森宗和造と伝えられる「夕佳亭」を第一展示室に再現が魅力的です。京都の茶の湯文化を現代に伝える重要な建築であり、茶道の歴史や趣を五感で感じることができます。

歴史的背景に支えられた禅の美意識
相国寺は室町幕府第三代将軍・足利義満が創建し、多くの禅僧や文化人を輩出してきました。600年を超える歴史が、墨蹟や障壁画、茶道具などを通じて余すことなく感じられる点も魅力です。

京都の中心にありながら静謐な空間
承天閣美術館は、京都御所のほど近く、街の中心部に位置しますが、相国寺境内に足を踏み入れると都会の喧騒から離れた静けさを味わえます。観光客で混雑する金閣寺や銀閣寺と比べても、落ち着いた雰囲気の中で芸術作品を鑑賞したい方に最適です。


7. アクセスと注意点

アクセス
相国寺は京都市上京区、京都御所の北側に位置します。最寄り駅は京都市営地下鉄「今出川駅」で、徒歩約10分ほど。バスを利用する場合は「同志社前」や「今出川新町」などのバス停が便利です。境内は広々としているので、時間にゆとりを持って散策するのがおすすめです。展示内容は定期的に入れ替わるため、公式サイトや事前の情報収集で現在の展示品を確認しておくと間違いありません。相国寺境内では歴史ある建造物や美しい庭園も点在しているので、美術館と合わせて巡ると一層深い体験が得られます。


まとめ:承天閣美術館で京都の深淵なる美に触れる

承天閣美術館は、ただ国宝や重要文化財を眺めるだけでなく、室町幕府の歴史、禅の精神、茶の湯文化など、多面的に日本の美と精神世界を体感できる稀有な場所です。伊藤若冲の奇想天外な世界観から長谷川等伯の荘厳な筆致まで、多彩な作品を間近で鑑賞することで、京都という街が育んできた芸術の奥深さを存分に堪能できます。京都には数多くの美術館・博物館がありますが、その中でも承天閣美術館は「禅」や「歴史的文化財」といった切り口から一味違った魅力を放っています。金閣寺や銀閣寺へ足を運ぶ際には、ぜひ相国寺境内にも立ち寄ってみてください。喧騒から離れた静寂な空間で、国宝や重要文化財の数々に心ゆくまで浸り、京都の本質的な魅力を感じてみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの京都観光をより深みのあるものへと導いてくれるはずです。承天閣美術館は、京都で芸術を堪能したい方、禅の世界を体験したい方、そして歴史に触れながら静かに時を過ごしたい方に心からおすすめしたい美術館です。

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