丹波自然釉茶盌 西端正
丹波自然釉茶盌 西端正
幅 : 14.0cm 奥行13.2cm 高さ :10.4cm
西端正様による丹波自然釉茶盌は、丹波焼の伝統と自然の力が見事に調和した逸品です。この茶盌の特筆すべき点は、その力強い「割り高台」と自然釉の美しさです。特に高台部分に注目すると、単なる実用的な要素を超え、茶盌全体の造形美を高めるデザイン的な重要性が浮かび上がります。
割り高台の魅力
割り高台はこの茶盌に独特の迫力を与えています。茶盌の高台は、単に器を支えるだけでなく、茶盌全体のバランスを決定づける重要な要素です。特に割り高台は、その高台の一部に切り込みが入れられているのが特徴で、これは視覚的にも印象的なだけでなく、実用的な面でも優れています。この「割り高台」には、器を積み重ねる際に安定感を保つためや、焼成時に火の通りを均等にするという実用的な理由があるとされています。また、萩焼のような高台に切り込みを入れる伝統は、朝鮮の李朝時代の技法から伝わったものとも言われています。
割り高台の意匠と機能
割り高台のデザインは、単なる意匠ではなく、器全体の機能性を高める役割も果たします。例えば、茶碗を重ねて運ぶ際に滑りにくくするためや、蒸気がこもらないようにするため、また高台部分の釉薬のかかり具合を均一にするためなど、割り高台には様々な理由が存在します。さらには、完璧な円形よりも切れ目を入れた方が、より風情があるとする美的な観点から、このようなデザインが施されることもあります。
また、このような高台のデザインが持つ芸術性は、茶盌全体の印象に大きな影響を与えます。茶碗は底を見た際に、その造り手の美意識や技巧が強く感じられる部分であり、高台の細部にこそ陶工のこだわりが詰まっているのです。特に、釉薬がかからない「土見せ」と呼ばれる手法が用いられることも多く、高台部分は陶芸家の技術と美意識が集約される場所ともいえるでしょう。
複雑で美しい自然釉
西端正様の丹波自然釉茶盌のもう一つの特徴は、その豊かな自然釉です。焼成中に偶然生じる自然釉は、まるで苔や錆びた銅を思わせる深い緑色を呈し、微妙な色合いや模様が茶盌の表面に複雑に広がります。この自然釉は、茶盌一つひとつに個性的な表情を与え、まるで自然が描いた抽象画のような美しさを生み出します。
特に丹波自然釉茶盌では、釉薬が掛かる部分と掛からない部分の対比が、器全体に深みと奥行きを与えます。時間とともに、釉薬の色合いは変化し、さらに複雑な表情が浮かび上がってくるため、使い込むほどに新たな魅力が発見されることでしょう。
自然との調和と禅の精神
丹波自然釉茶盌の深い緑色は、自然界の静寂と調和を思わせます。この色彩は、苔むした石や雨に濡れた古木のような自然の一部を連想させ、見る者に心の平安と瞑想的なひとときを提供します。自然の移ろいを感じさせるこの茶盌は、茶の湯の精神である「一期一会」の心を体現し、茶のひとときを一層深いものにしてくれるでしょう。
また、この茶盌に見られる自然釉の複雑な模様は、禅の無常観を反映しています。完璧を求めず、自然に委ねることによって生まれるこの美しさは、禅の精神と通じるものがあり、茶の湯の世界において特に高く評価される要素です。茶盌を手に取るたびに異なる表情を見せる自然釉は、常に新しい発見をもたらし、使い手との関係を深めていきます。
職人技と芸術性
丹波自然釉茶盌は、自然の力を最大限に引き出すために、陶工たちの熟練した技術が求められます。西端様の作品は、その細部に至るまで精巧に作り込まれており、釉薬の掛かり具合や焼成過程に至るまで、徹底したこだわりが感じられます。特に自然釉の美しさを最大限に引き出すためには、窯の中での器の位置や温度管理など、熟練の技術が必要とされます。
永続する価値
丹波自然釉茶盌は、使い込むほどに風合いが増し、次第に愛着が深まる作品です。茶盌を長く使うことで、釉薬の変化や手触りの変化を楽しむことができ、まさに一生愛用できる宝物となることでしょう。丹波焼の伝統と西端正様の技術が結集したこの茶盌は、時を超えてその美しさと価値を保ち続ける、まさに永続的な芸術作品です。この丹波自然釉茶盌は、自然と人間の技が織りなす最高の一品であり、茶の湯のひとときを特別なものにしてくれるでしょう。
西端正 略歴
昭和二十三年 二月二十四日生
昭和四十四年 作陶を始める
昭和五十一年 兵庫県展奨励賞
昭和六十一年 日本伝統工芸展初入選
昭和六十三年 日本伝統工芸展入選 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞
平成元年 日本陶芸展入選半どんの会 乃川記念賞
平成三年 日本伝統工芸展入選 日本陶芸展入選 茶の湯の造形展大賞
平成四年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 兵庫県新進芸術家奨励賞 NHK主催 パリ―日本の陶芸 「今」一〇〇選招待出品 茶の湯の造形展優秀賞
平成五年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店 京都シュマン
平成六年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店
平成七年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店
平成八年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 個展 日本橋三越本店
平成九年 茶の湯の造形展奨励賞
平成十年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店 日本伝統工芸展入選
平成十二年 個展 日本橋三越本店 個展 福岡三越
平成十三年 ギャラリー堂島 日本伝統工芸展入選
平成十四年 個展 日本橋三越本店 個展 ギャラリー堂島
平成十五年 個展 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成十六年 父子展 そごう広島店 茶の湯の造形展大賞
平成十七年 明石市立文化博物館・兵庫のやきもの展出品 赤土部臺買上 兵庫陶芸美術館 個展 ギャラリー堂島 日本橋三越本店
平成十八年 茶の湯の造形展大賞 日本伝統工芸展入選 ボストン美術館及び ニューヨークジャパンソサエティギャラリー 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 父子展 松山高島屋
平成十九年 陶俊会展 そごう横浜店 茶の湯の造形展奨励賞 日本伝統工芸展入選
平成二十年 日本伝統工芸展入選 個展 横浜高島屋 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 陶俊会展 船橋 西武 そごう広島店 日本陶芸展招待出品
平成二十一年 個展 ギャラリー堂島 仙台三越
平成二十二年 そごう神戸店 智美術館大賞展現代の茶 出品 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成二十三年 日本陶芸展招待出品 個展 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス 日本陶芸展招待出品
平成二十五年 菊池寛実記念智美術館『現代の名碗”出品 個展 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン ギャラリーミヤザキ そごう神戸店 千葉そごう
平成二十六年 個展 個展 日本橋三越本店
平成二十七年 兵庫県文化賞受賞
平成二十八年 東広島市立美術館 生活を彩る陶―食の器 出品 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス
平成二十九年 四十周年記念展出品
平成三十年 個展 日本橋三越本店
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。