白丹波茶盌　西端正

幅 : 15.8cm  　奥行14.0cm     高さ :10.4cm　

ご紹介

白丹波茶盌は、丹波焼の中でも特に希少な白色が際立つ、精緻で上品な作品です。通常、丹波焼に用いられる土は鉄分を多く含み、そのため焼成後は褐色や赤みを帯びた色合いが主流です。しかし、西端正様の手によって作り出されたこの白丹波茶盌は、伝統的な技法と熟練の技によって白色を実現し、その繊細さと凛とした美しさで見る者の心を捉えます。

白丹波の歴史と粉引技法

白丹波の茶盌は、江戸時代後期に生まれた「粉引（こひき）」という技法によって、その独特の白色が生まれています。粉引技法は、鉄分を多く含む土を使いながらも、白い泥を塗ることで表面に美しい白色を表現することが可能です。白丹波は、この技法によってまるで雪のように清らかな白い表面を持ち、他の丹波焼とは異なる美しさを放ちます。この白い表面は、茶盌全体に優雅さを与え、抹茶の鮮やかな緑を一層引き立てる背景として機能しています。

西端正様は、この伝統的な粉引技法を現代に受け継ぎ、さらに昇華させました。彼の手による白丹波茶盌は、ただ白いだけでなく、その表面には繊細なひび割れ模様（貫入）が広がり、焼成時の窯の温度や環境によって生じる自然な変化が、まるで自然の力が込められたような豊かな表情を作り出しています。このような技術は、茶盌に独特の個性と深みを与え、見れば見るほどに新たな発見をもたらします。

自然と調和する美しさ

白丹波茶盌は、自然と調和した美しさが特徴です。その白い表面は、雪景色や霧がかった山の風景を彷彿とさせ、抹茶を点てる際には、茶の緑色と見事な対比を成します。この色のコントラストは、茶の湯の時間に一層の静寂と瞑想的な空気をもたらし、見る者に深い精神的な安らぎを与えます。また、白丹波の茶盌は、茶の湯の中で季節を感じさせる一つの要素でもあります。春や冬にはその白さが特に引き立ち、茶席において穏やかで清らかな空気感を演出します。自然界の移ろいを反映したこの茶盌は、茶会の際に特別な役割を果たし、使用するたびに新しい感覚をもたらしてくれるのです。

職人技と独自の芸術性

西端正様による白丹波茶盌は、単に伝統を守るだけでなく、そこに現代的な感覚と芸術性を加えた作品です。茶盌作りには、細心の注意が払われ、一つひとつが丹念に作られています。特に白丹波の場合、白い表面を美しく保ちながらも、茶盌全体のバランスや手触りに配慮し、茶席での使いやすさも考慮されています。熟練の技術と職人の感性が合わさった結果、白丹波茶盌は実用性と芸術性を兼ね備えた逸品として、多くの人々に愛されています。

茶席を彩る特別な一品

白丹波茶盌は、茶の湯のひとときを特別なものにします。その洗練された白色と、手に取った際の滑らかな感触は、茶席における重要な要素として機能します。茶の湯において、茶碗はただ抹茶を点てる道具としてだけでなく、視覚的な美しさや手に持ったときの感覚、さらにはその存在感までもが重要です。白丹波茶盌は、これらの要素を見事に満たし、茶席における格別な時間を演出します。

その特有の白色は、抹茶の緑との調和が美しく、茶を飲む際の感覚を一層豊かなものにします。また、この茶盌は季節の移り変わりを感じさせ、春には桜の白さを、冬には雪景色を連想させるため、使用するたびに異なる情緒を感じることができます。

長く愛用できる一生の宝物

白丹波茶盌は、時を経るごとにその美しさが深まります。使い込むことで表面の風合いが変わり、次第に愛着が湧いてくることでしょう。使い手とともに時を重ねることで、茶盌は一層味わい深いものとなり、一生愛用できる逸品として大切にされること間違いありません。西端正様の白丹波茶盌は、芸術作品としての価値に加えて、長く使用することでその魅力が増していく、永続する価値を持つ作品です。本作は、伝統的な丹波焼の技術と現代的な美意識が見事に融合した、至高の茶盌です。その清らかな白色と、職人の技が生み出す繊細な表情は、茶の湯のひとときを特別なものにし、長く愛用できる一生の宝物となることでしょう。この茶盌を手に取ることで、自然との一体感や、時を超えた美しさを感じることができるに違いありません。

西端正　略歴

昭和二十三年 二月二十四日生
昭和四十四年 作陶を始める
昭和五十一年 兵庫県展奨励賞
昭和六十一年 日本伝統工芸展初入選
昭和六十三年 日本伝統工芸展入選 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞
平成元年 日本陶芸展入選半どんの会 乃川記念賞
平成三年 日本伝統工芸展入選 日本陶芸展入選 茶の湯の造形展大賞
平成四年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 兵庫県新進芸術家奨励賞 NHK主催 パリ―日本の陶芸 「今」一〇〇選招待出品 茶の湯の造形展優秀賞
平成五年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店 京都シュマン
平成六年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店
平成七年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店
平成八年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 個展 日本橋三越本店 
平成九年 茶の湯の造形展奨励賞
平成十年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店 日本伝統工芸展入選
平成十二年 個展 日本橋三越本店 個展 福岡三越
平成十三年 ギャラリー堂島 日本伝統工芸展入選
平成十四年 個展 日本橋三越本店 個展 ギャラリー堂島
平成十五年 個展 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成十六年 父子展 そごう広島店 茶の湯の造形展大賞
平成十七年 明石市立文化博物館・兵庫のやきもの展出品 赤土部臺買上 兵庫陶芸美術館 個展 ギャラリー堂島 日本橋三越本店
平成十八年 茶の湯の造形展大賞　日本伝統工芸展入選 ボストン美術館及び ニューヨークジャパンソサエティギャラリー 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 父子展 松山高島屋
平成十九年 陶俊会展 そごう横浜店 茶の湯の造形展奨励賞 日本伝統工芸展入選
平成二十年 日本伝統工芸展入選 個展 横浜高島屋 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 陶俊会展 船橋 西武 そごう広島店 日本陶芸展招待出品
平成二十一年 個展 ギャラリー堂島 仙台三越
平成二十二年 そごう神戸店 智美術館大賞展現代の茶 出品 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成二十三年 日本陶芸展招待出品 個展 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス 日本陶芸展招待出品
平成二十五年 菊池寛実記念智美術館『現代の名碗”出品 個展 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン ギャラリーミヤザキ そごう神戸店 千葉そごう
平成二十六年 個展 個展 日本橋三越本店
平成二十七年 兵庫県文化賞受賞
平成二十八年 東広島市立美術館 生活を彩る陶―食の器 出品 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス
平成二十九年 四十周年記念展出品 
平成三十年 個展 日本橋三越本店