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白釉線文香炉 岡田優

白釉線文香炉 岡田優

通常価格 $912.00
通常価格 セール価格 $912.00
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幅 : 11.4cm  高さ : 9.8cm

「白釉線文香炉」岡田優様 ― 地平線を抱く蒼のリズムと、三脚が奏でる静謐

白磁の穏やかな肌理に、淡い蒼と霞茶の二色が水平に走り、まるで海と大地の境界を抽象したかのようです。岡田優様の《白釉線文香炉》は、線=時間香=無形という二つのコンセプトを重ね合わせ、香席に“水平線の詩”をもたらす作品となっています。以下、歴史・技法・意匠・精神性・香席活用の五つの観点から、詳しく解説いたします。


1. 歴史的背景 ― 線文と香炉の交差点

線文(せんもん)の源流
平安期の白磁条文壺や李氏朝鮮の**刷毛目(はけめ)**に見られる水平文様は、「時の流れ」「水の層」を象徴する装飾として受け継がれました。岡田優様はその流れを汲みつつ、より抽象度の高い一本の帯を淡彩で表現し、現代的ミニマリズムに昇華しています。

香炉文化との結節
香炉は仏教儀礼具から派生し、室町期には**聞香(もんこう)**として芸道化。江戸後期には好み物の意匠として多彩な釉彩香炉が登場します。線文を取り入れた香炉は希少であり、その点で本作は「古典的フォルム × 現代的意匠」という独自性を放ちます。


2. 意匠 ― 水平線と三脚、二つのリズム

水平線文
蒼と茶の二重線は「海と陸」「昼と夕」を象徴し、見る角度で色味が微妙に変化いたします。香煙が立ちのぼる際、この線文が煙の“揺らぎ”と共鳴し、視覚と嗅覚を同時に刺激します。

三脚(みつあし)
脚先を滑らかな滴状に仕立てることで、器がそっと宙に浮くような軽やかさを実現。古代青銅器由来の三脚意匠を、柔和なフォルムに再解釈しています。

蓋と透かし
半球蓋に二枚の勾玉形透かし窓を配し、香煙が緩やかな渦を描く設計です。摘みはやや高めに立ち上げ、開閉の所作が滑らかに行えるよう配慮されています。


3. 精神性 ― “線”で刻む時間、“香”で融かす時間

線文は「過ぎ去る時間の記憶」を示し、香は「今この瞬間の無形」を現前させます。本作は、過去(線文)と現在(香煙)が一点で交差し、未来(余韻)へと溶けていく
という時間軸の詩学を体現しております。白釉の余白が、使い手の感情や季節の光を映し込み、見るたびに新たな物語が立ち上がります。


4. 香席・茶席での取り合わせ提案

早春「霞香(かすみこう)」

 早春の席では、青瓷聞香机に白梅を一輪挿し、掛物には若やかな霞を詠んだ和歌を合わせます。青瓷の淡い蒼色に走る線文が、朝の大気に漂う靄を想起させ、香炉から静かに立ち上る香煙がその靄をいっそう増幅します。茶席全体がやわらかな薄曇りに包まれ、客人は春の訪れを視覚と嗅覚の両面で感じ取ることができます。

梅雨「雨音の茶事」

 梅雨時は、志野水滴茶碗と紫陽花を取り合わせます。志野独特の肌合いに描かれた蒼い線が、庵の軒から落ちる雨だれを想像させ、紫陽花の瑞々しさと相まってしっとりとした情景を生み出します。焚きしめた香が湿り気をやわらげ、雨音の中でも心地よい爽やかさをもたらします。

秋分「夕焼け聞香」

 秋分の夕刻には、織部筒茶碗にすすきと萩をあしらい、茶系の線文が夕陽の名残を象徴します。蒼色の差し色が夕焼け空とのコントラストを形成し、次第に深まる黄昏を際立たせます。香は秋草の香りを想起させる調合とし、客人に移ろい行く季節の寂寥と豊かさを同時に体験させます。

冬至「雪見香席」

 冬至の夜は、瀬戸黒茶碗と雪椿を取り合わせ、白釉が雪景色を想起させます。器面に走る線文は遠景の地平線を象り、凛とした“静”の構図を作り出します。淡い香が澄んだ空気の中に行き渡り、黒と白、静と動の対比が際立つ雪見の茶席となります。


まとめ

《白釉線文香炉》は、水平線を描く淡彩のベルト、三脚が生む浮遊感と古格、香煙と共鳴する抽象的時間軸。この三要素が交差し、**“静けさの中の動き”**を可視化した香炉でございます。茶室はもちろん、ミニマルな現代住宅やギャラリー空間でも「時間と余白」を語るオブジェとして機能いたします。

— 線が時を刻み、香が時を溶かす。
そのメッセージが、使い手の感性と静かに響き合い、深い余韻を紡いでまいります。

略歴  
京都、清水五条に生まれる  
京都府立陶工訓練校成形科、京都市立工業試験場研修生を経て  
走泥社同人河島浩三氏の下で三年間陶技全般を学ぶ  
1987年、宇治市炭山にて独立、築窯  
2018年より 日本伝統工芸近畿展、鑑査審査委員  
2022年 日本伝統工芸陶芸部会展、鑑査審査委員

〈主な入選〉  
日本伝統工芸展、日本陶芸展  
菊池ビエンナーレ、  
茶の湯の現代展  
長三賞陶芸展、陶美展、  
益子陶芸展、  
伊丹国際クラフト展  
萩大賞展、  
神戸ビエンナーレ  
現代陶芸コンペティション、等

〈主な受賞〉  
1998年、使ってみたい北の菓子器展(優秀賞)  
2002年、京焼、清水焼展(KBS京都放送賞)  
2003年、BONSAIの器展(奨励賞)  
2008年、日本伝統工芸近畿展(日経新聞社賞)  
2009年、おおたき北海ライブ陶器展(NHK放送賞)  
2010年、おおたき北海ライブ陶器展(北海道新聞社賞)  
2012年、京都美術工芸ビエンナーレ(大賞)  
2013年、日本伝統工芸陶芸部会展(日本工芸会賞)  
 神戸ビエンナーレ現代陶芸展(準大賞)  
2014年、光州ビエンナーレ招待出品  
2016年、大阪工芸展(美術工芸大賞)  
2019年、大阪工芸展(準大賞)  
2022年、有田国際陶磁展(大賞、文部科学大臣賞)、等

現在、公益社団法人日本工芸会正会員、陶芸美術協会会員
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