灰釉へら目花入 　尾西楽斎

幅 : 8.0cm   高さ :20.0cm

ご紹介

尾西楽斎様が手掛けた「灰釉へら目花入」は、伝統的な技法と現代的なデザイン感覚が見事に融合した一品です。この花入は、若草色と枇杷色が絶妙に交じり合う窯変の色合いが特徴で、見る角度によってその表情が変わる深みのある美しさを持っています。正面上部に施された縦のヘラ目が印象的で、重厚感とスタイリッシュさを兼ね備えた外観が際立っています。

灰釉の伝統と背景

灰釉は、木材や藁の灰を原料とした伝統的な釉薬であり、東アジアの陶器において古くから重要な役割を果たしてきました。中国や韓国、日本の陶器において、この灰釉は独特の風合いを生み出し、今でも多くの工房で使用されています。特に9世紀初頭、尾張の猿投窯で開発された灰釉陶器は、奈良・平安時代を通して愛知・岐阜・静岡の窯を中心に広まり、日常の器具として多くの人々に親しまれてきました。植物灰を使用したこの釉薬は、高温で焼成されることで、粒子間の隙間が細かくなり、耐水性に優れた仕上がりとなります。

へら目と面取りの魅力

この花入に施されたヘラ目は、陶芸の制作過程で意図的に残された装飾的な痕跡です。正面上部に縦に入ったヘラ目は、花入のシンプルな形状にアクセントを加え、全体にリズム感と動きを与えています。また、面取りの技法が用いられたこの作品は、スタイリッシュでありながらも重厚感を感じさせ、現代のインテリアにも調和するデザインが魅力です。

伝統とモダンの融合

「灰釉へら目花入」は、伝統的な灰釉の技法を用いながらも、現代的な感覚を取り入れた作品です。若草色と枇杷色の美しい色合いが織りなす窯変の表情と、ヘラ目や面取りといったディテールが、シンプルでありながらも深い味わいを持つ一品に仕上がっています。この花入は、花を生けることでその存在感が一層引き立ち、和洋を問わず、どんな空間にも調和する器として重宝されることでしょう。

灰釉へら目花入は、古くから受け継がれてきた灰釉の技法と、現代のデザイン美学が見事に融合した逸品です。窯変の色合いやヘラ目、面取りの技法が生み出す重厚感とスタイリッシュさが魅力であり、伝統的な美意識を大切にしながらも、現代の生活空間に馴染むデザインが特徴です。この花入は、日常に品格と落ち着きをもたらす、時代を超えて愛される器と言えるでしょう。28