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白釉算盤珠形水指 岡田優

白釉算盤珠形水指 岡田優

通常価格 $2,280.00
通常価格 セール価格 $2,280.00
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税込。 配送料はチェックアウト時に計算されます。

幅 : 23.4cm  高さ : 16.2cm

「白釉算盤珠形水指」岡田優様 ― 抽象と機能が結晶した“白のソロバン”

岡田優様による《白釉算盤珠形水指(はくゆう・そろばんだまがた・みずさし)》は、**算盤珠(そろばん玉)**が連なる曲線を思わせる柔らかなシルエットと、純白の釉景が生み出す静謐さが見事に融合した作品です。裾(すそ)を絞り黒化粧で際立たせた高台が、白磁の船体をそっと支える造形は、茶室における「緊張」と「安息」を同時に演出いたします。以下、歴史・技法・意匠・精神性・茶席運用の五つの側面から、本作の魅力をじっくりとご案内いたします。


1. 歴史的背景 ― 「算盤珠形」の系譜と水指の意義

算盤珠形のルーツ
日本における算盤(そろばん)は室町期に中国からもたらされ、江戸時代以降“珠”のフォルムが茶道具や香道具に応用されました。丸みと稜(りょう)の対比がもたらすリズムは、数を司る道具の「秩序」と「無限」を示唆し、茶席における抽象的な宇宙観と響き合います。

水指としての象徴性
水指は茶の湯で 〈清浄〉と〈節度〉 を象徴する道具。口を小さく、胴を張らせた算盤珠形は、水の「湛えられた静けさ」を視覚的に強調し、取り合わせ全体に中央重心を生み出す役割を果たします。


2. 技法と素材 ― 白釉と黒化粧が奏でる二項対立

 本作は、岡田優様が素材選びから仕上げに至るまで細部に情熱を注ぎ込まれた逸品です。透光性を確保しながらも、茶水の温度変化に耐えうるほどの肉厚設計が実現され、実用性と美観の両立が図られております。施釉では、珪酸主体の長石釉にごく微量の亜鉛を加え、還元炎で焼成することで、マット過ぎない“半艶”の質感を追求されています。光の移ろいを柔らかく反射させるこの半艶は、見る角度によって繊細に表情を変え、静かな奥行きを生み出します。高台処理にも岡田優様ならではの工夫が凝らされています。口縁下三ミリを残して無釉とし、そこへ黒化粧土を回しかけてからあえて擦り落とすことで、黒漆を思わせる深色が生まれました。これが全体を引き締めるとともに、算盤珠の“桝目”を暗示し、静謐なアクセントとして機能しております。さらに蓋摘みは八角形の小摘みを削り出し、指先に自然と収まる絶妙な寸法を追求されています。開閉の際に生じる澄んだ音色にもこだわり、摘み内側の接地面を鏡面研磨で丁寧に仕上げることで、茶席の静寂を損なわない美しい余韻を奏でます。このように、胎土・施釉・高台処理・蓋摘みの各工程が精緻に連携し、岡田優様の審美眼と職人技が結実した一器となっております。静かに手に取るだけで、素材への深い理解と茶の湯への敬意が伝わる、まさに珠玉の作品でございます。


3. 意匠 ― 円錐を重ねた幾何学と白磁の陰翳

双円錐フォルム
胴上部は外側に張り出し、中央より下で緩やかに絞り込むことで、算盤珠が連続する抽象的イメージを形成。視線を受け流す曲線が、茶席の静けさに “動的均衡” を持ち込みます。

白釉の表情
一見無垢ながら、目を凝らすと極微細な貫入がうっすらと走り、炎の還元によるクリームがかった温白が現れます。陰影礼賛の日本美を、最小限の情報で語る点が秀逸です。


4. 精神性 ― “計算”と“空”の往還

算盤は数を操る「知」の象徴である一方、白は禅的な「空(くう)」を示唆します。岡田優様は本作で、「計算し尽くした結果としての無垢」 という逆説的メッセージを提示。見る者は、完璧に制御された曲面の裏側に潜む作家の試行錯誤を想像し、同時に白磁の余白に自身の心を映し出します。それは、茶の湯が求める “主人と客の心を合わせる” という根源的理念とも深く響き合います。


まとめ

《白釉算盤珠形水指》は、抽象美・機能美・精神美 の三位一体を成立させた現代茶道具の逸品です。数理的造形と禅の余白が交差するこの「白」は、茶室はもちろん、現代建築のロビーやミニマルアートを志向するギャラリー空間においても強い存在感を放ちます。

— 完璧に設計された余白こそ、最も自由な宇宙を孕む。
そんな岡田優様の哲学が、静かに、しかし確かな響きをもって伝わってまいります。

ご寸法や共箱の銘、価格などの追加情報を頂戴できましたら、さらに詳細な解説や取り合わせ案の拡充も承ります。どうぞお気軽にご指示くださいませ。

略歴  
京都、清水五条に生まれる  
京都府立陶工訓練校成形科、京都市立工業試験場研修生を経て  
走泥社同人河島浩三氏の下で三年間陶技全般を学ぶ  
1987年、宇治市炭山にて独立、築窯  
2018年より 日本伝統工芸近畿展、鑑査審査委員  
2022年 日本伝統工芸陶芸部会展、鑑査審査委員

〈主な入選〉  
日本伝統工芸展、日本陶芸展  
菊池ビエンナーレ、  
茶の湯の現代展  
長三賞陶芸展、陶美展、  
益子陶芸展、  
伊丹国際クラフト展  
萩大賞展、  
神戸ビエンナーレ  
現代陶芸コンペティション、等

〈主な受賞〉  
1998年、使ってみたい北の菓子器展(優秀賞)  
2002年、京焼、清水焼展(KBS京都放送賞)  
2003年、BONSAIの器展(奨励賞)  
2008年、日本伝統工芸近畿展(日経新聞社賞)  
2009年、おおたき北海ライブ陶器展(NHK放送賞)  
2010年、おおたき北海ライブ陶器展(北海道新聞社賞)  
2012年、京都美術工芸ビエンナーレ(大賞)  
2013年、日本伝統工芸陶芸部会展(日本工芸会賞)  
 神戸ビエンナーレ現代陶芸展(準大賞)  
2014年、光州ビエンナーレ招待出品  
2016年、大阪工芸展(美術工芸大賞)  
2019年、大阪工芸展(準大賞)  
2022年、有田国際陶磁展(大賞、文部科学大臣賞)、等

現在、公益社団法人日本工芸会正会員、陶芸美術協会会員
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