青瓷鳳凰耳付花入 諏訪蘇山
青瓷鳳凰耳付花入 諏訪蘇山
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幅 : 12.1cm 高さ : 25.5cm
青瓷鳳凰耳付花入
「青瓷鳳凰耳付花入」は、四代 諏訪蘇山様 が手掛けられた作品で、南宋時代・龍泉窯の最上級品と謳われる砧青磁(きぬたせいじ)を範としつつ、日本独自の美意識を添えて再構築した花入です。左右に配された鳳凰耳は、祥瑞をもたらす霊鳥を象徴し、口縁から胴へと流れる柔らかな曲線と呼応して、器全体に雅やかな律動を生み出しています。茶席や床の間に据えた際、花のみならず周囲の空気までも清めるような静謐さを湛えています。
造形と意匠
本作のシルエットは、南宋期に流行した「鳳凰耳付瓶」を踏襲しつつも、日本の花入文化に適うよう細部が調整されています。頸部をわずかに絞り、胴に張りを持たせることで、挿花の安定性と見栄えを両立。鳳凰耳は鋳型を用いず手捻りで成形され、羽根の重なりや尾羽の翻りが繊細に彫り出されています。耳の付根には「隠し継ぎ」と呼ばれる独自の接合技法を施し、焼成後に継ぎ目が目立たぬよう配慮されている点も見逃せません。
釉調――初代から受け継ぐ「蘇山青磁」の色
釉薬は初代 諏訪蘇山様 が二十五年の歳月を費やして完成させた「蘇山青磁」を継承しています。胎土にわずかな鉄分を練り込み、還元炎焼成で発色させることで、翡翠を思わせる青緑が現れます。四代 諏訪蘇山様 はさらに微妙な温度勾配を調整し、口縁や鳳凰耳の稜線にほのかな翳り(シャドウ)を残すことで、光の当たり方に応じて濃淡が移ろう奥行きを与えています。厚釉ゆえに生じる「澄み」の深さは、水を湛えたときにいっそう際立ち、挿した草花の色彩を柔らかく映し込みます。
歴史的背景――龍泉窯砧青磁へのオマージュ
砧青磁は、南宋宮廷で珍重された龍泉窯青磁の中でも特に透明感と青みが強い名品群です。その優麗な青を日本でいち早く再現したのが初代 諏訪蘇山様 でした。明治四十年(1907)に完成した蘇山青磁は、大正六年に帝室技芸員に認定されるほど高く評価され、以降、諏訪家の代名詞となります。四代 諏訪蘇山様 は、この系譜を守りながらも、宇宙や星を題材にした練込青磁など、新たな表現を追究しておられます。本作は、砧青磁の典雅さを忠実に写しつつ、現代の生活空間に馴染む凛とした佇まいを備えた好例と言えるでしょう。
作家略歴と制作姿勢
四代 諏訪蘇山様 は1970年京都市生まれ。三代 諏訪蘇山様 を父に、塗師・十二代 中村宗哲様 を母に持つ芸術家一家に育ち、1996年に京都府立陶工高等技術専門校を修了後、父とともに制作活動を開始されました。2002年に四代を襲名。青磁を主軸に据えつつも、石膏型成形や多彩な釉薬研究など初代以来の探究心を受け継ぎ、作品一つひとつに「物語」を込めることを信条としておられます。また、京都の地理的制約を踏まえ、遠方から取り寄せた土を無駄なく使い切るなど、サステナブルな制作姿勢も特徴的です。
作品の見どころと取り合わせ
光と陰影の揺らぎ
厚釉が生むわずかな流紋が、室内光や蝋燭の炎を受けてゆらぎ、花入自体が水面のように表情を変えます。
鳳凰耳の象徴性
鳳凰は再生・吉兆を示す瑞鳥であり、茶席においては「和敬清寂」の精神を象徴するモティーフとして好まれます。
茶会での活用
春は山桜、夏は青楓、秋は薄(すすき)、冬は蝋梅など、四季折々の草木が釉色と響き合い、花と器が一体となって景色を生み出します。
結語
「青瓷鳳凰耳付花入」は、南宋龍泉窯砧青磁への敬意と、諏訪家四代にわたる青磁研究の結晶が融合した逸品です。鳳凰耳に託された吉祥の願い、澄みわたる青の奥底に潜む深遠な歴史、そして現代の茶席に寄り添う実用性――そのすべてが一体となり、見る者・使う者の心を穏やかに澄ませてくれることでしょう。四代 諏訪蘇山様 が守り伝える「蘇山青磁」の輝きは、これからも新たな物語を紡ぎながら、時代とともに息づいていくに違いありません。
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