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薬師寺東塔基壇土 灰釉茶碗 尾西楽斎

薬師寺東塔基壇土 灰釉茶碗 尾西楽斎

通常価格 $776.00
通常価格 セール価格 $776.00
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幅 : 14.1cm 高さ : 7.2cm

薬師寺東塔基壇土 灰釉茶碗 ― 尾西楽斎様


1.胎土 ―― 千三百年の息吹を宿す基壇土

本作には、奈良時代創建の名塔・薬師寺東塔の基壇を補修した際に採取された「古土」が胎土として用いられております。基壇土は長い歳月を経て珪酸と鉄分が再結晶化し、細かな雲母・石英粒が点在します。尾西楽斎様は信楽系の荒土にこの古土をブレンドし、焼成後も胎土中の石英粒が星屑のように煌めく重厚な土味へと昇華させています。

2.灰釉と窯変 ―― 炎が描く苔青(こけあお)の景

外面を覆うのは、藁灰と木灰を主成分とする自調灰釉です。還元気味の高火度で焼成することで、

上部:灰釉が淡い鼠青に溶け、口縁を取り巻くように銀灰の結晶が浮かび上がる

中腹:釉薬中の鉄分が苔色(モスグリーン)に発色し、自然降灰がガラス滴となって流れる

下腹:炎の当たりが強い部分は灰が完全に溶けきらず、斑点状に焦げ茶を残す
という三層のグラデーションを見せ、見る角度によって雨に濡れた古塔の石肌や苔生す基壇を想起させます。

3.造形 ―― 古塔の基壇を思わせる端正な鉢形

口縁をわずかに外反らせた鉢形は、塔身が天へ向けて広がるシルエットを反映したかのようです。胴部に残る三条の轆轤目は、基壇石の積層を思わせるリズムを作り、灰釉の流れを視覚的に受け止めています。高台は切高台ぎみに仕上げ、火返り(ひがえり)の赤が覗くことで、胎土の素朴な赤味と灰釉の静謐な青味が対照を成しています。

4.手取りと機能美 ―― 侘びを湛えた実用性

外肌は珪砂由来のざらつきが掌に心地よい摩擦を与え、見込みは灰釉が厚く溜まって乳白のガラス層を形成しています。抹茶を点てると、乳白面に翠(みどり)が霧のように溶け込み、泡立ちはきめ細かく安定します。高台近くの素地露わな部分が熱を適度に逃がし、冬の席でも持ちやすい温度に調節されております。

5.文化的意義 ―― 「祈り」と「再生」を味わう一碗

薬師寺東塔は「凍れる音楽」と称され、再建・修理を繰り返しながら千三百年の法灯を守り続けてきました。基壇土を用いることは、その悠久の祈りと再生の歴史を茶碗に封じ込める行為に他なりません。本作を用いる茶席では、抹茶をいただく一瞬が過去と現在を繫ぐ「時の交差点」となり、客人は静かに手を合わせるような心持ちで一服を味わうことでしょう。


総括

苔青の灰釉が雨上がりの古塔を映し、胎土に潜む星屑のような石英粒が夜空を思わせる――尾西楽斎様の「薬師寺東塔基壇土 灰釉茶碗」は、土・灰・炎が奏でる自然の交響と千年の祈りを掌に宿す珠玉の一碗です。茶席に据えれば、抹茶の緑が静かに湖面を揺らし、客人は時空を超えた祈りの余韻に包まれることでございましょう。

尾西楽斎様との対談 – 高級陶器の専門店【甘木道】

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