青瓷振出 多賀井正夫
青瓷振出 多賀井正夫
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幅 : 6.6cm×6.6cm 高さ : 9.3cm
作品概要
本作は、多賀井正夫様が手掛けられた**青瓷振出(せいじ ふりだし)**です。振出は茶道において金平糖などの干菓子を入れ、席中で「振り出す」所作に用いられる小振りの器で、客人への心づくしを象徴いたします。本作はその伝統的用途を踏まえつつ、現代的な洗練をまとった一点です。
造形
胴を豊かに張らせ、肩から口縁にかけて滑らかに絞り込むひょうたん形のフォルムは、掌にすっと収まる愛らしさと安定感を兼ね備えています。底部をわずかに絞ることで重心を低く保ち、卓上での佇まいを美しく整えております。蓋には籐を細かく編み上げた利休結びが添えられ、柔らかな有機性が磁胎の硬質さを和らげる好対照を生んでいます。
釉調
透明感のある青磁釉は、鉄粉を微量に含むことで還元焼成下において淡い青み—時に「雨過天青」と称される—を呈します。本作では素地と釉の膨張率を精密に調整することで貫入を抑え、鏡面のような光沢を実現。室内光を受けると釉厚のゆらぎがほのかなグラデーションを生み、静謐な水面を想起させます。
用途と茶道文化
振出は懐中用菓子器として16世紀頃から用いられてきましたが、青瓷で仕立てられる例は比較的少なく、「涼感」と「清廉」を一手に担う存在として夏の風炉点前などに重宝されます。客人が耳で振出の音を聞き、目で青瓷の色を愉しみ、味覚へと体験がつながる——五感連鎖こそ茶道ならではの美意識であり、本作はその媒介役を務めます。
歴史的文脈
青瓷は中国・北宋期の汝窯や南宋期の龍泉窯に淵源を持ち、日本では鎌倉時代に禅僧が舶載して以来「青白磁」と呼ばれ愛玩されました。室町〜桃山期には唐物の憧憬から国産青磁が試みられ、昭和期に入ると釉薬研究の深化で色調表現が飛躍的に向上します。多賀井様はそうした技術的系譜を踏まえつつ、「現代の生活空間に溶け込む青瓷」を探求されており、本作はその成果の一端といえます。
作家略歴と制作姿勢
多賀井正夫様は京都に生まれ、伝統工芸の修業を経て独立。中国古陶磁の研究を起点に、独自配合の青瓷釉を完成させました。近年は「用の美」を掲げ、茶道具・花器・酒器など掌で感じるサイズ感にこだわって制作。還元焼成の炉内で生じる微細な酸素流量の変化まで制御し、均一で揺らぎのある青という相反領域の平衡点を追求されています。本作「青瓷振出」は、凛とした青がもたらす静けさ。柔らかな曲線が醸す親しみ。利休結びが添える温かみ。これらが一体となり、客人の手元で小宇宙を成す逸品です。茶席においてはもちろん、書斎の卓上オブジェや香料入れとしても映え、見る者の感性を静かに揺さぶります。多賀井正夫様が磨き上げた技術と美意識が凝縮された青瓷の小世界を、ぜひ手に取ってご堪能くださいませ。
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。