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青瓷端反鉢 諏訪蘇山

青瓷端反鉢 諏訪蘇山

通常価格 ¥192,500
通常価格 セール価格 ¥192,500
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幅 : 20.3cm 高さ : 8.5cm

南宋・龍泉の美学を今に写す、清澄な器

 「青瓷端反鉢」は、四代 諏訪蘇山様が、中国南宋時代・龍泉窯で完成を見た砧青磁(きぬたせいじ)の造形と釉調を範としつつ、日本の生活美や精神文化に即した形で再構築された作品です。

 写真でも一目でわかるように、本作の最大の特長はその静謐で澄み切った釉色と、ゆるやかに広がる口縁の反り返りにあります。端正な鉢形に、しなやかな張りと抑制された曲線美が宿されており、まさに「器は用の美にして、静の美の象徴」と言えるでしょう。


造形美――端反の静謐な佇まい

 本作の器形は「端反(はたぞり)」、すなわち口縁が外に向かってわずかに開く形状であり、視覚的な軽やかさと実用性を兼ね備えた構造となっています。

 端反形は、宋代の青磁器においても頻繁に用いられた形式であり、その開口部は器としての機能を高めると同時に、空間に広がりを持たせる設計として知られています。諏訪蘇山様の手によるこの鉢は、肩から胴への流れが極めて滑らかで、全体に歪みのない均整の取れたフォルムを実現しています。

 器底にはしっかりとした高台が設けられ、設置面に品格と安定感をもたらしつつ、鉢全体をわずかに浮かせるような軽快な印象を与えています。この**「浮き上がるような重心の処理」**こそ、青磁の世界観において静けさと気品を両立させる技術的鍵となっています。


青磁釉の美――初代蘇山より受け継がれる「翡翠の光」

 青磁とは、本来、釉薬中の微量な鉄分が還元炎焼成によって青緑色に発色した陶磁器の総称であり、とりわけ中国・宋代には、「玉(ぎょく)のごとき色」と称され、宮廷御用の器として愛されてきました。

 本作に施された釉薬は、初代 諏訪蘇山様が約二十五年にわたる試行錯誤を経て完成させた「蘇山青磁」の系譜に属します。透明感のある淡青緑色は、見る角度や光の具合によって表情を変え、時に青白磁にも見え、時に翡翠のような光沢を帯びます。

 釉薬は鉢全体を均一に包み、器面に流れやムラのない、極めて高度な厚掛け施釉がなされています。とりわけ口縁の反り部分には釉がわずかに溜まり、そこに生じる光の濃淡が、器に生命を与えるような「呼吸感」を演出しています。


用の美と茶道具としての可能性

 この端反鉢は、茶懐石や割烹の席においては取鉢や盛鉢として用いることが可能であり、また花を一輪浮かべても美しく、あるいは静かに菓子器として佇ませても、その場に気品ある空気をもたらすでしょう。

 端反の形状は、単に器の「口を広く見せる」視覚効果だけでなく、手を添えた際の収まりの良さや、取り分けのしやすさといった実用性にも貢献しています。いわばこの器は、青磁が本来持つ「用の美」を、現代の生活空間に調和させた再構築の試みと申せましょう。


歴史を受け継ぎ、未来へ向かう青磁

 砧青磁は、南宋時代の龍泉窯において技術と美学の頂点に達した焼物であり、特に宮廷・文人の間では、青銅器に代わる精神性を象徴する器として重用されてきました。その後、元・明を経て日本にも渡り、茶の湯の美意識と結びついて独自の価値を築いていきます。

 初代 諏訪蘇山様は、その伝統を継承しながらも、日本の磁器文化の中に砧青磁を再現するという高い志を抱き、明治から昭和にかけて数々の青磁作品を生み出しました。その後も代々の蘇山様が試行錯誤を重ね、今日の四代に至るまで、青磁という伝統と革新の交差点に立つ表現者としての姿勢を貫かれています。

 本作「青瓷端反鉢」もまた、その系譜の延長線上にありながら、現代の感性と使い手の生活感覚に寄り添う器として完成されています。


結語――静けさの中に宿る崇高な美

 「青瓷端反鉢」は、南宋の青磁美学を基礎としつつ、四代 諏訪蘇山様ならではの造形感覚と釉調制御によって、静謐かつ深淵な美を現代に再生させた逸品です。

 その青は、天青(てんせい)の空のように透き通り、器の中に世界が映り込むかのよう。まるで宇宙の静けさを器に凝縮したような、内に澄みきった深さを湛えた鉢。それは見る者の心を鎮め、触れる者の手に、ひとときの静寂と清涼をもたらします。

 

四代諏訪蘇山 略歴

1970年 京都市に生まれる 父 三代 諏訪蘇山・母 十二代 中村宗哲 三女
1988年 京都市立銅駝美術工芸高等学校漆芸科卒業
1992年 成安女子短期大学造形芸術科グラフィックデザインコース映像専攻卒業・専攻科修了
1996年 京都府立陶工高等技術専門校成形科・研究科修了
1997年 京都市伝統産業技術者研修陶磁器コース本科修了 父と共に陶磁器の制作活動 各地にて中村宗哲展に出品、哲公房に参加
2002年 四代諏訪蘇山を襲名
現在 各地にて諏訪蘇山展を開催

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