白釉しのぎ文花入　岡田優

幅 : 12.0cm　　高さ : 20.0cm

白釉しのぎ文花入（はくゆう しのぎもん はないれ）　岡田優様作
――「淡雪の曲線に春風のうねりを封じた、静かな旋律の一輪筒」

作品概観

うっすらと乳白を帯びた白釉の肌に、螺旋を描くしのぎ文がやわらかく浮かび上がる端正な花入です。真円の胴を包む流線は、宇治・炭山の山裾をわたる風を写し取ったかのように緩急を保ち、首へ続く伸びやかな筒形が花姿をきりりと引き締めます。抑えた光沢とあいまって、光の当たり方で陰影が揺らぎ、置かれる卓や床の間に清冽な空気を呼び込む一器です。

歴史性と現代性

しのぎ文は朝鮮半島の高麗青磁や江戸期の唐津に連なる技法ですが、岡田優様は鎬（しのぎ）を“削る”のではなく“撫で上げる”ことで、角を立てず柔らかな螺旋を実現。白釉という侘びの無垢と、旋律的フォルムというモダンデザインを融合させ、古典と現代が共鳴する造形へと昇華しています。

作家のメッセージ

岡田優様が掲げる「風が器の内外をゆったりと吹くように」という制作理念は、本花入の螺旋しのぎに結実しています。谷部を指でなぞると土の柔らかさがほのかに残り、稜線は風が山腹を撫でる軌跡を思わせます。白釉の静謐が花の色を際立たせると同時に、器自体が“風の造形”として空間にさりげない動きを添えます。

結び

淡雪を思わせる白釉と、螺旋を描くしのぎ文が奏でる静かな曲線美――白釉しのぎ文花入は、花を受け取るたび新しい風景を映し出します。季節ごとの花材とともに長くご愛用いただき、白釉の艶が深まり、しのぎの影がさらに陰翳を帯びる過程をどうぞご堪能ください。