白釉稜線酒盃(はくゆう りょうせん さかずき)
― 岡田優様 作 ―
作品概要
本作は、京都・宇治炭山で窯を構える岡田優様が手掛けられた白釉酒盃です。円筒形に近い端正な器形の側面に、等間隔で縦の稜線(削り筋)を施し、静謐な白磁肌にリズミカルな陰影を与えています。端正さと素朴さを併せ持つフォルムは、茶陶で培った「間(ま)」の美意識を酒器へ昇華した意欲作といえます。
釉調と技法
白釉配合:長石・珪石を主体にごく少量の酸化チタンを加え、やや暖かみのある生成り白を実現しています。
稜線彫りの演出:削り筋に釉薬が薄く掛かることで、素地の生成りがかすかに透け、白磁面に微妙なグラデーションを生みます。
焼成:終盤に炉内を飽和酸素状態にすることで白釉の清廉さを際立たせ、土味との対比を明瞭にしています。
歴史的・文化的背景
白釉・白磁の酒器は、中国・景徳鎮青白磁や李朝の白磁盃を淵源とし、江戸期には茶の湯の席でも静けさを象徴する道具として受容されました。側面に鎬(しのぎ)や筋彫りを入れる手法は、李朝粉引や萩焼などにも見られる装飾技法で、素朴な土味を引き立てると同時に光と影の表情を生み出す日本的なアレンジです。岡田優様は、この伝統的技法を現代的ミニマリズムと融合させ、白の余白にリズムを刻む新たな表現を試みられています。
美的意図と精神性
緊張感のある直線稜線は「時間の刻み」を示唆し、白釉の余白は「無限の空間」を象徴します。酒を注ぐと筋彫りが液面に映り込み、呑み進めるごとに影が揺らいで消える──その一瞬一瞬が「一期一会」を体感させてくれます。
使い方と鑑賞ポイント
冷酒・常温酒向き:円筒形が香りをほどよく閉じ込め、吟醸系の繊細なアロマを際立たせます。
光源の変化:自然光では柔らかな陰影、スポットライト下では稜線がシャープに浮かび上がり、白磁面に彫塑的な表情が生まれます。
多用途性:珍味入れや小さなデザートカップとしても映え、食卓に清潔感とリズムを添えます。
静かな白の世界に鋭い稜線が刻むリズム──本酒盃は、岡田優様が追求する「余白の緊張」と「素朴の洗練」を体現しています。掌に収め、酒と光が生む陰影の舞いをじっくりと味わいながら、心静かな至福のひとときをお過ごしください。