陽向釉茶盌 竹村繁男
陽向釉茶盌 竹村繁男
幅 : 11.0cm 高さ :10.0cm
陽向釉の持つ温かみと優雅さ
竹村繁男様の「陽向釉茶盌」は、ひまわりの幹と花の灰を混ぜ合わせて作られた釉薬「陽向釉(ようこうゆう)」が特徴です。自然灰釉特有の微妙な変化が窯の中で生じ、茶盌の表面には情熱的な黄色が現れると同時に、優雅で落ち着いた表情が醸し出されています。この陽向釉は、土の力強さと釉薬の繊細さが絶妙に融合し、追い求める自然の美しさと温かみを感じさせます。ひまわりの生命力がそのまま作品に宿り、温かな存在感が見る者の心を捉えます。
形状の美しさと安定感の妙
この茶盌の形状は、竹村様の技巧が随所に光ります。安定感を保ちながらも柔らかなラインで構成されており、機能性を超えた美しさを湛えています。全体のシンプルさの中に微妙な凹凸や曲線が生かされ、どの角度から見ても一切の無駄がない完璧なバランスが表れています。また、安定した形状でありながらも、繊細な表現が見て取れ、まさに茶盌としての魅力を最大限に引き出している名作といえるでしょう。
自然素材を用いた陽向釉の色合いの奥深さ
陽向釉はひまわりの灰を主成分とし、畑で栽培したひまわりを焼いて得られる灰を使っています。釉薬にひまわりの灰を取り入れることで、自然の温かみを持つ鮮やかな色彩が生まれます。焼成の際に温度や時間、焼成環境の影響を受けて色味が変化し、柔らかい黄系の色合いが窯の中で一瞬一瞬変わっていくという陽向釉の独特な個性が、手作りの陶器としての一品性を高めています。竹村はこの自然釉の変化を注意深く観察し、理想的な色彩と質感を表現しています。
素材に込められた自然の息吹と情熱
竹村繁男様は、30年以上にわたり、自然灰を使った釉薬作りに情熱を注いできました。その根底には、自然の力強さを作品に取り入れるという理念があり使う灰は杉や葡萄、向日葵といった植物から得られます。向日葵は畑で栽培し、その幹や花を焼いて採取した灰から釉薬を生成します。このように素材にこだわり、伝統の技法を用いながらも現代的な美を追求し、ひとつひとつの作品に個性を込めることが作陶に対する姿勢を象徴しています。
手間を惜しまない釉薬作りの工程
自然灰釉を作るには、トラック数台分の植物や木の枝を焼いて、わずか一握りの灰を採取するという膨大な労力が必要です。これを水に溶かし、何度も水を取り替え、アクや不純物を丁寧に除去するという過程を経て、ようやく釉薬としての灰が完成します。このプロセスがあるからこそ、作品には自然の持つ深い色彩と温かみが宿り、唯一無二の作品として仕上がるのです。
略歴と作陶の歴史
竹村繁男様は昭和28年に京都府山科で生まれ、京都府指定無形文化財保持者の木村盛伸に師事しました。陶芸の道に進んだのは高校時代で、京都市立日吉ヶ丘高校陶芸科を卒業後、18歳で弟子入り。その後8年間の学びを経て昭和55年に独立し、「大日窯」を開窯して自らの作品作りに専念してきました。灰釉作品は、自然素材を最大限に生かした質感と形状の美しさが評価され、現代の名作とされています。
圧倒的な存在感と普遍的な美
竹村繁男様の「陽向釉茶盌」は、土の力強さと釉薬の温かみが一体となり、まさに自然の美を最大限に引き出した作品です。その形状の面白さや色彩の奥深さが圧倒的な存在感を持ち、陶芸における現代の名作として位置づけられています。陽向釉が生み出す自然の力を感じさせる美しさは、作陶に対する情熱が込められた結晶であり、見る者を魅了する一品として後世に受け継がれることでしょう。
竹村繁男 略歴
昭和二十八年 : 京都府山科生まれ
昭和四十七年 : 京都市立日吉丘高校陶芸科卒業-木村盛伸先生に師事
昭和五十年 : 第四回日本工芸会近畿支部展 初入選
昭和五十三年 : 京都府工芸美術展 入選
昭和五十五年 : 独立し山科に大日窯を開窯
昭和六十三年 : 第三十五回日本伝統工芸展 入選
平成元年 : 「土の子会」結成
平成二年 : 第三十七回日本伝統工芸展 入選
平成八年 : 第二十五回日本伝統工芸近畿展 奨励賞
平成十年 : 第五十三回新匠工芸会展 入選
平成十三年 : 京都工芸美術作家協会展,京都「高島屋」にて個展
平成十四年 : 第四十九回日本伝統工芸展 入選
平成十五年 : 岡山高島屋画廊にて個展
平成十七年 : 横浜高島屋美術画廊にて個展
平成十八年 : 京都高島屋美術画廊にて個展
平成十九年 : 第三十六回日本伝統工芸近畿展 京都府教育委員会教育長賞
日本工芸会正会員認定
岡山高島屋画廊にて個展
平成二十年 : 日本工芸会陶芸部会正会員による第三十六回新作陶芸展 日本工芸会賞
平成二十一年 : 第五十六回日本伝統工芸展 入選
平成二十二年 : 第三十九回日本伝統工芸近畿展にて鑑査委員に就任
平成二十六~三十年年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和元年~六年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和五年 : 日本伝統工芸展 入選
令和六年 : 日本伝統工芸展 入選
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