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白釉稜線香炉 岡田優

白釉稜線香炉 岡田優

通常価格 $1,144.00
通常価格 セール価格 $1,144.00
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幅 : 12.0cm  高さ : 13.8cm

「白釉稜線香炉」岡田優様 ― 火を囲む静謐な彫刻

岡田優様が手がける《白釉稜線香炉》は、純白の陶肌にわずかな稜線を走らせ、三本脚で軽やかに立ち上がる現代的香炉です。火舎(ふや)を包む柔らかな曲面と、鋭いカッティングラインの共存が、「静」と「動」、「温」と「冷」の二元を端正に結晶させております。以下、歴史・技法・意匠・精神性・取り合わせの五章立てで、その魅力を詳しくご紹介いたします。


1. 歴史的背景 ― 香炉と茶の湯・香道の交錯

香炉は奈良・平安期に仏教儀礼具として輸入されたのち、室町期には**聞香(もんこう)**の隆盛により、唐物青磁香炉や京焼の香爐が発展いたしました。茶室では、炉開きや正月飾りに「香合」と対で用いられ、幽かな香気が客の五感を開きます。岡田優様は、こうした伝統を踏まえつつ、香道具を立体抽象彫刻に昇華させることで、現代空間にも調和する新たな香炉像を提示しています。


2. 技法と素材 ― 白釉と稜線が生む陰翳の妙

 本作の胎土には、磁器土と半磁胎土を岡田優様が独自にブレンドしており、高温焼成で肉薄ながらも十分な強度を確保し、細く伸びる脚部を実現しています。成形段階では、轆轤挽きで基本形を整えた後、四面体を思わせる削りを加えて三脚構造に仕上げ、重心を低く保ちつつも視覚的な浮遊感を演出しています。

 さらに稜線彫りにおいては、乾燥直前の最も繊細なタイミングでカンナを用いて一気呵成にラインを切り出し、線幅0.8mmを維持したまま焼成収縮によって約0.5mmのシャープな稜線へと収斂させています。施釉・焼成では、珪酸長石主体の半艶白釉を施し還元焼成を行うことで、微細な貫入の発生を抑えつつ光の反射を均質化し、陰翳の美しさを際立たせています。こうした各工程には、岡田優様ならではの精緻な技術と美意識が凝縮されております。

3. 意匠 ― 三脚・稜線・摘みの造形対比

三脚構造
古代青銅器「鼎(かなえ)」由来の三点支持は、揺らぎを吸収しながら視覚的安定を与えます。脚先を内側に絞り込み、繊細さと力強さを両立させました。

稜線のリズム
胴を斜めに横切る稜線は、火舎から立ち昇る香煙の螺旋を象徴。白磁の静寂を切り裂く一閃が、空間へ動的な緊張を放ちます。

滴状摘み
滴がこぼれ落ちる一瞬を捉えた摘みは、指に沿う卵形(らんけい)で、開閉時に清冽な余韻を与えます。火穴を中央にあしらい、熱と香の排気効率を高める機能美も備えています。


4. 精神性 ― “白”に込める浄化と余白

白は禅における「無垢・無限」を指し示します。岡田優様の白釉は、光源によりわずかに温度を変え、使い込むほどに脂艶を帯びて個の景色を纏います。稜線は「人為」、曲面は「自然」、三脚は「天地人」の調和を表象し、焚いた沈香や伽羅の煙とともに、心の雑念を削ぎ落とす道標となるでしょう。


まとめ

《白釉稜線香炉》は、抽象彫刻と茶道具の機能を高度に統合した逸品です。三脚の軽やかな立ち姿と切り裂く稜線が、白磁の静けさにリズムを与え、香煙とともに空間を浄化いたします。茶席はもちろん、モダンなリビングやアートギャラリーにも自然に溶け込み、火を扱う儀礼性と現代デザインが交差する「静謐なる中心点」となることでしょう。

— 削ぎ落とした白の内に、炎と香を抱く。
その哲学が、使い手の五感と時を重ねながら、深い余韻を残してゆきます。

寸法・共箱銘・価格などの詳細情報を頂けましたら、さらに取り合わせ案や歴史的補遺を追加することも可能です。どうぞご遠慮なくお申し付けくださいませ。

 

略歴  
京都、清水五条に生まれる  
京都府立陶工訓練校成形科、京都市立工業試験場研修生を経て  
走泥社同人河島浩三氏の下で三年間陶技全般を学ぶ  
1987年、宇治市炭山にて独立、築窯  
2018年より 日本伝統工芸近畿展、鑑査審査委員  
2022年 日本伝統工芸陶芸部会展、鑑査審査委員

〈主な入選〉  
日本伝統工芸展、日本陶芸展  
菊池ビエンナーレ、  
茶の湯の現代展  
長三賞陶芸展、陶美展、  
益子陶芸展、  
伊丹国際クラフト展  
萩大賞展、  
神戸ビエンナーレ  
現代陶芸コンペティション、等

〈主な受賞〉  
1998年、使ってみたい北の菓子器展(優秀賞)  
2002年、京焼、清水焼展(KBS京都放送賞)  
2003年、BONSAIの器展(奨励賞)  
2008年、日本伝統工芸近畿展(日経新聞社賞)  
2009年、おおたき北海ライブ陶器展(NHK放送賞)  
2010年、おおたき北海ライブ陶器展(北海道新聞社賞)  
2012年、京都美術工芸ビエンナーレ(大賞)  
2013年、日本伝統工芸陶芸部会展(日本工芸会賞)  
 神戸ビエンナーレ現代陶芸展(準大賞)  
2014年、光州ビエンナーレ招待出品  
2016年、大阪工芸展(美術工芸大賞)  
2019年、大阪工芸展(準大賞)  
2022年、有田国際陶磁展(大賞、文部科学大臣賞)、等

現在、公益社団法人日本工芸会正会員、陶芸美術協会会員

 

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